わんく
side shp
夏も例年通りなら終わっているはずなのに、太陽の日差しは強く俺達を照らしている。「地球温暖化も進んでますなー」
服をパタパタさせながら光に手を向け歩く。そんな彼は高校2年生男子とは思えないほど美しく、色気を放っている。ボタンを開け、裾をまくり、シャツを出している彼はどっから見ても無防備だ。隣の俺がどんな気持ちでいるかも知らずに。
「そうっすね。暑いと学校行く気にならないんすよ…」「それは寒くてもやろ。一年中同じこと言ってんで。」
彼は前を向きながら俺が、適当に投げたボケを丁寧にひろいあげる。「どっか涼しいとこないですかね」頭を回転させるが、暑さのせいか何も浮かばずと言ったところだ。
「川とか行くか。」「川っすか。」「おん。」俺の顔を伺うようにこちらを覗いてくる。「っ…。いいんじゃないですか?」
正直なところ川は好きじゃない。だがやはり圧には耐えられん。
「よし、決まりな。」「あっぞむさっ…!」急に彼に手を引かれ走りだす。暑いのによく走れるなこの先輩。長い道を抜け、獣道を通り、下っていく。俺たちの走る音しか聞こえない中、川のせせらぎの音が近くなる。川が見え、彼は目を輝かせ近寄る。「ここはちょっと涼しいな!やっぱ来て正解やったな!ショッピ!」確かに他より涼しいが、家のほうが絶対涼しい…。と思いつつ、川に手を入れ川の冷たさを肌で感じてみる。水は柔らかく、冷たくて、優越感を流してくれる。来てよかったかもなって思ってつい軽く微笑んでしまった。「ゾムさん冷たいですよ!手入れないんですか?」しゃがんだ俺の後ろで止まっている彼を見て思わず聞いてしまう。「いや…日焼け止めの効果消えてまうやん。」高校生、運動真っ盛りの男子とは思えないほどの白い肌は、彼の真面目さを表していた。「そんな事言わずに入りますよ。ほら、靴脱いでください。」嫌がる彼に靴を脱がせ、今度は俺が手を引く。膝の半分くらいの深さは、かなり気持ちいい。「ひょえっ冷たー。」嫌がっていたはずのいやいや期の子どもは、忘れたようにはしゃぎだす。「ふっ、川に入れさせればこっちのもんですよ。」よく、浜辺のシーンで見る水をバシャバシャするやつをやってみる。海がないこの地域でやることになるとはな…と思いつつ彼に水をかける。「おいっ!日焼け止め落ちるってゆってんやろ!」バシャバシャとこっちに大股で向かってくる。「やっべ…」逃げようとするが水の勢いで倒れそうになる。「ショッピ!」彼は、持ち前の運動神経で俺を掴むが、水の中なので二人で倒れてしまった。「あっちゃー。」ビショビショになった全身は、なんというか嫌な気分になってしまう。「すまん!もっと早ければな…。」同じくびしょ濡れになった彼が謝ってくる。「ふふっ。ゾムさんは悪くないですよ。」彼と川から上がり、日陰に座る。気温で暖かくなった石が冷たくなった身体を温め、変な感覚を覚える。「濡れたな。」「濡れましたね…」樹木の間から差し込む木漏れ日がキラキラと川を反射する。見ないように一応しているが、濡れて透けて肌色が見えているシャツは、服の意味をなくし、色気を増幅させている。黄緑色に輝く目は、どこか楽しそうな気持ちを持っているのを感じさせる。美しいその顔はつい性欲をそそられる。見惚れて見ていると、普段は見えない肩の部分に紅い跡が見受けられる。「ゾムさん…これ、もしかして川に倒れ込んだときのですか…?」ぽけーっとした顔はこっちを見て笑顔で答える。「あっ…これはちゃうねん。きにせんといてや!」ワシャワシャと髪を撫でられる。今俺はどんな顔をしているのだろうか。心配している顔なのか、ニヤけているのか。「そろそろ帰るか。濡れて気持ち悪いやろ。」立ち上がって帰る支度をしだす。「そうですね。かえりましょうか。」さっきの道を戻り、下の帰り道に戻って来る。時間は多少経っているが、周りの風景は変わらない顔をしている。「気を付けて帰りいや。」彼に手を降って帰り道を歩いていく。また必ず来る明日に希望を抱いていた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!