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あのレンガの街で俺がキッドに攫われて早数日。今俺はキッチンに立っている。なんでか? 料理してるからだよ。
別に料理はしなくていいとかいろいろ言われたんだが、何かやってないと俺は四六時中キッドに口説かれることになるのでやってる。おかげで料理スキルが上がっていっている。そしてこの行動が〝キッドの胃袋を掴むため〟になっているのが心底解せない。もう弁明するのも疲れたので何も言わない。
ちなみに今日のメニューはパスタだ。キラーさん仮面付けたまま食べるからな。ちょっとの配慮。茹で上がった麺をザルにあけて湯切りをする。
「キラーさん、ソースの方どう?」
「完璧だ」
「最高~」
キラーさんとそんなやり取りをしながら盛り付けをする。うん、我ながらいい出来だ。
食堂の方に集まっているクルーたちに持っていけば歓声が上がる。パスタだけじゃ到底足りないので他にも肉料理をいくつか作ってる。
「野菜も食えって」
女性陣にサラダを出しながら、男どもにそう言えばブーイングが返ってきた。いいから食え。栄養バランス偏るだろうが。
「ありがとう、ジェイデン」
「ジェイデンが来てから料理に彩りが増えた気がする~」
「これが普通だと思うんだけどな……。つかキッドは?」
「お頭は多分部屋よ」
また寝てんのかな。昨日も夜遅くまで起きてたみたいだし。
「起こしてくるわ」
「はーい」
俺は食堂から出てキッドの部屋へと向かった。
キッドの部屋の前に立つ。まあ俺もここで生活しているんだけどな。ガチャッと扉を開けるとベッドの上にキッドが寝転がっていた。
「キッドー、夕飯」
「ん゛…」
声をかけてみるが一瞬唸っただけで反応はない。近付いてみるとスヤスヤと気持ちよさそうな顔で眠っている。っか~~~寝顔安らかか? 髪を下ろしているのもあって、ちょっと幼い気がする。俺はキッドの体を揺すった。
「キッド、夕飯冷める」
するとキッドが薄らと目を開けた。
「……ん゛ぁ……?」
「おはよう。夕飯は?」
「………もう少し、したら食う゛……」
頭が起きてねぇな、これ。
起きる気配のないキッドの頬を引っ張る。見かけによらず柔い。なんか楽しくなってきた。ふにふにと頬を弄ったり、撫でてみたりする。いつもこのくらい大人しかったら俺ももうちょっと対応考えるんだけどなぁ……。
暫く遊んでいると流石に起きたのか、ゆっくりとした動作で体を起こした。
「おはよう」
再びそう言ってやれば、まだ眠たげな瞳で俺を見ていた。