テラーノベル
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「どこかで見た顔だと思ったら……、お前、フィエルテの犬だな」
「人聞きの悪いことを言わないでください。元、ですよ。今の飼い主はテンペランス様ですから」
夕食の後、テンペランスは客用に部屋を作るため、掃除をしたり布団を運んだりして忙しく動いていた。
湯を作るための火起こしを手伝うと言って、アルモが外に出たのを確認すると、オランジュはそっと後を追って、薪を集めている背中に声をかけた。
「世間は狭いですね、まさか貴方とこんな場所で会うとは……。というか、貴方がテンペランス様の恋人なんて聞いていないですよ。こっちは可愛い人だって話を聞いていたんですよ。どこか可愛いいんですか? 僕は猛獣を可愛いとはとても思えませんねー」
「そうか、ランが俺を可愛いと言ってたのか……」
「そこっ、鼻の下を伸ばした変な顔をしないでください。まったく、歩いた後は死体しか残らないと言われた人が、すっかり毒が抜けていますね」
「いいんだよそれで。俺はやっと、幸せってやつを知ったんだ。猛獣が人間の真似をしたっていいじゃないか。ランの隣にいられれば、俺はなんだっていいんだ」
アルモと呼ばれている男の名は、かつては別の名だった。
フィエルテ直属の諜報部隊。
オランジュが前に見た時は、まだ少年に毛が生えたくらいの歳で、フィエルテの後ろに控えていた。
おそらく婚約者であるテンペランスの行動を監視するために、侍従として潜り込まされたのだろう。
それがなぜか婚約が破棄された後もヴィーヴル家に残っているのか分からないが、おそらく彼もテンペランスに魅了されたひとりなのではないかとオランジュは考えていた。
「フィエルテ様には、何度もテンペランス様が愛情深く、思慮深い方だと報告しました。ジアン様は私怨から勝手な悪評を作り上げていると何度も……。しかし、一度も聞く耳を持ってくださらなかったので、見限ったのです。飼い犬だって、主人を選びますよ。テンペランス様に付いていくことに決めたんです」
「それで? ジアンについては任せても大丈夫なのか?」
「ええ、実はジアン様の悪事をまとめて告発できるように、本宅の仲間と資料を集めていました。テンペランス様についてはもう諦めたかとばかり思っていましたが……、まだ執着していたとは……。とにかく、こっちは任せてください。そちらは大丈夫なのですか? 頻繁に陛下に呼ばれていましたよね?」
元皇子の飼い犬もなかなか情報が早いらしい。もっとも噂を流すことすらも、楽しんでいるあの男が浮かんできてオランジュは顔を歪めた。
何を考えているのか分からなかった皇帝はついに行動を起こした。
皇太子であるフィエルテに、王になる資質が欠けていると言い放った。
このままいくと法を変えて、影を呼び起こすことになると警告をした。
影とはつまりオランジュのことで、オランジュを王にするという意志があると伝えたのだ。
青くなったフィエルテは、父が若い頃からの古株の重臣達に頭を下げて、一から教育をしてもらえるように頼み込んだ。
ヴィーヴル公爵のような悪友とも縁を切って、ようやくまともに自分から必死になることを覚えたようだった。
そして、ジョリ妃が懐妊したことで、いっそう力が入り、精力的に各地を回って政治や軍事を頭に叩き込んでいるそうだ。
「あの男にとっては、フィエルテでも俺でもいいんだろう。とにかく優秀なやつが欲しいとしか頭にないんだ。舞台に押し上げられたらたまらないからな。王になるつもりはないし、結婚して落ち着きたいとちゃんと宣言してきたよ。相手はテンペランスだともな。あの男は面白いと言って笑っていた。もう何を考えているのか……さっぱり分からん」
「では、オランジュ様を王にというのは、もう諦めてくれた、ということですか?」
「さあな、そう願うよ」
今は未熟でも、このままフィエルテが努力すれば、それなりにまともな王になれるだろう。
それで満足してくれと、オランジュとしては願うばかりだった。
「そうですか……、それではやはり、お二人は帝都には帰って来られないのですね……」
「ああ、ここでの暮らしが性に合っている。まあ、ランと一緒ならどこへ行ってもいいが、しばらくはここにいるつもりだ」
薪に火がついて、鍋に入れた湯が温まっていくのを見ながら、オランジュはクスリと笑った。
自分の素性を明かすことで、テンペランスから嫌われてしまうかと思って、ずっと言えずにいた。
そんな人だったなんてと冷たく言われてしまう夢を何度も見て、恐くてたまらなかった。
恐怖なんて感情はずっと昔に死んだのだと思っていたが、まさか自分が恐怖でうなされて飛び起きるなんてことを経験すると思わなかった。
今までにない大人数での襲撃で、倒していたところを見つかってしまい、結局話すことになった。
テンペランスは困惑した様子ではあったが、ちゃんと受け入れてくれた。
「テンペランス様は、とても繊細で優しい方です。くれぐれも壊さないように大切にしてあげてください」
「当たり前だ。俺の全てなんだ。何よりも大事にする」
強い意志を言葉に込めて、はっきりと伝えると、アルモは静かに頷いてそれ以上何も聞いてこなかった。
パチパチと薪が燃える音だけが響いて、アルモは何か思い出しているかのように火を見ていた。
オランジュもまた、火の中に何かが見えたような気がして見つめ続けた。
◇
月明かりに照らされた部屋は、いつもより明るかった。
夜中に起きて喉が渇いた俺は、キッチンに水を飲みに行った。
ついでに客間に泊まっているアルモの様子を見てきたが、ぐっすり眠っているようだったのでホッとして部屋に戻ってきた。
再び眠りにつこうとベッドに乗って、オランジュの隣にもぐりこむと、がっしりと腰を掴まれたので、ビクッとして驚いて声を上げてしまった。
「わっ……、起こしちゃった?」
「いや、起きていた。ランの帰りを待っていた」
「んっ……、アルモの様子を見てきた……。明日は、町行きの早い馬車に……乗るか……、ちょっ……だめだよっ、そんなところ触ったら……」
後ろから抱きしめながら俺の胸の辺りを弄っていたオランジュの手が、下半身に伸びてきたので、そこはマズイと身をよじった。
だが、がっしりと腰を掴まれていて、大事なところを愛撫されたらたまらず反応してしまい、甘い声が漏れてしまった。
「ぐっすり寝ていたんだろう。声を抑えれば大丈夫だ」
「んっ……だめ、なのに……すぐおおき……声でちゃ……ああっ、んんっ」
言っているそばから、大事なところを握られてしまい、声が出てしまった。
「せっかく俺の全てをランが受け入れてくれたんだ。興奮し過ぎて治まりが効かない。こっちの方も、全部受け入れてくれ」
オランジュが熱い昂りを俺の尻に押し付けてきた。すでにガチガチに硬くなっているので、俺もつられて興奮してきてしまった。
「ダメか? 少し抑えるから……ここに入りたい……」
「んーーー………もう……」
閉じていた蕾は、オランジュの長い指で解されるとすぐに蜜をこぼしてしまう。
好きな人に甘えながら求められたら、断ることなんてできない。
そうはならないだろうなと分かっていながら、少しだけねと言って、オランジュの顔を引き寄せてキスをした。
本当はズブズブに溺れているのに、そうは見せたくない。少しだけでも主導権を持ちたいと思ってしまう。
そんな俺の内面なんてすっかり見透かしていているオランジュは、わかったと甘く微笑んで俺の蕾に自身を当てがった。
「ラン、俺は動いていないのに、どんどん挿入っていくぞ……。なんだ、ランも欲しかったんじゃないか」
「ううっ……知ってるくせにっ、あっ、ああっ……あ、いいっ……んんっ」
オランジュの言う通り、俺はオランジュの熱を感じたら欲しくてたまらなくなり、自分から力を抜いて、オランジュの熱を飲み込んでしまった。
大きくて硬いものが俺の後ろを満たしていく感覚がたまらない。たまらなく気持ち良くて、荒い息とともに、声を漏らしながらどんどん中へ受け入れてしまった。
「気持ち良さそうに飲み込んでいるな。もっと奥まで欲しいか?」
「んっふっ……しい、おくっ、ほしいっっ」
オランジュは俺の腰を掴んで、少し引き抜いてから一気に深く挿入してきた。
「あっいっ……ああああっ、ふぁ、いっ……」
強い快感が刺激となって全身を駆け巡り、目がチカチカとして揺れてしまった。
オランジュとする時はいつも我を忘れるほど夢中になって溺れてしまう。
奥を擦られて揺らされたら、もう快感だけで頭がいっぱいになってなにも考えられなくなってしまう。
今もまた、そうだった。
コメント
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いやあ、このエピソード、すごく良かったです。アルモとオランジュの対話から、互いの立場や過去、そして何よりテンペランスへの共通の想いがひしひしと伝わってきました。「飼い犬だって、主人を選びますよ」って台詞、ぐっときましたね…。そして後半の二人の親密な場面、テンペランスが「本当はズブズブに溺れているのに、そうは見せたくない」って思う気持ち、すごく分かります。もう、この二人の幸せそうな空気がたまらなかったです!