テラーノベル
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たくぱん(アスファルトって、名前の由来なんなんだろう···)
たくぱん(今から死ぬのに、何考えてんだろw )
たくぱん「来年では、愛されたいなぁ」
山田「たくぱん!」
突如として聞こえた声に、少し肩を震わせる。
驚きで、足を滑らせてしまうかと思った。
たくぱん「····なに?」
山田「なにしとんねん!」
たくぱん「····お前には、関係なくない?」
山田「あるやろ」
やめろ。
聞きたくない。
今から山田の口から出る言葉が、俺をどれだけ傷つけるか、山田は知らないんだ。
山田「だって、だって山田達は仲間やし、」
たくぱん(そうだよね)
結局、俺とお前の関係はそこにしかなかった。
メメントリという輪でしか繋がれなかった。
山田「それに、山田はお前のことが好きやし」
たくぱん「は?」
聞き間違い、だろうか?
いや、そんなはずない。
俺が山田の言葉を聞き間違えるはずない。
たくぱん「俺、も····!」
「好き」
言葉に出そうとして気づく。
山田の目には、恋なんてなかった。
俺は、友達としか映っていない。
たくぱん(何騙されそうになってんだよ)
知っていたじゃないか。
山田の恋が誰に向いているのか。
知ってしまったから、死にたくなったんじゃないか。
たくぱん「同情なんていらない」
山田「え?」
小さくつぶやいた言葉が、山田の耳に届いたかはわからない。
それでも、もう確認するすべはない。
柵から手を離した直後、重力に従って落ちていってしまったから。
山田が地面に手を伸ばしている。
それがうざったくて、目を閉じた。
たくぱん「····ぁれ?」
ここはどこだろう。
知らない場所。
腕には、チューブが繋がれている。
たくぱん「あぁ、病院か····」
死ねなかったんだ。
横を見ると、山田が椅子に座って寝ていた。
いつからここにいるのだろうか。
動かすのが痛い腕で、山田の頬を撫でる。
たくぱん「好き」
たくぱん「····同じ気持ちじゃないなら、死なせてよ」
綺麗に整った顔を見ながら、考える。
一方通行の重たい愛。
これから、これを抱えたまま生きなければいけない。
俺にそんな事できるのだろうか。
これから先、山田以外の人を好きになれるのだろうか。
たくぱん(きっと、無理だろうな····)
山田「····なにしとんの?」
急に、山田が目を開く。
いつから起きていたのだろう。
咄嗟に手を離し、取り繕う。
たくぱん「別になにも····」
たくぱん「お前は、なんでここにいるの?」
山田「そりゃたくぱんが心配やからやろ」
たくぱん「そういうのいらないから」
たくぱん「来ないでよ」
山田「なんで来て欲しくないん?」
たくぱん「····俺のことが好きじゃないなら、来て欲しくない」
山田「山田は、好きやで」
たくぱん「嘘つくなよ 」
声が震える。
本当は、山田が好きじゃないことを受け入れたくない。
山田「嘘なわけないやろ」
たくぱん「違う!」
たくぱん「だって、だってお前は····!」
山田「好き」
山田「愛してるよ」
山田「だから死なんとって」
優しいよな。
こんなに信じられないって言ってるのに、何回も言ってくれる。
その言葉が本当なら、死にたいなんて思わないのに。
たくぱん「····キスして」
たくぱん「キス、してくれたら、信じれるから」
山田「····分かった」
山田が近づく。
一瞬だけ、唇が触れる。
それにはやはり、優しさしか伝わってこなかった。
山田「信じてくれる?」
たくぱん「····うん」
山田「ありがとう」
たくぱん「でも···あの、今日は帰ってくれる?」
山田「なんで?」
たくぱん「いや、やっぱ流石に恥ずいから///」
山田が少し笑う。
柔らかい表情で、安心しているのだと分かる。
山田「分かった」
山田「また明日」
軽く頭を撫でた後、山田は出ていってしまった。
結局、山田には友愛しかない。
俺たちの間に恋は生まれない。
たくぱん(死にたい····)
窓から外をみると三階であることが、察せた。
腕につながったチューブを乱暴に外す。
ベッドから降りる。
たくぱん「え?」
足に力が入らなくて、床に座り込んでしまう。
どれだけ頑張っても立てない。
たくぱん「なんで····」
山田に会いたい。
俺を愛してくれる山田に。
一回でいいから、会ってみたかった。
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