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《師匠、この部屋アルカ?》
鈴の音のような声の主は、少し独特な語尾を持っているようだ。ただ、何となくだが、それが彼女にあっているような気がした。
《あぁ》
兄貴のぶっきらぼうな短い返事が聞こえる。
俺は、もう誰も傷付けたくないんだ。だから、頼むから、近付かないでくれ。
《えっと、炎露、 アルネ?我は中華アル。随分と暗くて寂しい部屋アル。外からでも伝わるアルヨ》
その声は、酷く寂しそうで、悲しそうで、辛そうだった。…兄貴以上にも。
どうして、どうして、……?
「どうしてお前が悲しそうなんだよ」
気が付けば口から声が漏れ出ていた。
ハッとして慌てて手で口を押さえる。
《炎露はそんな声アルカ。低くて落ち着く声アル》
今度は、穏やかで少し嬉しそうな声。
彼女は、中華は不思議なやつだ。 変なやつだ。
どうして、俺なんかにそんな心を傾けるんだ?
《師匠、少し、我と炎露の二人だけにしてほしいアル》
今度は力強い、頼もしい。そんな声。
《わかった。また来る》
兄貴はその声に嬉しそうに返事をして、今度は先ほどより打って変わって、ほんの少し軽い革靴の音を響かせながら離れてゆく。