テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
カーテンの隙間から差し込む月明かりが、部屋の中を淡く照らしていた。私は、あなたのベッドの横に静かに立っていた。
寝息を立てるその顔を見つめながら、胸の奥が熱くなる。
「やっぱり……かわいい」
指先が、あなたの頬に触れそうになって止まる。
起こしてしまったら、きっと驚かれる。怖がられる。
――でも、それでもいい。
ベッド脇の机には、あなたのスマホが置かれていた。
私はそっと手に取り、画面を開く。
パスワードは、すでに調べて知っていた。
タイムラインに並ぶ友達との会話。笑顔の写真。
胸がじくじくと痛み、息が詰まる。
「……消しちゃおうかな」
震える指が画面をなぞる。
でも、その瞬間、眠っているあなたが小さく寝返りを打った。
――ドクン。
心臓が跳ねて、私は思わずスマホを机に戻した。
しばらくの沈黙。
私は深く息を吸い込み、ベッドの端に腰掛ける。
「大丈夫。全部、私が守るから」
囁くように言葉を落とす。
やがて、あなたの手を握りしめた。
その温もりに、涙が込み上げる。
私はそっと唇を近づけ、あなたの指先に口づけた。
「ねぇ……逃げないでね」
窓の外では、街の灯りがまた揺れている。
けれど、もう関係ない。
ここは私とあなたの世界。
誰にも壊させない。
――そのためなら、何だってできる。