「……ん……?」
静かな部屋に、小さな声が漏れた。
あなたのまぶたが震え、ゆっくりと開いていく。
私は息を呑む。
ついに、この瞬間が来た。
「おはよう」
笑顔を作って囁く。
けれどあなたは、目の前に立つ私を見て硬直した。
「……結衣……? なんで……ここに……」
その問いかけに、胸の奥がざわつく。
やっぱり、驚いてる。怖がってる。
でも大丈夫。すぐに慣れるから。
「ふふ、大丈夫だよ。怖くない。
私はただ……あなたの隣にいたいだけ」
私はそっと、握ったままの手に力を込める。
あなたは身をよじって逃げようとするけれど、その動きを押さえつける。
「ねぇ、どうして逃げようとするの? 私だけがこんなに想ってるのに」
声が震える。
胸の奥から溢れるのは、熱い愛情と、冷たい怒り。
机の上に置かれたスマホをちらりと見る。
あのタイムラインのせいで、私はこんなに苦しい。
――なら、いっそ全部消してしまえば。
私は再びあなたを見つめ、にやりと笑った。
「ねぇ……これからは、全部私が管理してあげる。
友達なんていらない。家族もいらない。
必要なのは、私だけでしょ?」
あなたの目が大きく見開かれる。
その恐怖に満ちた表情さえも、私には愛おしかった。
――これでやっと、本当に二人きりになれる。