そして家族3人のかけがえのないバースディパーティーは終わりを迎えた。
僕は食事の後片付けをした後、遥香をお風呂に入れた。
それからリビングで遥香を抱きながらソファーに腰掛けてテレビを見ていた。
すると葵はリビングに入って来たと思えば、いきなり後ろから抱きついてきた。
「葵…どうしたの?」
「瑛太…愛してる。愛してるよ」
葵の涙が僕の首元にあたり、泣いているのがわかった。
「僕も愛してる」
「うん…ありがとう。瑛太…私ちょっと外に行ってくるね」
「わかった…」
時計の針は夜8時を回っていた。
そうか今日なのか…‥
そして玄関からドアが閉まる音がした。
どうやら葵が外に出て行ったようだ。
葵には言わなかったけど僕も行く所があった。
ピーンポーン…‥
葵が出て行ってから直ぐに、母さんが家にやって来た。
葵が“外に行ってくる”と言った直後に《遥香を少しの間見ていて》とメールを送っておいたからだ。
そして僕は家を飛び出した。
僕は全力で走った。
向かう先は葵と初めて会ったあの公園…。
走っていると涙で前が見えなくなった。
それでも止まる訳にはいかなかった。
きっともう…時間がない。
公園に着くとあの場所に向かった。
葵と初めて会ったあの大きな木の下に…。
そして、その場所に近付くにつれて、うっすらと見えていた人影が次第にクッキリとその姿を現し始めた。
「葵っ!」
「瑛太?」
「そうだよ、僕だよ」
「どうしてここに?」
「葵…さよならも言わずに消えてしまうなんてズルいじゃないか…」
「知ってたの?」
「あぁ…」
「どうして? 瑛太にはあの未来の映像は見せていないはず…」
「僕が告白した葵の誕生日の時の事憶えてる?」
「うん…」
「その時葵は、この公園で未来の映像を見てしまって気を失った事があったよね。僕は“触らないでっ”と言った葵の言葉を無視して気付かれないように葵の体に触れたんだ」
「それじゃあ、あの時からわかってたの?」
「わかってた…」
「それならどうして言わなかったの?」
「葵が言わないって決めたとわかったから、僕もそうしようと思った」
「だからって…。わかってたんなら私なんかと結婚しないで、瑛太は別の人生を選択する事も出来たはず…。もっと楽しい人生を送れたし、もっと素敵な女性と出逢う事も出来たはずなのに…‥」
「そう思うなら何で言わなかった?」
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