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え?Vagrantはどうしたのかって?チョッタナニイッテルカワカラナイ
少年レイは異常な子
自分が同性愛者だと気が付いたのは山鶴零が中学三年生の頃だった。よくテレビでは同性愛者を認めていこうなどと言う番組が良くやっているが、世間はそう優しくないのである。ある木曜日、いつもカバンに入れているBLの同人小説の事がクラスの男子にバレてしまったのだ。自分の住んでいた場所は田舎も田舎、道に外灯がなく、都会だったら見えるはずも無い小さな星まで鮮明に見えてしまうほど田舎。そんな田舎で噂など出てきたら一夜も足らずに広まってしまう。そうやって広がって引っ越して行ったやつを何人も見てきた。勿論今回の件も見られた翌日学校に行ったらクラスの生徒どころか下学年、ましてや先生まで僕のことを変な目で見てきた。それだけならまだギリギリ耐えれた。だが、担任の教師が余計なことをしやがった。なんと親に電話をしたのだ。親は勿論僕を呼び出し、母親は泣き、親父は怒鳴りつけた。なぜ自分の性格でここまで追い詰められなきゃいけないのか。そんな事ならいっそここを出ていってやろうかとも考えたがここは最寄り駅まで徒歩40分くらいで、一番近い親戚の家は歩いて3時間で着けば良い方な距離。出ていける筈も無く、卒業までの4ヶ月、学校で異様な目に晒される生活をすることになった───
あの事件から4ヶ月、あの目に晒されながら学校に通い続け、ようやく今日この中学を卒業した。最後の最後まで一人の正常な人間として見てくれはしなかったが、後輩の子が笑顔見送ってくれたお陰で少し立ち直れた。今から僕はこの街とおさらばするが、特に思い出も無いので大人しく車に乗る。小学生の頃からの友達と離れるのは少し寂しいが、LINEも交換してるし大丈夫だろう。そんなことを考えていると車が走り出し、何も景色が変わらない田舎の道をぼーっと車の窓から見ていた。朝からドタバタして忙しかったので車に乗って揺られていると眠気が出てき、もう寝てしまおうかと思っていたが、そういえばどこに行くんだっけ…と半分以上睡眠しようとしている脳を回転させやっとの思いで思い出した。都会、東京だ。
あれから何時間と車に揺られ続け遂にやって来た。大都会の街、東京に。浅草や渋谷など、色々行きたい場所はあるがまずは新居に行かなければならない。こっちだと案内されついていった先には何十階もあるような(推定七十階以上)タワーマンションがあり、どの階に住むのかと
ワクワクしていたら、エレベーターに乗った親父が四十七と書かれたボタンを押した直後エレベーターが動き始めた。まず最初に驚いたことが一つ。僕はエレベーターに初めて乗ったのだ。そりゃ全てに驚くだろう。だって上にすごいスピードで動くんだよ?そりゃ驚くよ。そんなこんなで感動していた僕はピンポーンという音で現実に引きずり返された。
そんな感じでエレベーターから降りた僕達は家の扉までの通路を歩いていた。田舎の方にもマンションのようなものはあったが、ここまでドアが沢山あるものは初めてだった。柵の方を見てみると、下を車が大量に走っていたり走ってる人や歩いてる人もいる。
下を見ていると突然親父が声を上げた。
「ほら、ここが新居だ。入りなさい。」
親父に言われるがまま扉の中に入ると、そこには白で統一された壁に大きめのテーブル。およそ4LDKぐらいだろうか。
「あらまぁ…よくこんな家を見つけたわね!」
「だろ?はっはっは!」
「おお…!すごい…」
「おい、零。お前の部屋はこっちだ。」
「はい」
連れて来られた部屋はリビングよりも少し小さめの部屋だった。だが、机、本棚、収納棚、テレビ、ベットくらいは余裕で入りそうだ。外では親父と業者が何かを話している。おそらくどうやって中に入れるかだろう。そう考えていると業者が家の中に出入りし始め、どんどんリビングに家具が置かれていく。冷蔵庫、椅子、テレビ、棚、次々業者が箱を置き、中身を丁寧に設置していく。その様子は昔ゲームでやった何パターンかの形のブロックが落ちてきて穴にはめていくゲームのようにピッタリ設置されていく光景は見ていて気持ちが良かった。
「ねぇ、零。少し良いかしら?」
「どうしたの?」
「ここから左右の2軒ずつだけで良いからこのお菓子を配ってきてくれない?」
いわゆるご近所付き合いと言うやつだろうか、面倒臭いが断る理由もないのでOKすると、少し高そうな箱に入ったお饅頭が出てきた。
「じゃあよろしくね」
「はーい」
業者が仕事をしている間を通り通路に出て、「まずは右の方からやるか…んんん〜〜〜!」
外に出た瞬間謎に身体を伸ばしたくなり家の前で伸ばした。
「さて、しますか」
僕は『東雲』と描かれた標識のあるドアのインターホンを鳴らした───