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ゆうクロ。
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「佐伯さん、聞きたい事があるんだけど」
放課後、朝倉くんが私の所にやってきた。
「はいはい、情報屋の出番ですね。どんな情報をお求めで」
私は内心の興奮を抑えつつ、努めて冷静な態度を取ることにした。
朝倉くんにとっては、イベントですらない会話かもしれないが、私にとってはモブから情報屋に変わる瀬戸際かも知れないのだ。
「えっと……、藤原さんと仲良くなりたいんだけど、好きなものとか知らない?」
知らない。けど、バカ正直に知りませんとは言えない。情報屋の名折れだ。
情報屋ならば、こういう時どう立ち回るか。
「残念ながら、その情報は、まだ教えてあげる事は出来ません。顔見知り程度の仲で、急にプレゼントを渡しても、驚かれてしまいますよ。まずはお喋りでもして、警戒心を解いてからが吉ですね」
とりあえず、現実での恋愛でも通用する話をしておく。というか、ゲームでもそういうシステムだった気がする。
好感度が足りない相手にプレゼントをしようとすると『受け取れない』的な事を言われて、突き返されたはず。少なくともガールズサイド作品では。
「う……、確かに………。じゃあ、藤原さんとどういう話をすれば良いかな」
「世間話で良いんですよ。学校行事についての、打ち合わせという名目ではいかが?」
「なるほど、藤原さん、学級委員だし、良いかも。ありがとう佐伯さん、参考になったよ」
朝倉くんは、爽やかな笑顔でお礼を言うと、意気揚々と出ていった。
さてと、朝倉くんを追い払った所で、私は情報を集めないと。
桜子ちゃんが今、どこに居るから知らないけど、鞄はまだ教室にあるからきっと戻ってくるはずだ。そしたら後をつけて、何かしらの情報を探り当てよう。
と、思った直後、桜子ちゃんはすぐに教室に戻ってきた。
桜子ちゃんが居ないタイミングで、朝倉くんに相談されて、相談が終わった途端に桜子ちゃんが帰ってくる。
都合が良すぎる流れだけど、恋愛ゲームなんて、総じてそういうものだ。
それじゃあ、後をつけてみるか。みんな帰るタイミングなんだから、少しくらい後をつけたって、変には思われないはず。
桜子ちゃんが鞄を持ち、友達(私と似たようなモブ……羨ましい)と一言二言交わして、教室を出ていく。
その後ろに、私も続く。下駄箱で靴に履き替え、校門をくぐる。桜子ちゃんの家までは、そう遠くないけど、寄り道をしそうな気配は無い。
うーむ、下校中をつけるのは失敗だったかと思い始めた、その時だ。
桜子ちゃんの姿が、何もない道の途中で、霧の中に飲み込まれるように消えて、見えなくなった。
慌てて、桜子ちゃんが消えた辺りまで走っていく。
なんの変哲も無い道だ。自分の姿は消えないし、何かしらのイベントが起きたようにも見えない。
何が起こったのか、立ち止まって考えてみる。
ここはゲームの世界なのだから、現実世界の常識が通用しない現象もあるだろう。
「あ」
ここで、一つの可能性に思い至る。
この世界は、主人公である朝倉くんのための世界。
学校外かつ、彼の認識していない所で起こった事は、ゲーム的には意味の無い事。だから、描かれない、省略されてしまう。
だから、学校からも朝倉くんからも離れた桜子ちゃんは、姿が見えなくなってしまった………きっとそういう事だろう。
という事は………。
(情報収集出来ないじゃん!)
姿が見えない相手の好みを知るなんて、出来る訳がない。見えてたって難しいのに。
情報屋稼業、早くも進退窮まったり。