テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「調査兵になった理由は
俺に気持ちを伝えるためだと言ってたが、
調査兵になる前から俺を知っていたのか」
備品倉庫を整理していた時、
ふと2人きりになったタイミングで
兵長は私に問いかけた。
私は思わず目を丸くした。
先日、勢いに任せて
話してしまった自分の過去。
兵長は、そんな些細な話まで
覚えていてくれた。
恥ずかしさと、
少しだけ嬉しい気持ちが胸をよぎる。
「…はい。」
小さく頷く。
「兵長を初めて見たのは6年前…
私が15の時でした。」
ーあの日、久しぶりにまともに外へ出た。
父が死んでからしばらくは
塞ぎ込んでしまっていたから
久しぶりに浴びる陽の光が
痛いほど眩しかった。
しばらく外を歩いていると
ちょうど壁外調査に出ていた
調査兵団の兵士たちが戻って来た。
「おい見ろよ。リヴァイ兵士長だ。
人類最強の兵士だぞ!」
「なんでも一個旅団並みの戦力だとよ」
囃し立てる民衆の声に
当の本人は心底鬱陶しそうな顔をしていた。
(あれが人類最強の兵士…)
噂に聞いたことはあったが
姿を見たのは初めてだった。
なんとなく目で追っていると、
不意に彼は列を外れる。
そして馬から降り、馬具を緩めてから
そっとその馬の首元へ手を伸ばした。
「よく走った。」
遠目からだがそう言っているのがわかった。
先程まで荒く息を吐いていたその黒馬は
安心したように彼の肩に鼻先を寄せた。
彼の表情は、
今しがた民衆にむけていた
冷たい視線からは想像もできないほど
穏やかに見えた。
(…へぇ、さっきは冷たい人だと思ったけど
違うのかな)
その日をきっかけに、
壁外調査の日には” 人類最強の兵士”を
見に行くようになった。
単なる好奇心だった。
何度か見ているうちにあることに気づいた。
ある時は小さい子供に話しかけられ、
決してにこりとするわけでも
頭を撫でるわけでもないが
馬を降りて同じ目線になって
話を聞いていた。
またある時は
負傷した兵士の元へ寄り、
怪我の具合を聞いていた。
“馬が好きな人類最強”なのではないか
という私の予想は外れていたようだ。
彼は馬だけに優しいわけではなかった。
そしてその”優しさ”は
万人が見てわかるようなものではなく
どれも不器用なものに見え、
いつしか私はそんな
“不器用で優しい人類最強”から
目が離せなくなっていったー
「…不器用で優しい人類最強、か。
ずいぶんとまぁ買い被られたもんだな」
「今でもその印象は変わりませんよ。
だって今も、私の話を黙って聞いて
くれてるじゃないですか。」
そして翌年、
私は訓練兵に志願しました。
父への憧れと、
兵長への想いを胸に。
「そして3年間血反吐を吐くような
訓練に耐え、正式に調査兵団に
入団したってわけです。
…答えになってましたかね?」
「…あぁ。理解はした。
まぁ、鬱陶しいことに変わりはねぇが」
「ひどいなぁ。私のことも
あの日の馬みたいに可愛がってくださいよ」
私の冗談をスルーして仕事に戻る
兵長の背中を見送りながら、
私は初めて兵長に挨拶に行った日のことを
思い返していた。
コメント
1件
読み終わりました…!「よく走った」って馬に囁く兵長、あのギャップがもう刺さりすぎました🥀 民衆にはあんなに冷たい顔なのに、馬とか子供とか怪我した兵士には不器用に優しくて、それをこっそり見つけた主人公が目を離せなくなっていく流れが丁寧で素敵でした。最後の「あの日の馬みたいに可愛がってくださいよ」って冗談、兵長にスルーされるけど、ああいう空気感いいですよね。2人きりの倉庫ってのがまた胸がきゅっとなります。続きも静かに読みにいきますね。
#夢小説
さらん
3,884
さたん📖🕊️
22
#不定期更新