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僕は今、葵家の浴室の中にいる。学校で使う水着を着用して。
そして考える。湯船に浸かりながら。
思い返してみたら、そういえば今日、葵のことを無理やり学校を休ませた理由は、一睡もできずにふらふらしていたからだった。
問題はその理由だ。
『あのまま勢いで憂くんとエッ――』
頭がぼ-っとしていたせいで、つい言葉に出してしまったんだろう。心の奥底に隠していた想いを。途中で僕が遮ったせいで尻切れトンボになってしまったけど、つまりはそういうことだ。
求めているんだ。僕との関係を。
(あんなことを言っておきながら、情けないよな……)
『全てを受け止めてあげるから』
僕は葵に言葉にしてそう伝えた。けど、実際のところはどうだ? ちゃんと受け止めることができているか? いや、できていない。
そんなことを、何度も何度も自問自答する。
これまで幾度となく見てきた空間の天井を見上げながら。
でも、子供の頃にすっかり見慣れているはずなのに、違う世界にでも迷い込んでしまったかのようだった。
「見知らぬ天井、か」
そう、独り呟く。
声がお風呂場特有の反響をして、そのままの形でこちらに返ってきた。
「童心に帰りたい、とかじゃないよな……」
そう呟きながら、僕は湯船から一度外に出た。待っている間に少しのぼせてしまったようだったから。そして浴槽の淵に腰をかけた。
しかし、そのタイミングで――
「ゆ、憂くん。は、入るからね」
脱衣所から聞こえてきた葵の声。心なしか、それが少しだけ震えているように感じた。
が、僕は僕で胸の鼓動が早鐘を打つ。警鐘のようだなと思った。
そして理解した。
僕も葵を求めているのだと。
「わ、分かった。大丈夫だよ」
ガラス張りの扉の向こうから見える葵のシルエット。それを見ただけで、僕の息は荒くなった。
「そ、それじゃ、お邪魔します」
浴室の扉がガラガラと音を立てて開かれた。
そこにはスクール水着姿の葵が立っていた。
葵は僕の水着姿を見て、焦るようにして視線を外す。
同じく、僕も咄嗟に再度湯船の中にどぼんと浸かり直した。
スクール水着姿を見て、分かった。
葵の胸の果実の大きさが。
元々、制服の上からも、私服の上からも、そして抱き合った時にも感じてはいた。その大きさを。
しかし、ピッタリと身体に張り付くスクール水着が、その果実の大きさをよりはっきりとさせた。
それを見ただけで、僕の心臓が波を打つ。そして、一瞬ではあったけど、先程目にした葵の姿を思い出す。鮮明に。
胸の膨らみだけではなく、腰のくびれも、僕の知っている葵の姿とは全く違っていた。
心の針が、触れ切れてしまいそうだった。
きっと、僕はこの後こう思うだろう。
葵とひとつになりたい、と。
『第27話 葵のご褒美【2】』
終わり
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