テラーノベル
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「みゃーうん……」
廊下から、不機嫌そうな声で結丸が歩いてきた。
玄関で靴を履きながら、将臣が声をかける。
「結丸。お前は置いていくぞ。家が一気に寂しくなってしまうからな」
将臣が鞄に手をかけた、その瞬間だった。
「シャーッ!!」
突然、結丸が将臣の腕を爪で引っかいた。
「つっ……!」
痛みで手が引っ込む。傷口からじんわりと赤い血が滲む。
その隙を見逃さず、結丸は素早く開いた革鞄の中へと跳び込んだ。
「お前……私の苦行に付き合うつもりか?」
「にゃあ」
結丸は短く返事をすると、鞄の中で丸くなった。
将臣はクッと短く笑うと、愛おしそうに鞄を持ち上げた。
そして、安藤家の敷居を跨ぐ。門を出た彼は、二度と振り返ることはしなかった。
(私は──凪を迎えに行く)
鞄の中から聞こえる「にゃあ」という声が、どこまでも心強かった。
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