「高校生になったらバイトして、お金貯めて、会いに行く」
昔、中学生の彼はそう言った。
高校生になって本当にバイトを始めたと聞いたときは嬉しさと申し訳なさが混ざったけれど、私のためにという彼の心から温かさを感じた。
しかし高3の夏、「友達に戻ろう」と告げられた。
突然というよりついに、と言った方が合っていた別れだった。
薄々感じていたものの、勝手に彼を信じて、きっと別れないと強い期待をしていた私は冷めていく彼に気づかないふりを続けた。
いつか別れようと言われてしまうかもしれない。
そんなことも考えたけれど、信じたくなかった。
どうしようもなく辛く、苦しかったのに「いいよ」と呆気なく終わらせてしまった自分に腹が立って、伝えたいことが山ほどあったのに「あなたがいなくても幸せになるから」と強がって同じ冷たさを押し返したことに後悔した。
それから1年は泣く日々が続いたけれど、2、3年経つと涙は出なかった。
一生分の涙を流したのではないかというほど大泣きしたあの日から、4年が経った頃にはすでに成人して大学も卒業した。
忘れない日はなかったし、出会ってからずっと、私の思いは変わらなかった。
彼の住む県の名前がテレビに映ったとき、彼の名前の漢字が見えたとき、彼の声を聴きたくなってしまったとき。
そんなとき、この未練がいつか枯れてしまうならそれでいいと、忘れてしまいたいと思っていたけれど、
忘れてはいけない大切な人だと気づいた。
会ったことがない人をこんなにも好きになって心を動かされてしまうのは、きっと彼だったからだと思った。
「婚約したい」
付き合っていた頃、喧嘩をして仲直りをするときに「君は何したい?」と聞かれて私が答えた言葉。
彼は笑って子供扱いをしてきたけれど、子供ながらに真剣に、私は一生そばに居たいと思っていた。
大人になっても彼のそばに居て、私からプロポーズするのだと思っていた。
雑誌のウェディングドレスを見てそのことを思い出すと、思わず涙が溢れた。
数年ぶりの涙だった。
そして、はっきりと思い出してしまった。
彼の声、顔、髪、文字。
全部画面越しで耳にし、目にしたものだけれど、鮮明に覚えている。
会いたい。
この未練が続いてもいいから、苦しんでもいいから、彼に会いたい。
目を閉じて、手探りでも見つけ出して会おうと決めた。
会いに行けば困らせてしまうと思うけれど、
むしろ覚えていないかもしれないけれど、
それでも私は彼に会いに行って彼の姿を見る。
そう決めた。
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