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ある日……
美咲さんは、俺に薬を渡した。
「良規くん、これ飲んで?」
『薬?』
「そう。これは睡眠安定剤。最近、よく眠れてなさそうで疲れてそうだから……。」
『……美咲さん、ありがとう。心配してくれたんだね。』
俺は、そう言いながら美咲さんから薬を受け取り飲んだ。
しかし……
次から次へと……
来る日来る日……
美咲さんは、俺に睡眠安定剤を飲ませた
薄々、俺は気づいていた
だんだんと……
俺らに、”終わり”が近づいできてることを……
そして……
また……
美咲さんは、俺の前に現れなくなった……
怒りは全くない……
ただ……
“心配”と”恐怖”が俺を襲っていた……
美咲さんが1人で倒れていないか……
美咲さんが一人で死んでいないか……
自分だけが取り残されるんではないか……
数日後……
再び美咲さんは、俺の前に現れた
でも……
いつもの美咲さんではないように感じた……
まるで……
もう覚悟を決めてるかのような……
そんな顔をしていた……
『美咲さん、おはよう。心配してた……。』
「良規くんは本当に優しいね。」
『……。』
「……。」
沈黙が続いた……。
それを、先に破ったのは美咲さんだった。
「良規くん、我儘聞いてくれる?」
『我儘……?』
「そう。最後で最後の我儘……。」
そう口にした美咲さんの目は真剣だった……。
「私、もう限界なの……。」
俺は知っている……。
美咲さんに病気などはなく……
美咲さんが嘘をついているということを……
ただただ狂いに狂って……
疲れ果ててしまったんだ……
最初は多分、俺を貶めようとしたんだよね?
でも……
これが美咲さんには最終的に苦痛でしかなかった……。
じゃあ……
なんで途中で辞めなかったんだって話だよね……
辞めなかったんじゃない辞めれなかったんだ……
もう既に”依存”していたから……
お互いに”依存”していたから……
俺には美咲さん……
美咲さんには俺が必要だった……
“愛されていなかった”2人が……
お互いに分かち合い……
いつの間にか、それが”愛”へと変わっていた……
『美咲さん……』
「私から良規くんにプレゼントあげるね」
そう言い、美咲さんはテーブルの上に注射器を置いたんだ……。
中には透明の液体まるで水のような……
その存在が何を意味するか、俺には分かっていた。
俺は、それをしばらく黙って見つめ……
ふと笑った……
俺は美咲さんに嘘をつきながら喋る
そう言いたかったんじゃない……
ただ美咲さんを助けたかった……
この”苦しみ”から”解放”してあげたかった……
その夜。
俺らは並んでソファに座ったんだ。
テーブルの上には注射器が2本置かれていた。
その時……
俺は思った……
これで本当に終わるんだと……
美咲さんは俺の鎖を全て外した
そして、その鍵を床に投げた
美咲さんは注射器を手に取った
俺もその後に注射器を手に取った
震える手で……
どこかで本当にこれでいいのだろうか……
そう思っていたのかもしれない……
でも……
それを美咲さんには言えなかった……
言ってしまえば”壊れる”ような気がして怖かったから……。
また……
美咲さんが一人で死んで、俺だけが残されてしまうんじゃないかと思い怖かったから……
俺らは注射器を手にとり……
“いっせーの”という掛け声とともに注射器を刺した
その時……
俺は思った……
これで良かったんだ……
これで美咲さんは”解放”される……
そして俺は好きな人と死ねる……
そう……
これが……
2人の”望んだ世界”だった……