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リクはバーカウンターの端に座り、グラスの中のカシスオレンジをじっと見つめていた。氷が溶け、赤紫の液体が少しずつ薄まっていく。まるで自分の気持ちみたいだ、なんてベタなことを考えてしまう。 「またそれ飲んでるの? リク、ほんとカシスオレンジ好きだな」
カウンター越しに、ショウが笑いながら言った。バーテンダーの制服が似合う、ちょっと生意気な笑顔。ショウの声には、いつもどこか軽やかで、でも心のどこかを引っ掻くような響きがある。
リクは小さく肩をすくめて、グラスを傾けた。「これ、嫌いじゃないからさ」
本当は、嫌いじゃないどころか、このカクテルには特別な意味があった。あの夜、ショウが初めてリクにカシスオレンジを勧めた日から、すべてが変わったのだ。