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半年前、大学のサークル仲間と訪れたこのバーで、リクはショウと出会った。ショウは新入りバーテンダーとして働いていて、どこか飄々とした態度で客を魅了していた。 「カシスオレンジ、飲んでみね? 甘いけど、ちょっと苦い。君に合いそう」
ショウのその一言で、リクはなぜか心がざわついた。カシスオレンジを口に含んだ瞬間、甘さとほろ苦さが舌に広がり、まるで自分の心の奥底を見透かされたような気がした。
それから、リクは週に一度、このバーに通うようになった。ショウのシフトをそれとなく確認して、カウンターに座って、カシスオレンジを注文する。ショウはいつも軽口を叩きながら、リクの話を聞いてくれた。恋愛の話、将来の不安、家族のこと。リクが普段は誰にも言わないようなことを、なぜかショウには話してしまう。
「リクってさ、ほんと真面目だよな。もっと適当に生きてもいいんじゃね?」
ショウのそんな言葉に、リクはいつもムキになって反論した。でも、心のどこかで、ショウのその自由さが羨ましかった。