テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「……最悪」
休日の朝。
ベッドの中でマナがスマホを見ながら呻いた。
隣では、ライがまだ半分寝た顔でマナの腰を抱いている。
「んー……なに」
「職員会議入った」
ぴたり。
ライが止まる。
数秒後。
「……は?」
低い声。
かなり不機嫌。
「急に呼ばれたっぽい〜……」
今日は久しぶりの完全オフだった。
映画行って、
カフェ行って、
夜はゆっくりする予定。
なのに。
「潰れた……」
マナがしょんぼりする。
するとライは無言でマナの肩へ顔を埋めた。
「ライ?」
「……休みたかった」
珍しく素直。
マナは思わず笑う。
「そんな落ち込む?」
「お前とデートだったのに」
ぼそっと。
低くて甘い声。
完全に家のライ。
「かわい〜」
「うるさい」
そのままぎゅっと抱き締められる。
「でも会議だけならすぐ終わるんじゃない?」
「……終わったらどっか行く」
「え、行く?」
「当たり前」
即答。
マナは嬉しくなって笑った。
◇
休日の学校は静かだった。
生徒のいない廊下。
電気の少ない校内。
その中を、二人は少し距離を空けて歩く。
私服なのに。
オフなのに。
学校へ入った瞬間、自然と“同僚の距離”になる。
「ライ〜」
「学校」
「まだ誰もいないじゃん」
「誰か来るかもしれない」
塩対応。
さっきまで抱き付いてたくせに。
マナがむくれていると。
「……会議終わったら、好きなだけ構う」
小声。
一瞬だけ甘くなる。
マナの顔が緩む。
「ずる」
「うるさい」
◇
会議は思ったより長引いた。
終わる頃には夕方。
「つかれた〜……」
職員室を出た瞬間、マナがライへ寄り掛かる。
するとライは小さくため息をつきながら、その肩を支えた。
「おつかれ」
声が柔らかい。
もう校内にほとんど人はいない。
だから少しだけ気が緩んでいた。
「このまま帰る?」
「んー……カフェくらい行きたい」
「行くか」
その時だった。
「あれ?」
声。
二人が同時に固まる。
振り返ると、生徒だった。
しかもライのクラスの女子。
「えっ、先生たち!?」
私服姿の二人。
近すぎる距離。
完全に終わった。
マナの顔が引きつる。
だがライは一瞬で距離を取った。
「……偶然です」
「いや絶対嘘!」
女子生徒が笑う。
「デートですか?」
「違います」
即答。
だが。
女子生徒はにやにやしていた。
「でも仲良いですよね〜」
「同僚です」
「ふーん?」
絶対信じてない。
マナは死にそうだった。
◇
帰宅後。
「……あれは危なかった」
ソファへ沈み込むライ。
珍しく疲れた顔。
マナは隣へ座った。
「ライめっちゃ焦ってたね」
「当たり前」
「私服で会うの初めてだったもんね」
ライは深く息を吐く。
そのままマナを引き寄せた。
「外であんな無防備なのやめて」
「え〜?」
「寄り掛かってきただろ」
「だって疲れてたんだもん」
「……かわいかったけど」
ぼそっ。
マナが笑う。
「嫉妬?」
「してない」
「嘘」
ライは無言でマナの肩へ顔を埋めた。
図星だ。
789