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「メンタル治療薬」…その薬を飲むだけで苦しいこと、辛いこと、悲しいことが忘れ去られるように心がスッと軽くなる…。 そんな薬があれば俺は誰に何を言われようともその薬を飲んでいると思う。
小さい頃から誰にも愛されずに生きてきた。家族からも、先生からも、仲間からも…いや、きっと俺には仲間なんてい ない。仲間として受け入れてくれる人がいない。
俺は鈴木みどり。26歳会社員。俺はこの「みどり」という自分の名前が好きじゃない。よく女に間違われる。名前の由来は俺の生まれた病院の名前が「産婦人科医院 みどり」だったからだそうだ。もっと愛情を込めて名前を考えてくれてもいいと思う。
今の時刻は16時40分。もうすぐで定時だ。まぁ…定時では帰れないと思う。さっき上司に明日までにやっておけと追加の仕事をもらったからだ。…明日までにやっておける量じゃない。
「今日も徹夜か…」
そんな言葉を呟く。気付けばこのオフィスには俺しかいない。
職場のパワハラにはもうなれたと思ってたが…正直限界に近かった。…いや、きっともう限界だ。
この思いを誰かに相談すれば少しは楽になるのだろうか?もちろん相談する人なんていない。精神科というものにも行ったことはあるが、俺には合わなかった…。他の精神科を探したって、相談窓口などに相談したっていいと思う。だが、俺にそんな余裕はない。時間にも、金にも、心にも。
深夜2時。何とか仕事を終えることができた。やっと帰れる。荷物をまとめてオフィスを出る。俺の住むアパートは職場から徒歩で通える距離にある。眠気を我慢して家に帰ることだけを考えて歩いた、歩いたんだか気付けば知らない道を歩いていた。どこだ?ここは。
「……この歳にもなって迷子とか…何やってんだろ、俺 。」
「迷子なんですか?お兄さん…。」
後ろから女の声がした。びっくりして心臓が飛び出たかと思った。後ろを振り返ると、ビニール袋を片手に持ったメイド服姿の女が立っていた。明らかにあやしい。誰だ?
女の持っているビニール袋の中には暗くてよく見えないが、何やら赤いモノが入っているように見える。「この女は危険だ」と脳が言っている。逃げなければ…だが、ここは俺の知らない道…どこに逃げればいいんだ?
俺はその場に立ち尽くすことしか出来なかった。怖かった。女は一歩ずつ俺に近付いてくる。
「ねぇお兄さん…どうしたの?固まっちゃって…迷子じゃないの?」
「…っ」
女は俺の目の前で立ち止まると、俺の顔をじっと見つめてきた。女の瞳は暗い夜道でもハッキリとわかるくらい透き通った綺麗な緑色の瞳だった。
固まってしまった俺をみて不思議そうな反応をしながら…ビニール袋の中の何かを俺に差し出してきた。