テラーノベル
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広場に足を踏み入れたとたん、ある一画で足を引き止められた。そこには、幾重にも重なった人々の「壁」ができていた。その中心では、絶え間ないカメラのフラッシュが、強い日差しを塗りつぶすほどの勢いで弾けている。
(……なんなんだ、あれは。有名人でも来ているのか?)
人混みの隙間からその中心を覗き込んだ瞬間、思考は停止した。
「――!!!」
そこにいたのは、僕が発売当初からずっと続けていたゲームの最推しキャラ──女神の姿をした白石さんだった。
プロの手による繊細なメイクは、白石さんの整った顔立ちを恐ろしいほど鮮明に際立たせていた。丁寧に引かれたアイラインが、澄んだ瞳をより大きく、力強く強調し、カメラの列を見下ろすような気高さを演出していた。
薄く桜色に色づいた唇は、瑞々しい光沢を湛えてわずかに開き、そこから漏れる吐息までもが届きそうだった。汗の一粒すら宝石のように輝かせるその肌は、一切の不純物を感じさせない。
ピンクゴールドの髪をなびかせ、淡いピンク色のドレスから、透き通るような白い肌を惜しげもなく晒している。白いギャザーが寄せられ、深く、鋭くV字に切り込まれた胸元からは、滑らかな曲線が覗いている。カメラの前でポーズを変えるたびに、無防備に、しかし確かな重量感を持って揺れるその双丘は、見る者の理性を根こそぎ奪い去るほどの破壊力を秘めていた。
極限まで短く切り詰められたフリルのミニスカート。そこから伸びるしなやかな脚。 ニーハイソックスが柔らかな太腿にわずかに食い込み、その境界線に生まれる「絶対領域」は、もはや神聖な不可侵領域のようだった。
扇情的でありながら気高く、官能的でありながらどこか神聖。 彼女は今、無数のレンズが放つ白い光を全身に浴びて、まさに地上に降臨した女神そのものだった。
周囲を取り囲む無数の男たちが、彼女にレンズを向けている。どろりと濁った黒い感情がこみ上げてきた。
(嫌だ。こんな光景、一秒も見たくない。あんなに綺麗な白石さんを、他の誰にも見せたくない……!)
今すぐ人混みを掻き分け、彼女の元へ駆け寄って、その細い肩を抱き寄せたい。彼女をどこか遠くへ、誰の手も届かない場所へ連れ去って、僕だけの視界の中に閉じ込めてしまいたい。 ――だが、その衝動は、すぐに氷のような冷たい自覚によって押し殺された。
(……僕が? この僕が、彼女を連れ去るだって?)
レンズの放列の中に、自分を置いてみる。あんなにも眩い光に包まれ、皆の賞賛を一身に浴びている白石さん。それに対して自分は、冴えない「モブ」に過ぎない。
今この瞬間、世界で一番輝いている女神の隣に立つのにふさわしいのは、自分のような影の薄い男ではない。もっと自信に満ち溢れ、彼女の圧倒的な光を正面から受け止めることのできる「主役(メインキャラクター)」のはずだ。
(モブが、ヒロインを奪い去るなんて。そんな都合のいい話、どんなゲームのシナリオにも、存在しないじゃないか)
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