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『暁』による圧力を受けながらも港湾エリアの利権獲得を諦めきれない三つの組織。すなわち『シダ・ファミリー』『荒波の歌声』『リンドバーグ・ファミリー』の三者は『暁』への対処に苦慮していた。

三者で最大の勢力を誇るマフィアの『リンドバーグ・ファミリー』ですら規模から言えば『暁』の半分以下。

一攫千金を狙う人夫の集まりである『荒波の歌声』については戦力と呼べるか怪しいものがあった。

その状況を何処からか嗅ぎ付けた『闇鴉』は、密かに三者を集めて会談を開いていた。

「つまり、我々に連合しろと言いたいのか?」

薄暗い酒場の地下室で紳士服に身を包んだ初老の紳士、『リンドバーグ・ファミリー』のボスであるリンドバーグは、仲介人を見据える。

「このままでは『暁』に各個撃破されるのは火を見るより明らか。三者が連合すれば規模としては同等となります。そうしていただけるならば、我々は喜んで資金と武器を提供しましょう」

「確かに『暁』は脅威だが、連合するにしても誰が仕切るんだ?」

『シダ・ファミリー』を率いるシダは、荒々しい格好に威圧感を乗せて『闇鴉』からの使者を睨む。

「当然我々が仕切ることになるだろう。それは自明の理では無いかね?」

「ふざけろ、てめえの下に付くくらいなら『暁』相手に玉砕した方がマシだ」

リンドバーグの発言に対して吐き捨てるようにシダが返す。双方は長年対立関係にあり、幾度も抗争を繰り返していた。

「まあまあ、ご両人落ち着いてください。このままでは私達は潰されてしまいます」

間に入ったのは『荒波の歌声』代表であるヤン。半ば堅気の組織であるため、威圧感をは無いが物怖じしない度胸を見せる。

さて何故三者が引き下がらないか。それは三者とも第三桟橋からの利益を受けていたためである。

用心棒、人夫の派遣等で利益を得ていた。

だが『暁』はそれらを自前で用意してしまうため、結果的に彼等の利益を完全に奪い取る形となるのだ。

「指揮系統については、皆さんで協議していただきたく。それで、連合を組んでいただけますかな?」

「言いたいことは山ほどあるがな」

「仕方ありませんよ、潰されるよりは」

「問題はあるが、連合については異論はない。いや、他に手はあるまい。資金などの援助を期待しているよ」

「ありがとうございます。では、前金としてこちらを納めますので上手くお使いくださいな」

使者は大金の詰まった袋を置いて姿を消した。

三者による連合についての情報をわざと酒場などで風潮しながら、である。

「宜しいので?」

護衛が尋ねると、使者は肩を竦める。

「会長のご指示だ。奴らは単なる時間稼ぎ、『暁』には敵わないだろう。本命がその間に準備を整える手はずだ」

「それを聞いて安心しました」

護衛は静かにナイフを取り出すと、後ろから使者の首を裂いた。

「!?」

「初対面の護衛なんかにペラペラ喋る奴は、我が組織に必要ない。マルソンさんからの伝言だ。あの世で悔いるんだな」

三者連合と接触した構成員は静かに葬られて、『闇鴉』が関与した証拠は物理的に消滅させられた。

それから数日後、『黄昏』に帝都で一年間の諜報活動を終えたラメルが帰還した。直ぐ様館に案内されて、シャーリィと面会する。

「お帰りなさい。先ずはご無事で何よりでした」

「いや、面目無ぇ。結局満足な情報は手に入らなかった。ただ一つの成果は、『マンダイン公爵家』は『闇鴉』を飼ってる可能性があるってことくらいか」

「『闇鴉』……何かと名前を聞きますね。先日の船旅でも襲われました」

「そうだったのか。気を付けな、奴等は裏から帝国を支配しようなんて考えてる不気味な連中だ。そんなのが敵に回るなんて考えたくもないが」

「既に敵対していますよ、ラメルさん」

「何と無く察したよ。それと、しばらく帝都には近寄らない方が良い。色々揉めてるからな」

「揉めているとは?」

「皇帝が病だそうだ。政府は隠してるが、あまり良くないらしいな。跡継ぎ達が慌ただしいぜ」

「皇帝が……まだ正式に世継ぎを決めていない筈。となれば、跡目争いが起きますか」

「多分な。貴族連中の動きも慌ただしい。下手に関与すると巻き込まれるぞ」

「争いは望むところです。帝位継承の争いならば、マンダイン公爵家も派手な動きは出来ない筈。疑惑でしかありませんが、黒幕である可能性のある人々が身動きの取れない状況は歓迎すべきものです」

「その辺りはお嬢ちゃんが決めることだ。それで、次の仕事は?」

「その件ですが、ラメルさん」

「なんだ?」

「前々から決めていたことを伝えます。私の大切なものになってください」

突然の勧誘にラメルは固まる。

「お嬢ちゃん、冗談はやめとけ。こんな薄汚い情報屋を囲うってのか?」

「初めてお会いしたその日から決めています。これからは、雇用主ではなく仲間として貴方には働いてもらいたいのです」

「こんな華の無いオッサンをか?変わり者だな」

「昔からです。お返事は?」

「正直驚いてるさ。シスターに連れられた変わったガキが、こんなに化けるなんてな。そして仲間になれと言ってきた」

「駄目ですか?」

「……ここで断れるほど浅い付き合いじゃねぇからな。それに、これ以上は一人じゃ無理だと思ってたんだ。お嬢ちゃん……いや、ボス。こんなオッサンで良ければ好きに使い潰してくれ」

「あら、意外とあっさり頷いてくれましたね。嬉しいです」

「長い付き合いだからな。それに、ボスの気前の良さは知ってるつもりだ。元々こっちからお願いするつもりだったんだ」

「もちろん報酬はこれまで通り弾みますよ。さて、そんなラメルさんに初仕事をお願いしたいの手増すが」

「港湾エリアの第三桟橋についてだな?」

「さすが、耳が早いですね」

「帰りに酒場に寄ったからな。なんでもうちに反発する奴らが連合を組むって噂が流れてたな」

情報を聞いてシャーリィは怪訝そうに尋ねた。

「連合、ですか?」

「ああ、無理もない話だがな」

ラメル曰く、三者のうち最大勢力であるリンドバーグ・ファミリーでさえ暁の半分以下の勢力しか持たないのだ。連合するのは珍しい話ではない。

「気になるところは、シダ・ファミリーとリンドバーグ・ファミリーが手を組むところだな。あいつらはボスが生まれる前からドンパチやってた連中だ」

「つまり、仲介した者が居ると?」

「ああ、三者連合より厄介な存在かもな。それに、噂が流れるまで日がない。わざと流した可能性もある」

「ふむ」

「その辺りも含めて調べるつもりだ。詳しいことが分かるまで動かない方が良いぞ」

「分かりました」

『闇鴉』の暗躍により『暁』は三者連合に対する警戒心を増して、結果的に『血塗られた戦旗』への警戒が手薄となるのである。

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