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あの後、闇龍ガンマは、一番被害の少ない中央国である自然の国へ避難させに向かった。
僕とミカエルは、三人の神の暴発の封印を解き、再び守護の国へと戻ってきた。
「お待ちしておりました、ヤマトさん……!」
守護神 騎士団長のアリシアさんは、全騎士を整列させ、カズハさんを囲うように守備していた。
未だカズハさんの暴発は始まらなかったようだ……。
「よかっ……」
その瞬間、岩龍ディスピアは突如として跳ね上がる。
「に、逃げて〜!!」
「ディスピア!?」
ズドォン!と、大きな地震のように揺れ、全員は岩龍ディスピアから振り落とされてしまった。
「ディスピア……何が……」
岩龍ディスピアであり、守護の国のずっと足場になっていたその下の本当の大地は、崩落を始めていた。
「下から……始まっていたのか……!」
そして、辺りからは巨大なゴーレムが何体も出現し、外から僕らを囲うように攻めてきた。
クソッ……! 岩の暴走は天変地異級だな……。
僕は大きく上空へと飛び上がった。
「騎士団の皆さんは周囲のゴーレム討伐をお願いします! アゲルも協力してあげてくれ! 九条さんたちもお力添えをお願いします!!」
僕の合図を起点に、アリシアさんも号令をした。
「今の話は聞いたな! 彼は先日訪れ、私たちを救ってくれた英雄だ! 指示に従い、ゴーレムの討伐を!」
そして、騎士たちは「オー!」と大きな声を上げた。
「ヤマト〜!」
上空からは、炎龍エンに乗って駆けつけに来たカナンの姿が見えた。
「よかった……! 来ると信じてたよ……カナン!」
この守護の国の岩壁裏は炎龍の巣になっている。
暴発が始まってから大分時間も経っていたから、四方守神もそれぞれ戦地へ辿り着く頃だと思っていた。
それなら……きっと上手くいく……。
「ルシフェル……!」
「は、はい……」
「先に正義の国へ行って、住民たちを闇魔法で避難させてあげられないか?」
「え、ぼ、僕が……?」
「光と闇、二つの魔法を使える君に頼みたい……!」
目を見開くと、ルシフェルは大きく頷いた。
光速移動なら災害も少ないだろう……それに、ホクトだってもう辿り着いているはずだ。
準備は整った……。
「カエンさん、お待たせしました」
「はい、準備は出来てますよ」
「そしてルイン」
「え……な、なんだよ……」
「闇龍の加護魔法の力を貸して欲しい」
「今更……僕の力を……。僕を粛清しないの!? あそこまでめちゃくちゃにしたのに……」
「大事な輪廻転生の仕事をしてくれてた重要人物を、粛清するわけないだろ?」
そして、僕はルインに微笑み掛けた。
「そうよ、私も貴方に押し付けてしまった」
続いて、リオラさんもルインの肩に手を掛ける。
「これから作戦を伝えます。まず、カナンと炎龍の炎魔法 × 爆破魔法で、カズハさんを覆う巨大な岩盤を破壊。その後、岩盤はもの凄い速度で回復して行きます。それを、ルイン、リオラさん、そしてアリシアさんの闇魔法を連続的に出して食い止めてください」
そして、カエンさんを見遣る。
「ルシフェルを行かせたのは、貴方の力に頼る為です。カエンさん、連続闇魔法で回復を阻止している隙に、岩の全くない上空へと、カズハさんを神螺で飛ばしてください」
「ふふ……ちゃんと覚悟は決められたようですね」
「はい……貴方のお陰です、カエンさん。僕は必ず、全員を守ってみせる……!」
炎龍の元に飛び、二人に指示を送る。
「りょーかい!」
「うむ、よかろう」
「じゃあ早速頼むよ! 手遅れになる前に……!」
そして、炎龍エンは下降を見下ろした。
「炎魔法 カエンブレス!」
「炎魔法 ボムロットー!」
ボォン!! と、巨大な爆破音と共に、カズハさんを包む岩盤は崩れる。
流石は四方守神と炎龍の魔法だ……!
「闇魔法! よろしくお願いします!!」
「闇魔法 ランギス!」
アリシアさんは漆黒の盾から鋭い闇魔法を放つ。
「闇魔法 リオラストラ!」
リオラさんも、続いてクナイを投げ、四方に闇魔法を展開させる。
「さあ、ルイン!」
「闇龍魔法 デスターク!!」
そして、最後にルインの膨大な闇龍魔法で、完全にカズハさんを包み込むことに成功した。
「最後は任せましたよ、ヤマトくん」
そして、カエンさんはすかさず、カズハさんを上空へと吹き飛ばした。
「光神魔法 エイレス!」
僕は、カズハさんの崩落の暴発を解いた。
しかし、崩落は止まらない。
一度崩れ始めてしまった大地は、止まらない。
「カズハさんの暴発は防ぎました! 皆さん、急いでこの場所から逃げてください!!」
闇神アゲルと、九条さんたちの助力もあり、周辺のゴーレムたちも一掃されていた。
騎士団長アリシアさんを中心に、避難が開始される。
しかし、
「アリシアさん……!!」
他の騎士たちに注意を訴えていたアリシアさんは、自分の足元が割れていることも気付かず、アリシアさんの足元の大地はパックリと割れてしまった。
まずい……ここで僕が神威を使ったら……正義の国に行けなくなってしまう……。
かと言って、ミカエルの浮遊も、こんな窮地に人一人を抱えられるほどの腕力なんてない……。
「どうしたら……」
「岩神魔法……クロノスタシス……!」
「カ、カズハさん……!!」
本来であれば、暴発から封印を解かれ、暫くは目を覚まさないと言うのに、カズハさんは自力で意識を取り戻した。
いや、厳密には、意識が朦朧としている中でも、身体が勝手に動いているのかもしれない……。
カズハさんは巨大な岩盤を地面に出現させ、アリシアさん救出どころか、周辺に大きな大地を創った。
「アリシアは……無事か……?」
「はい……! カズハさんの魔法のお陰で、アリシアさんは助かりましたよ……!!」
霞む視界で、僕の顔を見つめる。
「あれ……バベル……? へへ……夢か……? 俺、バベルから貰った力で……やっと大切な人を守れた……」
そう告げると、笑いながら意識を失った。
本当に凄い人だと思った。
「こりゃ、岩の神に勝てるはずもありませんね」
そうして、カエンさんも笑っていた。
――
ディムは、いつもの様に、国々を回っては酒を嗜む。
「よう、ナーガ。冥界の酒はあるか?」
「お、ディムじゃ〜ん! あるぞ〜!」
そして、一人の少女が目に映る。
「なんじゃ、ナーガ、また人と群れておるのか」
「あぁ、あの子、闇の神が生み出した悪魔。リオラって言うらしいんだけど、逃げて来たんだって」
「逃げて来た?」
「そー。死者の管理とか辛いんだってさー。もっと強くなって死人なんか出させないようにって、あーやってロイから忍術を習ってるみたい」
「アホらしいな」
しかし、ディムはリオラが気掛かりだった。
「のう、主。どうして力を望むのじゃ。お主一人が強くなったところで、死人が出るなんて分かっておるじゃろ」
「地上界では本来、光と闇の魔法は使えない。なのに、最近では闇魔法がちらほら発現してる。それは、地上界の人たちによる深い憎しみや悲しみが生み出してるの」
そして、リオラは漆黒の双剣を手に宿す。
「私は……弟と違って戦うことしか出来ない。だから、強くなって、憎しみが増えないように……弟がもうこれ以上泣かないように……戦争を止めたい……」
「アホらしい」
「え……?」
「一人で全てを抱え込もうとすれば、同じような苦しみも悲しみも出てくるのじゃ。視野が狭い。何もかもが狭い。闇魔法が発現して、困った人はおるか?」
「それは……分からないですけど……」
「そうじゃな。じゃあ実際に見るのがいい。わしに着いてくるか?」
そして、リオラはディムに仕えることになった。
守護の国、正義の国が、一番闇魔法の発現率が高い。
守護の国では、まさに闇魔法に苦しむ少女がいた。
「あ、あの子……」
「うむ、闇魔法が発現しているようじゃな。珍しくて他の子供たちから一線を置かれておる」
「やっぱり……闇魔法は不幸しか……」
そこに、一人の男が現れる。
「よう、闇魔法なんてすげぇな!」
「あなたは……?」
「俺はこの国の……うーん、一応、神。カズハだ」
「カズハ……様……」
そして、少女はカズハから闇魔法の扱い方、人の守り方を教えられた。
「闇魔法は凄いだろ! こんなに人を守れるんだ!」
「いえ、カズハ様がご教授下さったから……」
いつしか、少女の闇魔法は、人々の支えになっていた。
「よし、守護の国の守護神はお前だ! アリシア!」
「人はな、誰かに救われることもあるんじゃよ。救われないこともある。でも、誰かに任せたってよい」
リオラは、ボロボロと涙を溢していた。
「そうじゃな。わしと、少し旅でもしたり、気ままに過ごしてみろ。お主は想いが強すぎるんじゃよ」
そう言うと、ディムは守護の国の近くの森に、巣を作って住み始めた。