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「あんこさんは、本当に綺麗だから……」
「雫ちゃんの方がいい女だよ。3人とも、前のバカ男とは全然違う。レベルが違うよ! みんなそれぞれに誠実だし、それに社長さんを選んだのは正解だったと思うしね。あの人のそばにいれば、必ず雫ちゃんは幸せになれる。絶対に間違いないよ」
私は、あんこさんの言葉にいつも救われてる。
できることなら、こんな自信のない自分と早くサヨナラしたい。
「ありがとうございます。少しずつ……変われるようにしますね」
「うんうん、大丈夫だよ。あの人が雫ちゃんを変えてくれる。まあ焦らずに……かな。さあ、仕事しよっか」
「あっ、はい」
それから私達は、夜まで慌ただしく働いた。
帰ろうと店を出た時、「雫さん」と、声がした。
そこにいたのは希良君だった。
「どうしたの!? こんなところで」
「ごめんね。雫さん終わるのそろそろかなって……待ってた」
「風邪は? もう大丈夫なの? 平気?」
「うん、大丈夫。今は元気過ぎて、毎日走ったり運動とかしてるよ。心配かけてごめんね」
希良君は申し訳なさそうに言った。
「ううん。でも、それなら良かった。若いんだから元気過ぎるくらいがちょうどいいよ」
まだ20歳なんだもんね。
夢や希望に溢れた1番良い時期。
「体はそうだけどね。気持ちは……どうかな。まあ、でも大丈夫。ねえ、雫さん。良かったら少し話さない? 歩きながら、マンションまで送るよ」
「あ、うん。ありがとう……歩こっか」
私は、希良君にもちゃんと言わなければいけないと思った。
「希良君、あのね、私……」
「ねえ、今度ご飯行こうよ。またデートしよ」
「あっ、えと……」
今、私の言葉にわざと被せるように言った?
相変わらずものすごく可愛い笑顔で言うんだね。
そんな顔でそんなこと言われたら、何も言えなくなるじゃない。
ズルいよ……希良君。
私が黙っていたら、
「綺麗だね、この空。星が出てる」
って、空を見上げて言った。
私も、自然に上を向いた。
「本当、そうだね……」
「でも都会の空はさ、どうしても星が少ないんだよね。僕の田舎の星空は本当に綺麗なんだ」
そう言えば聞いたことなかったな。
「希良君の田舎って?」
「長野」
「長野県?」
「うん。絶対、東英大に入りたくてさ。田舎から出てきたってわけ」
完全に見た目で都会っ子だと思い込んでた。
「そうだったんだ……すごいね」
「全然すごくなんかないよ。東英大は、地方から出てきてるやついっぱいいるしね。北海道とか沖縄とか」
「みんな偉いなぁ。希良君は卒業したら長野に帰るの?」
「わからない。最初は理科の先生になれたら、どこでもいいって思ってたけど……この前、ゴールデンウィークに風邪引いて実家に帰ったでしょ? 久しぶりに見た田舎の風景が綺麗でさ。向こうに戻ってもいいかなって、ちょっと思った」