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ぷぎゅ
ぷぎゅ
ぷぎゅ
「……むぅ」
夜、宿屋の自室で杖を持って歩き回る。
歩く度におかしな音が鳴るのは、今日手に入れた『安寧・迷踏の魔石(小・小)』のせいである。
『迷踏』の部分の効果が、この『ぷぎゅ』というわけだ。
「これさえ無ければ……とほほ」
さすがにぷぎゅぷぎゅ言わせながら街中を歩くのは嫌なので、使わないときは魔石を外すことになるだろう。
私はこういうアイテムの付け替えを面倒に感じるタイプだから、いずれは解決策を見つけたいところだ。
ちなみにゲームとかでも、『敵に合わせて最大ダメージを出す装備』よりも『どんな敵でもほどほどにダメージを出す装備』――
……いわゆる汎用的な強さを好むところがある。完全に余談だけど。
「さて……それじゃどうしようかな。
試してみようかな? 試さないでおこうかな?」
ぷぎゅ
ぷぎゅ
ぷぎゅ
「ああ、やっぱりうるさい……。もういいや、試してみちゃおう」
私が何を悩んでいたかというと、魔石の『安寧』部分の確認だ。
鑑定によれば『高負荷の術の反動を15%軽減する』という効果なのだが、ユニークスキル『英知接続』の反動――
……つまり、頭痛を和らげることが出来るのかを確認したかったのだ。
ひとまず身の回りのことは一通り済ませているので、後は寝るだけ。
前回は頭痛の挙句に翌朝は起きれなかったから、これがある種の判断基準になるだろう。
……さて、それじゃ『英知接続』を何に使おうかな?
復習になるけど、『英知接続』はユニークスキル『創造才覚<錬金術>』と組み合わせることで、どんなアイテムでもその素材が分かってしまう、という強力なスキルだ。
強力が故に、使うと反動が出てしまうわけだけど……。
とりあえず神器の素材を調べるのは――
……作りたいものが明確じゃないから置いておいて、今だと『オリハルコン』か『賢者の石』あたりかな?
ちょっと悩ましいけど、今回は『オリハルコン』にしてみよう。
神器作成に直接関係してそうだしね。
よーし、それじゃいくぞー。
『オリハルコンを作りたいなー』
からの『英知接続』――
からの『創造才覚<錬金術>』――
――――
――――――――
――――――――――――ッ!!!
「やっぱり、痛ッ!」
……予想通りというか、やっぱり起こる頭痛。
前回よりも痛くないかもしれないけど……、さすがに痛みは比較できないかな?
プラシーボ効果……つまり、思い込みでそう感じているだけかもしれないし……。
などと考えていると――
──────────────────
【『オリハルコン』の作成に必要なアイテム】
・賢者の石×1
・金×1
・特殊条件<聖域>
──────────────────
――頭の中に、欲しい情報が現れた!
「オリハルコンを作るのに必要なのは、賢者の石と金!
……って、予想した通りじゃん!!」
ミスリルは賢者の石と銀が必要だったので、オリハルコンは賢者の石と金かなー……とは何となく思っていた。
くっ、貴重な1回を無駄にした……ッ!!
……でもそうしたら、次は賢者の石を調べれば良いのかな?
賢者の石を作ることができれば、ミスリルとオリハルコンの作成に一気に近付くことになるからね。
それにしても――
「……ああ、やっぱり頭痛がしんどい……。もう寝よう……」
痛み自体の差はよく分からないけど、『安寧』の効果は翌朝に起きられるかを判断基準にしよう。
それじゃ、おやすみなさーい……。
……あいたたた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「……ふわぁ。おはようございまーす……」
朝、目が覚めて時間を確認してみると、いつも通りの時間に起きることが出来た。
頭痛も特に感じられず、すっきりとした目覚めである。
……ふむ。
ざっくり言って、前回よりも多少は反動が減った気はする。
となると、やっぱり『安寧の魔石(小)』でしっかり反動を軽減してくれたっぽいのかな?
それなら、この効果は凄く助かることになるなぁ。
スキルを使うたびに頭痛に苦しむのって、精神的にかなりしんどいからね。
そしてもっと反動を軽くしたいのなら――
……『安寧の魔石(小)』が15%軽減だから、空箱の魔石と数字が同じだとすれば、『安寧の魔石(大)』は多分45%軽減になるだろう。
つまり大を2個、小を1個で105%軽減!
そうしたらもしかして、反動無しで『英知接続』を使いまくれるようになる……!?
そこまでいったら、錬金術師としてはもう無敵だよね。
うーん、よし! 神器作成と一緒に、安寧の魔石探しも旅の目的にすることにしようかな!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
その後はルークとエミリアさんに合流して、いつも通り食堂で朝食と取ることに。
「……しかし思い返せば、この食堂もずいぶんとお世話になりましたよね。
それも明後日の朝までだと思うと、何とも感慨深いと言いますか」
しみじみと、そんな思いがつい漏れる。
「夜も大体ここでしたからね。
ああ、ミラエルツから離れてもここの味が忘れなさそう……」
「ジェラードさんとも、ここで会いましたしね。
……ところでアイナ様、ジェラードさんはまだ帰って来ないのでしょうか」
「そうなんだよねぇ……。何かあったのかな?」
ジェラードはガルルンの様子見ということで、今はガルーナ村に行ってもらってるんだけど――
……結構時間が経っているのに、まだ戻って来ていない。
「さすがに、魔物にやられているとは思えませんが……」
「うーん。
もし明後日の朝までに戻ってこなかったら、ガルーナ村に1回戻ってみる?」
「そうですね。ガルルン……の出来具合も分かりませんから。それが良いと思います」
……うん? ルークはまだ、『ガルルン』って名前に抵抗感を持っている感じ……?
恥ずかしがる方が恥ずかしいのだよ、こういうものは。
「さて、今日と明日は特に予定は無いですが、何をしましょう。
私的には魔法のお店にもう一度行っておきたいんですよね。あそこのアイテムで、作れるものが多くなりましたし」
「それでは、今日は買い物に充てましょう。
そのあとはご当地グルメをまわる、ってことで!」
「え、あ、はい」
エミリアさんの提案により、何故かご当地グルメがくっついてくる。
「ところで、ミラエルツのご当地グルメって何ですか?」
「お肉!」
「じゃぁ没で!」
「そんなっ!!」
お肉は私には重いんだよー。
……でも重いお肉といえば、何となくあの屋台の広場を思い出して、屋台の広場といえばアレを思い出すなぁ……。
「そういえばエミリアさん、アレは結局参加しないで良いんですか?」
「アレって、何ですか?」
「屋台のアレ。
ほら、食べ比べをしてた屋台があるじゃないですか。エミリアさんもてっきり参加したいものかと」
「噂によれば、なにやら『暴食の賢者』という凄い方がいたみたいですよ。
エミリアさんよりも食べるんでしょうか?」
「ぶふぉっ」
「「だ、大丈夫ですか!?」」
「あ、す、すみません。へぇ、そんな方がいたんですねぇ……?
あ、わたしはそういうのにはさすがに参加しませんから、大丈夫ですよ!」
「そうなんですか? うーん、それは予想外でした」
「やだなぁ、アイナさんったら。
わたしのことを何だと思っているんですか!?」
「……暴食のプリースト?」
「アイナさん、それ酷い! ぶぅ!」
私の言葉に、珍しくエミリアさんがぶうたれてしまった。
デザートを奢ったら機嫌は戻ったんだけど、それってやっぱり――
……あ、いえ、何でもないです。