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今日は風と平野の結婚式だった。
幸せそうに微笑む風の姿を廉はずっと見つめていて、私はそんな廉をずっと見つめていた。
帰り道。
廉と二人で歩く。
廉「お前さ、風ちゃんとずっと友達でいてくれて、ありがとな」
ありさ「は?なんであんたがお礼言うのよ。保護者か!?」
廉「いや、ま、同僚として…。あの子、高校んとき、俺や紫耀との距離が近すぎてなかなか女友達できなかったやん?でもお前だけは、普通に接してくれてたから、今日も来てくれてすごくうれしかったと思う」
廉は昔からずっと風のこと心配してる。ふられた後もずっと。
廉は高校時代からずっと風のことが好きで、一度は付き合ったこともあったけど、結局、風が平野のことを好きで、廉がふられる形で別れたと聞いている。
だけど廉は、女子たちの目から風を守るために、「自分がふった」と嘘をついた。
廉「そういやお前さ、あん時なんで、本当は俺がふられたんだってみんなに言わなかったん?」
そりゃあ、当時は風に対して正直すっごくムカついた。でも、廉がそうまでして必死で守ろうとしているものを、私が傷つけることはできないと思ったから。
それに、そんなことして廉に嫌われるのが怖かった。
どんな形であれ、廉のそばにいたかった。
ありさ「まぁそれに、むかつくなら自分1人でムカつけばいいことだからさ。別に他の人を巻き込む理由はないしね」
廉「めっちゃさっぱりしてんなぁ、お前、やっぱ俺、お前のそういうとこ好きやわぁ」
えっ好き?(=゚Д゚=)
廉「めっちゃええやん、男らしくて」
…お、男…ですか(T_T)
廉「あれ?でもなんで俺がふられて風ちゃんが紫耀と付き合ったら、お前がムカつくん?お前もしかして…」
やばいやばい、気持ちバレた?でもいっそ気づいてくれた方が…
廉「お前もしかして、紫耀のこと好きだったの!?えっ!?えっ!?じゃあ今日めっちゃ辛かったやん!」
ありさ「違うわ!( ̄д ̄)」
岸くん、平野、風に続き、ここにも隠れ天然が…。
ありさ「まあまあ、そんなこといいから、もうちょっと飲んで行こうよ、コンビニでお酒買ってさ!ほら、公園あるし!」
慌てて話を逸した。
廉「お前、まじでオヤジ級に酒飲みやな」
誰にも言ってないけど、今のお花屋さんに就職したのは、どうにかして廉との繋がりを保っていたかったから。(ありさはお花屋さん勤務で、廉の勤めている高校に出入りしている)
“友達”なんて関係は簡単に疎遠になっちゃうから、”職場で会う人”って関係性でもいいから、繋がってたかったの。
もちろん今では仕事に誇りを持ってやってるけど、廉は私の人生の方向を左右するくらいに、私にとっては大きな存在なんだ。
プッシャー!
廉「うわっ、お前、缶、振ったやろ!?」
缶ビールを開けるとビールが溢れ出した、やばいさっき動揺して袋ブンブン振り回しちゃった。(´>∀<`)ゝ
ありさ「うわっ、これシミになっちゃうかな!?」
うひゃー、ショールがびっしょり!慌ててショールを取る。
ありさ「廉も濡れた?かかった?ごめんごめん!」
ん?んんっ!?
見下ろした先の谷間を二度見する。
あれ!?こいつ、こんなにナイスバディーやったっけ!?
目を細めて遠い昔の高校時代の記憶を手繰り寄せる…そうやった!昔から、こいつのことを女として意識したことなかったから気づかんかったけど、そういやバレ部はグラマラスの女子多かったわ!
え?ちょい待て。俺、なんでこいつ相手にドキドキしてんねん。
谷間見せられた位でどんだけウブやねん!百戦錬磨の恋愛マスター永瀬廉はどこいった!?
ふぁさぁっ。
背中に包み込まれる感触があり、顔を上げると、廉が自分のジャケットを脱いで肩から掛けてくれていた。
ありさ「え?何?別に寒くないけど?」
廉「そういうことやなくて。お前さぁ、ちょっと露出激しすぎ。そんなブリンブリン谷間出してると、乳揉まれるぞ」
ありさ「はっはぁ〜!?誰に!?」
男「誰にでもや!通りすがりの男みんなや!」
ありさ「何言ってんの!?ばっかじゃないの!?んなわけないでしょ!?」
廉「お前は隙がありすぎなんだよ!とにかく俺以外の男の前で、そんな肌出した格好してんなや」
は!?「俺以外の男の前で」って、ど、どういう意味…!?
廉「あ、いやちゃうねん…!俺は、目の前でお前に裸になられても、なんも手出さへんから安心やけどなっちゅーことや!」
ありさ「はぁ〜!?むかつく!」
パンチしようとして、腕を掴まれた。廉の顔が近い。廉の匂い。いつもこうして廉とじゃれあって、少しでも体が近づけた時は、本能的に廉の匂いを嗅いでしまう。
大体それはたった数秒間の出来事なんだけど、私にとってはそれがすごく幸せで。
前にもこんなことあったな…。
焦った。マジ焦った。
今、完全にこいつを女として見てしまった。
いや、高校からの友達やぞ?しかも“男友達“みたいな付き合いしかしてこんかったのに、何を急に意識してんのやろ。
いや、でもこいつとは昔からマジで一緒におると気使わんでいいし、性格さっぱりしてて付き合いやすいし、最近は泥んこになって学校の花壇の世話してる姿とか見て、結構ええ子やなぁなんて思ってたりする。
仲の良い友達やったっちゅう事は、もともと「人間的には好き」やったわけやから、そこに「異性としての魅力」を感じてしまったら、それって…恋愛対象になってしまうってことなんか…!?
そうやって意識して見てみると、なんやこいつ、今日めっちゃおめかししてきれいやん。さっきまで風ちゃんしか見えてなかったから気づかんかった。
こいつ、こんな美人やったっけ?俺、目おかしくなったんかな?
やべ、顔、至近距離、なんか照れる。いつもみたいに、何か冗談言わなきゃ…。
(ありさサイド)
「目の前で裸になられても手出さない」って、私、どんだけ恋愛対象外なんだろう…。(T_T)
そうだよね、今日だって、廉、ずっと風のことしか見てなかったもんね。でもさ、風は結婚しちゃったんだよ?
ありさ「廉、今日で風への恋は終わらせられたの?」
廉「は!?何がや!?」
ありさ「前に言ってたじゃん。風が幸せになる姿を見届けないと、前に進めないって。だから、今日でもう終わらせられた?前に進める?」
それは平野が日本に帰ってくる直前のクリスマスのこと。
その時も、廉と2人、歩いて帰っていた。
~~~回想~~~
ありさ「あ、廉、そっちだよね?じゃ、ここで」
廉「え、別に、家まで送ってくけど」
ありさ「えっ!?なんで!?」
廉「なんでって、夜道危ないし」
えっ、えっ?今、もしかして、廉が私のこと”女の子扱い”してくれてない!?
いつも、「オトコ女」とか言って、からかってくるくせに。
ありさ「え、え~、でも誰かに襲われた時さ、廉より私のほうが強そうだよね~。廉、か細いんだもん~」
はっ!やば。なんで私、そんなこと言っちゃうんだよぉ~~!
でも、私、ガタイいいし、男に守ってもらうってキャラじゃないし…。
足とか、絶対廉のほうが細いし…。
廉は、風みたいな華奢な女の子のほうが好きなんだろうし…。
廉、なんか言ってよぉ~~。絶対、今ムッとしてるよね…。
ここは素直に謝らなきゃ。
ありさ「あ、あのさ…」
あぁ〜なんで「ごめん」のたった3文字が言えないんだろう。つくづく自分が嫌になる…。
グイッ!
え…っ!?
突然廉に腕を引っ張られ、抱き寄せられた。
え!?何!?何!?:(;゙゚’ω゚’):
廉「あ、犬のう◯こ踏みそうだったから」
廉が足元を指差す。
…(´⊙ω⊙`)
せめて「車が来て危なかったから」とかにしてくれ…。( ̄д ̄ ;)
はぁぁ。なんで私たちって、こうも色気ないんだろう。
廉「お前、全然俺より力弱いやん」
はっ?
た、確かに今、かなり“男性の力“を感じた…。
ありさ「だって今のは!不意打ちだったから!」
廉「じゃぁ、本気出して、拒めるか試してみる?」
さっき掴まれたままの腕に、また廉が力を込めたのが分かった。
ありさ「は!?え!?な、何言ってんの!?」
手を振り払おうとしても、全然びくともしない。嘘でしょ。こんなに細いのに、何この力。私がちょっとでかいからって、結局男の力にはかなわないんだ。
廉「なんてな。ま、そういうわけやから、送ってくわ。行くで」
廉が、パッと手を離した。
あ、あれ?なんだ、もう終わりか…。
廉「なぁお前さ、さっき一瞬ドキッとしてへんかった?」
にやりとして振り返る。
ありさ「はぁ~~~!?だーれがあんたなんかに…!」
はっ!また憎まれ口を…ヾ(*ㅿ*๑)ツ
ここで素直になれば、さっきの続きしてもらえるかも…。
廉「まあ、そうやな、お前昔から、俺みたいなチャラい奴一番嫌いやって言ってるもんな」
ありさ「え!それは…」
廉「それが正解や、俺になんか惚れたら不幸になるだけや」
あ、あれ…?今、めっちゃ予防線張られた?
ありさ「それはやっぱり今でも風のことが忘れられないから?まだ好きなの?」
廉「いや、それは、俺の中でずっと昔に終わらせたことやから」
ありさ「嘘。だって廉、いろんな子と付き合うくせに、誰にも本気にならないじゃん。すぐ別れちゃうじゃん」
廉がふぅーっと息を吐く。
廉「お前は俺の事チャライチャライって言うけどさぁ、今まで付き合ってきた彼女だって、別にチャラい気持ちで付き合ってきたわけやないんやで?だけどあの子が…、いつまでもああやって寂しそうな顔して紫耀を待ってるから…」
全てを投げ出して、また戻りたくなっちゃうんだよね。
それは私も全く同じだよ、廉。
風が幸せになったのを見届けなければ、廉が前に進めないように、私だって廉が幸せになってくれなきゃ、他の人を好きになれないの。
何度別の人を好きになろうとしても、結局戻ってきちゃうの。
好きだよ…。バカみたいにずっとずっと、昔からずーっと廉が好き。
~~回想おわり~~~
君に近づきたいのに 距離は遠ざかるばかり
回り回って こんな日々を笑えるかな いつか
何でもない顔をして
泣きたいほどに僕は恋しているんだよ
King & Prince「Love Paradox」作詞: MUTEKI DEAD SNAKE 作曲:児山啓介、MUTEKI DEAD SNAKE
ありさ「ちゃんと終わらせられた?もう前に進める?」
お、おい!何核心に迫ってちゃってんの私!(,,꒪꒫꒪,,)
なんか言え、なんか言え。気の利いたこと、なんか言わなきゃ。
ありさ「…今夜は、私が、慰めてあげよっか?」
うわー、テンパりすぎて何言ってんだ私!?そんな経験値豊富ないい女的発言を…!
廉は一瞬びっくりした顔をしたけど、すぐにいつもの冗談のノリだと解釈したのか、ふっと笑った。
廉「そんな冗談言ってっと、本気で乳揉むぞ」
ありさ「…いいよ、廉なら。いいよ」
それは本当に夢のような時間で、廉の匂い、廉の声、廉の息遣い、廉の体温…こんなに近くで、こんなに長い時間感じたのは初めてだった。
今まではパンチするときに近づいたその数秒間に、一生懸命5回くらい息吸って感じていた廉の匂いが、こんなに存分に嗅げるなんて…。あぁ、私って変態かも…。
やばい、よすぎる…。よすぎて死にそう…。私、今日を最後にもう誰ともする事はないと思う。もうこのまま出家してもいい。今夜の思い出を胸に、一生生きていける。
廉「どうした放心して?そんなによすぎた?」
ありさ「はっ!はぁ~っ!?ばっかじゃないの!?別に私は…!あんたが傷ついてると思って慰めてあげようと思っただけだし!今までどれだけ女子にちやほやされてきたか知らないけど、別に私はあんたの顔がドタイプとかじゃないし、他の女子みたいに1度でいいから抱かれたいとか思ってたわけじゃないから!全然好きじゃないから!」
廉「あーそうですか、はいはい、わかってますよ〜」
廉は軽く聞き流すように言って、クルっと背中を向けてしまった。
あ、あー…なんで私、またそういう余計なこと言っちゃうんだろう…。ここでかわいい態度が取れてたら…。
もうほんと自分が嫌い…。
君を好きになっていく度 心すれ違うばかり
巡り巡る不器用な日々 気付けばほら ずっと
弾けそうなこの胸に 募る思いが空回り
素直になれない僕に恋しておくれよ
My love is PARADOX
King & Prince「Love Paradox」作詞: MUTEKI DEAD SNAKE 作曲:児山啓介、MUTEKI DEAD SNAKE
廉が一度こういう関係になった女の子とは、友達には戻らないことを知ってる。だから今までずっと気持ちを伝えることが怖かった。友達でいいから、ずっと廉のそばにいたかったの。
でも、どうしても、廉が欲しかった。がまんできなかった。永遠に失うかもしれないってわかってたのに、踏み込んでしまった。
今日、廉に近づけてバラ色の時間をもらったけど、もし明日から学校で会っても廉と話せなくなるとしたら、もう私の人生が彩る事は無い。
たぶん、今日が私の人生の中で幸せのピークだ…。
恋は鮮やかに 世界を彩るもの
でも時々やり切れないよ 逆説的…
(ありさサイド)
翌朝。
なんか、ホテルの帰りに明るい道を通って帰るのって、こんな気まずいんだなぁ…。(←実はラブホは初体験だった)
ありさ「…あ、あのさ…、昨日の全部嘘だから…!」
廉「そんな何度も言わんでもわぁってるって。お前、昔から俺のこと嫌いやもんな」
(廉サイド)
あんま言われると、さすがに傷つくやろ。
昨日やって、俺は結構…ていうかかなり?きもちよくて、終わった後もイチャイチャしよう思ったのに、突き放すようなこと言うからふて寝したわ。
チャラいチャラい言われているけど、こう見えても俺は、女友達には手を出したことはない。
俺は、一度こういう関係になった女とは、関係が終わった後はキッパリ縁を切る。友達に戻るとかはない。
だからこそ、大切だと思う友達には手を出さない。失いたくないから。
言っとくけど、昨日は、俺なりにかなり覚悟を持って一歩踏み込んだんだ。失いたくない大切な友達やった子に手を出すときは、「終わらせる気がない時だけ」って自分のルールにのっとって。
それなのに、「今夜限り」とか「一度だけ」みたいな雰囲気出してくるから。
「慰めてあげる」とか言ってたくせに、逆になんかフラれた気分になって傷つけられとるわ…。
ありさ「…ね、ねぇ!?…私の言ってる意味、ちゃんとわかってる!?昨日言ったこと、全部嘘だって言ってんの!」
廉「は?」
ん?何やったっけ?昨日言ったこと、全部嘘って…?
昨日言ったこと…
~~~~~~~
「あんたが傷ついてると思って慰めてあげようと思っただけだし!今までどれだけ女子にちやほやされてきたか知らないけど、別に私はあんたの顔がドタイプとかじゃないし、他の女子みたいに1度でいいから抱かれたいとか思ってたわけじゃないから!全然好きじゃないから!」
~~~~~~~~
廉「えーっとそれって…昨日のは、俺の失恋を慰めるためにしたわけじゃなくて、んで、お前は俺の顔がドタイプで、俺にいちどでいいから抱かれたいとずっと思ってて、そんで要は、俺のことが大好きってこと?」
沸騰するやかんみたいにみるみる間に耳まで真っ赤になって、身長でかいはずなのにこれでもかって言う位に体を縮こまらせて硬直している姿は、無言ながら全身で「yes」を物語っていた。
ま、まじか…。
え?じゃぁ今までのこいつの俺への態度ってもしかして、全部逆説的に解釈すればいいってことか…?
(ありさサイド)
ありさ「あ、私帰る…!」
廉「おい、待てコラ!」
逃げ出そうとしたら、手をグッと掴んで引き寄せられた。
廉「ったくお前は、わかりづれぇんだよ!もっと素直になれや」
す、素直にって…。
廉「ん?言うてみ?俺のことが好きだって??」
めっちゃニヤニヤしてる~~!
廉「素直に言えたら、もっかいキスしたるで?」
な、なにを~!?完全に上から目線で転がしてきやがるぅ~~~!!
で、でも、まさか昨日が私の人生の幸せのピークだと思ってたのに、まさか今日もキスのおまけがついてくるとは…。2日に渡って幸せのピーク継続しちゃうじゃん!
それは…めっちゃしてほしいけど…でもでも…っそんな恥ずかしいこと言えるわけないよぉ〜っ!
ありさ「あ、あんたのことなんて、大っ嫌い…!」
廉「…を、逆説的に言うと?」
廉がどんどん顔を近づけてくる。ま、また廉の匂いをめちゃくちゃ近くに感じる。
昨日のことを思い出して、もう全身の力が抜けていく。
君に触れたいよ
その腕 今すぐ引き寄せて
もう離さない 身勝手な幻想
King & Prince「Love Paradox」作詞: MUTEKI DEAD SNAKE 作曲:児山啓介、MUTEKI DEAD SNAKE
ありさ「だ…大…好きです…」
廉「はい、よくできました」
このツンが多めなツンデレ王子に逆らえるわけもなく、もう完全に身をゆだねて廉の匂いに包まれた。
素直になれない僕に恋しておくれよ
My love is PARADOX
King & Prince「Love Paradox」作詞: MUTEKI DEAD SNAKE 作曲:児山啓介、MUTEKI DEAD SNAKE