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第20話:「帰還と、自由の意味」
🚷 シーン1:碧の空の下で
星峰特区の碧い大地に、静けさが戻っていた。
朝日が東の山脈を染め上げる中、ナヴィスは岩陰に腰掛け、ゆっくりとカメラを外した。フードの奥からのぞく短く整った黒髪と、疲れの滲む表情が印象的だった。
その傍らに立つゼインは、黒いジャケットの前を開き、額に汗を光らせながら碧い空を見上げていた。
「……終わったな」
「本当に、な」
ナヴィスは笑いながら言う。青い瞳が細くなり、心からの安堵が滲んでいた。
「ギアは?」
「もう“碧いとびら”の最終調整中だって。すずかAIも準備できてる」
すずかAIの声が、ナヴィスとゼインの通信チャンネルに滑り込んだ。
「ナヴィス、ゼイン。日本への帰還ルート、確保済み。“碧いとびら”起動まで、残り90秒」
ナヴィスはふっと息をつき、ポケットから碧素結晶の欠片を取り出した。
「これが……あの子の遺した最後の碧素だ。名前も知らない兵士。でも、確かにあそこにいた」
ゼインは黙ってそれを見つめていた。彼の横顔に、一瞬だけ哀しみの色が差した。
🚷 シーン2:別れと再会
ギアが現れる。黒の防塵コートを羽織り、メカニカルなゴーグルを額に押し上げたその姿は、どこか寂しさを帯びていた。
「最後の調整、完了。あとはお前らが通るだけだ」
「ありがとな、ギア。お前がいなきゃ、誰も助けられなかった」
「礼はいらん。ただ……また碧素の残り香、背負って帰るのかと思うと気が滅入るな」
ナヴィスは笑いながら肩をすくめた。
「その分、未来を背負って帰るからさ」
ゼインが手を差し出す。ナヴィスがそれをしっかりと握った。
「……じゃあ、帰るか」
🚷 シーン3:“碧いとびら”、再び
天を裂くように浮かび上がる、碧い螺旋。すずかAIの声が冷静に響いた。
「ナヴィス、ゼイン。“碧いとびら”起動。日本側、座標確認済み。転送開始」
「行こう。もう一度、自由の意味を語るために」
ナヴィスが踏み出した瞬間、背後の空に浮かぶ星峰特区の山々が、まるで別れを告げるように風に揺れた。
彼の背にはカメラと希望。そして、胸の奥には――
“碧族として、どう生きるか”
という答えが、確かに宿っていた。
ゼインが最後に振り返った。
「……また来るかもな」
「うん。その時は、もっと笑える世界にしよう」
二人の姿が、碧光に包まれて消えた。