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79 - 第20話:「帰還と、自由の意味」

2025年04月10日

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第20話:「帰還と、自由の意味」



🚷 シーン1:碧の空の下で


星峰特区の碧い大地に、静けさが戻っていた。


朝日が東の山脈を染め上げる中、ナヴィスは岩陰に腰掛け、ゆっくりとカメラを外した。フードの奥からのぞく短く整った黒髪と、疲れの滲む表情が印象的だった。


その傍らに立つゼインは、ジャケットの前を開き、額に汗を光らせながら碧い空を見上げていた。


「……終わったな」


「本当に、な」


ナヴィスは笑いながら言う。碧い瞳が細くなり、心からの安堵が滲んでいた。


「ギアは?」


「もう“碧いとびら”の最終調整中だって。すずかAIも準備できてる」


すずかAIの声が、ナヴィスとゼインの通信チャンネルに滑り込んだ。


「ナヴィス、ゼイン。日本への帰還ルート、確保済み。“碧いとびら”起動まで、残り90秒」


ナヴィスはふっと息をつき、ポケットから碧素結晶の欠片を取り出した。


「これが……あの子の遺した最後の碧素だ。名前も知らない兵士。でも、確かにあそこにいた」


ゼインは黙ってそれを見つめていた。彼の横顔に、一瞬だけ哀しみの色が差した。





🚷 シーン2:別れと再会


ギアが現れる。防塵コートを羽織り、メカニカルなゴーグルを額に押し上げたその姿は、どこか寂しさを帯びていた。


「最後の調整、完了。あとはお前らが通るだけだ」


「ありがとな、ギア。お前がいなきゃ、誰も助けられなかった」


「礼はいらん。ただ……また碧素の残り香、背負って帰るのかと思うと気が滅入るな」


ナヴィスは笑いながら肩をすくめた。


「その分、未来を背負って帰るからさ」


ゼインが手を差し出す。ナヴィスがそれをしっかりと握った。


「……じゃあ、帰るか」





🚷 シーン3:“碧いとびら”、再び


天を裂くように浮かび上がる、碧い螺旋。すずかAIの声が冷静に響いた。


「ナヴィス、ゼイン。“碧いとびら”起動。日本側、座標確認済み。転送開始」


「行こう。もう一度、自由の意味を語るために」


ナヴィスが踏み出した瞬間、背後の空に浮かぶ星峰特区の山々が、まるで別れを告げるように風に揺れた。


彼の背にはカメラと希望。そして、胸の奥には――


“碧族として、どう生きるか”


という答えが、確かに宿っていた。


ゼインが最後に振り返った。


「……また来るかもな」


「うん。その時は、もっと笑える世界にしよう」


二人の姿が、碧光に包まれて消えた。

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