コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「どういう気持ちかな…。確かに、彼女の言い方は良くなかった。でも、悪気があったわけでもないんだ」
「じゃあ、ティニールはどんな気持ちで言ったのかしら」
「うーん…」
またも言葉に詰まる。伝えなければならないと思う事はあるけれど、彼女の歳で理解出来る言葉に変換をするのが難しい。いつもそれに時間を要してしまう。
「また不思議な顔してる」
下から見上げる視線と声が、私の意識を呼び寄せる。言葉を探す暇などまるでなかった。
「ティニは君に、嫌なことは言いたくないんだよ。楽しい言葉だけを聞かせてあげたかっただけなんだ。きっと」
「嫌なこと?」
「うん、あまり口に出すのは好ましくない話だよ。真実で君を傷付けるのは違うから」
「ふーん」
あまりに軽々しい一言が聞こえてきて、私は彼女にそぐわない言葉を発しているのに気付いた。大人の気持ちとか悪い話とか。この重さが、彼女に理解出来るか。考えている暇もなかった。
「少し難しい話だっただろ?こんな事、伝えるつもりじゃなかった」
「どうしてそんなに、私には難しいって決め付けるの?」
「え?決めつけだって…?」
私は彼女の言葉に、何を言われたのか分からなかった。
「そんなに線を引かなくてもいいんだよ」
彼女は、私にかがむように手招きをした。その視点にしゃがみこむと、頭上におりてきたのは小さな彼女の手だった。
「言葉なんて大したことないんだよ。難しくてもいいじゃない。子供にも伝わるものはあるわ」
彼女は私の頭を優しく撫でた。まるで、子供をあやすような手つきに、私はまた言葉を失ってしまった。
「そんなに心を離さないで。心で話して」
私は幻覚でも見ているのだろうか。明らかに私よりも幼いはずの彼女から、母親のような包容力を感じる。
「そんな…君は私に優しくして何をしたいんだい?」
小さな口から言葉は紡がれる。
「コリエンヌ、貴方には分からない事だよ」
彼女は、微笑んだ。それは、本心を誤魔化しているようにしか見えなかった。
「君が隠すことはないさ。言葉に出してごらん」
「いいえ、貴方はまだ離れているもの。だから、教えられないわ」
「心が離れている…と言いたいのかな。離れているかどうかは私にしか分からないよ」
「いいえ、分かっていないわ。コリエンヌ」
彼女は微笑みを崩さず言う。私の心を分かりきっているように言葉を紡ぐ。私は、この会話の流れに一つ感じるものがあった。繰り返しを見ているような。そうだ、私は彼女がしたいことが分かったかもしれない。