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彼女は微笑みを崩さず言う。私の心を分かりきっているように言葉を紡ぐ。私は、この会話の流れに一つ感じるものがあった。繰り返しを見ているような。そうだ、私は彼女がしたいことが分かったかもしれない。
「君も私を、決めつけているんだね?」
彼女は何も答えなかった。ただ、正解と言わんばかりに彼女の小さな手は離れていった。まるで、私の心との距離を示すような軌道を描きながら。
私は、やはりチタニーは不思議な子だと思った。
「どうして頭を撫でるの?」
「さて、なぜかな?」
この子は自分の鏡なのかもしれないと思った。良くも悪くも。私は黙って、彼女の頭を撫で続けた。優しくしたい以外に、理由はなかった。彼女が私に優しくしたように、心を近付けようとしたように。
「んふふ、伝わったわ。たぶん」
彼女はやっと子供らしい幼い笑顔を見せた。嘘偽りのない笑み。この子はきっと、私の心の距離を読み取ってしまう子なのだ。チタニーはずっと、近付きたかったのかもしれない。それを私が、彼女に気を遣ったつもりが心を離してしまっていたのかもしれない。
「おーい、二人とも」
手を振りながら、彼は花園をかけて来る。
「ドルリアンは、これが最後のチャンス」
「ん?ドルがどうしたって?」
チタニーは走ってくるドルには、聞こえないような声で呟く。
「彼は、嘘をつくよ 」
彼女は、決まりきったように言う。
「うそ…?」
「うん、嘘だよ。そしてそれが最後の…」
彼女は言葉をすぼめた。含みのある言い方に私は、答えを待った。
「どういうことだい?」
彼女は一息ついて、私の心まで見透かして見つめる。
「コリエンヌ、貴方はどうしたい?」
ちょうどその時、ドルは私たちの側へ着いていた。
「やあ、おふたりとも。お久しぶりだね」
ドルは息を切らしながら、平然を装った。
「そういえば、ドルと会うのは1週間ぶりだったかな?」
「ええ、そうだね。ちょうど先週は、妹の村へ顔を出しに行っていたものですから」
ドルはチタニーの元へしゃがみこんだ。
「お久しぶりです、チタニー。あなたも元気にしていたかな?」
彼女は、黙って彼を見つめていた。まるで、彼のつく嘘を見極めているかのようだった。決して、彼女は久しぶりの再会に笑顔を咲かすようではなかった。
「ドルリアン。よく戻ってきましたね。会えて嬉しい」
「相変わらずの大人ぶりっ子ですね」
ドルは彼女を見て、軽快に笑った。
「それより、ドル。妹さんはどうだったんだい?」
先週ドルと話をした時、彼は妹を教会へ連れて帰ると言っていた。その教会はもちろん、チタニーと出会ったこの場所のこと。でも、今のドルは一人きりでこちらに帰ってきている。
彼は、私の言葉に切なげに瞳を揺らした。
「やはり、気になりますか。僕が一人でここへ来たことが」
「それはもちろんだよ。君が妹と帰る未来を楽しそうに話していたんだから」
彼は妹のいる村から強制的に追い出されてしまったのだ。それも、村にそぐわない年齢になったとか。村の神の加護を受けられなくなった災いと称されたのだとか。
「君は本当に不運だった。あんなに酷い扱いを虐げられて」
私は許せなかった。