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友達が私に
「5月5日が誕生日なの?えー男の子みたい」
「ほんとだ、男だ」
「かわいそう」
「男の子の日が誕生日?」
「「「「男、男、男っ…」」」」
数人が私の机の周りで面白おかしく手を叩き囃し立てた。
すると、ガタッン……ガッターッン…
大きな音が聞こえたけれど、私は何が起こったのかわからなかった。
座ったままの私を7、8人が囲んでいたから。
でも皆が一斉に黙り音の方を見たことで出来た隙間から見えたのは、颯ちゃんが自分の机を倒し机の中身と前の椅子がぐちゃぐちゃに散らかっている光景だった。
「颯佑くん?」
沈黙の教室に恵麻ちゃんの声が響いた。
白川恵麻ちゃんは颯ちゃんの家と隣同士で私も毎朝一緒に登校するお友達だ。
「5月5日が誕生日で男なら、3月3日が誕生日の俺は女か?いいぞ…ほら、手叩いて言ってみれば?」
人気者の颯ちゃんの堂々とした態度に私の周りが戸惑いを見せたとき
「何やってる?」
先生が教室に来た。
「先生っ!」
恵麻ちゃんが先生のところへ駆け寄り、事の一部始終を話したことで皆が私に謝り事態は収拾され、優しい恵麻ちゃんが颯ちゃんの机を片付けた。
そしてその日、私を真ん中に恵麻ちゃんと颯ちゃんと手を繋いでいつもの道を帰った記憶。
二人の温かい手が嬉しかったのを覚えている。
‘リョウ、明日の帰り店に寄れよ。メンテナンス時期だ’
「調子いいよ」
‘安全に‘やり過ぎ’ということはない。通り過ぎるなよ’
「…わかった」
‘ぷっ…膨れてる’
「膨れてません」
‘はいはい、じゃあ明日な’
「うん。おやすみ、颯ちゃん」
‘腹だして寝んなよ、おやすみ’
何言ってんのよ…抗議する前に真っ暗になった画面に自分の顔が映りしばし見つめる。
こうして見るとまあまあ可愛いと思うけど…先ほどまで髪にブラシをかけていた鏡を再び見ると…やっぱり可愛く見えるけど、鏡に映る自分は実際より可愛いと読んだことがあるからこれは現実ではない。
鏡を見たときに、脳が自分の物足りないキレイじゃないと思う部分に無意識に自動の補正を加えるとか、見た目を自分の理想に限りなく近い形で記憶してキレイだと思う錯覚を起こすらしい。
好きな人がとびっきりカッコよく見えるのも、この脳内機能が関係しているそうだ。
人間の脳は偉大だ。
明日は帰りに佳ちゃん、颯ちゃんの自転車屋さんに寄れということね。
彼らのお父さんは街の反対側の駅前で自転車屋さんをしている。
昔ながらの街の自転車屋さんだ。
佳ちゃんたちも自転車が好きなのはもちろん、分解と組み立てが楽しくて自転車を触り始めたらしい。
大学へは行かずアルバイトしながらお父さんの店も手伝ったあと、二人で街の反対側、私たちの家の最寄り駅方面に店を出した。
街の自転車屋さんもするがママチャリ以外の、例えば100万円以上する高級自転車なども扱うカッコいい店だ。
そして二人とも技士資格を持つプロフェッショナルだ。
その二人が定期的に私の通勤自転車の点検をしてくれる。
ちょっと頻繁過ぎるほどに……