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「え…あ,終わった。」
私エアリス,現在大型魔物に睨まれております。スカイ,私を助けて。動いたら魔物に唸られ動かなかったらいつでも食べれる状態に。どうしろというのか。
「疾風斬!」
…これ絶対にやばい奴だよね。スカイもいろいろとレベルアップしたから大丈夫かと思ったけど…
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
大型魔物は大暴れし始め,森を破壊していった。なるべくギルドの方には近づかず,森の奥に猛ダッシュして私たちは逃げる。幸い魔物はそれほど足が速くなかった。けど一歩一歩が大きすぎて追い付かれそう。
「光珠発射(ディバインストライク)!」
魔力は多いため強い魔法は打てる。しかし,この魔族には聖属性が効かないようでびくともしなかった。
「スカイ!人間固有スキルの鑑定(サーチ)は使える!?」
「何とか!…鑑定!」
人間様の固有スキル鑑定は他人のステータス,能力を見ることが可能な便利魔法。しかしこの魔法は人間,異世界人にしか扱うことができない。その代わりなのだろうか,人間には使うことのできない魔法があるのは。
「この魔物には風属性が有効らしい!光と水は耐性があるって…俺ら終わってんじゃね。」
しれっとスカイが鑑定しながら言い放った。猛ダッシュしながらの戦闘は私たちにとっては不慣れでありなによりもこのチームは最弱である。こんな魔物を倒せるわけがない。
「誰かぁぁぁ!風属性は,いらっしゃあいますかぁぁぁ!!!!」
そう叫びながら私たちはひたすら走るのであった。魔物のターンは終わることはない。攻撃の空きがなさ過ぎて避けることしかできないのである。
「いらっしゃいますよ!…呼び起せ風の精霊,竜巻ぶっぱなしちゃいな!」
風属性の魔法が見事魔物に貫通した。あんな詠唱魔法,初めて知ったんだけど。乱暴すぎて何の魔法かわからない。スカイより少し身長が低い女の子,耳は丸い。だからこの子は…人間かな。
「大丈夫?」
「ありがとう,本当に助かったわ。」
「私はウィンド・スカラー。…で,どうしてこんなところに?」
スカラーさんはここらの森を管理している管理人さんらしい。木が倒れる音と私の叫び声が聞こえたから走って駆け付けてくれたとか…スカラーさんが居なければ今はあいつの胃袋の中。
感謝極まりない。
「レベル上げのためにここに来たの。だけどあいつに絡まれちゃって。私はエアリス・クリスティー。」
「スカイ。」
「へー,じゃあ冒険者なんだね?会えてうれしいよ。」
スカラーさんは笑いながら魔物の処理をしていた。血が散乱するなかスカラーさんは笑っていた。これじゃあどっちが本当の魔物なのかわからない。この魔物の肉は臭みを取ればかなりおいしい肉として味わうことができ,森にすむ人からすれば貴重な食糧とかなんとか。
「レベル上げなら私の管理領域の森に来て正解だよ。ここには低レベルの魔物から高レベルの魔物まで勢ぞろいさ。かなり厳しくなると思うから,頑張ってね。」
「えぇ,わかったわ。」
雪が降ってきた。私は寒さになれているがスカイは慣れていない。視界が悪くなる中,レベル上げは続行した。
「さっむ。」
「スカイ,今何レべ?」
「14。」
私もレベルがだいぶ上がってきた。そろそろ宿に戻ろう,そう思ったが濃霧と雪で視界には何も入ってこなかった。食料もそろそろ底を尽きる。魔物も雪耐性のミニイエティしか現れなくなってしまった。このままでは凍死するかイエティに殴り殺されるかの最悪の2択になってしまう。
「ちょっと待ってね。」
一番大きな木の頂上に登り,周囲を確認する。かなり遠くに光が数個。しかしあれは魔物の目の光であり建物の光ではない。本当に私たち積んだかもしれない。
「スカイ,とりあえず進むわよ。」
動かなければ体は温まらない。その言葉を胸に刻みながら私は足を進めた。
「スカイ,…スカイ?ねぇ,スカイってば!」
スカイの唇が真っ青になっていた。体も冷たい。早くしなければスカイが死んでしまう。低級魔法を詠唱し,回復薬を少量飲ませ灯(ライト)で周囲を温めた。雪が降る空を見て懐かしく思い,母を思い浮かべる。
「お願い,目を覚まして。」
そう祈っていた時だ。
「エアリスさん,スカイさん,大丈夫!?」
スカラーさんだった。ランプ片手に私たちを探しに来てくれたのだろうか。汗が額からにじみ出ている。
「とりあえず私のロッジに。」
私はスカイをおんぶし,スカラーさんについていった。
スカラーさんは魔物を操るかのように魔物が出ても何もせず,前を向いて歩いていた。その後ろ姿は私の母そっくりだった。
私の母は行動が速く,かといって何も考えていないわけではない忠実な人(エルフ)だった。戦闘があればすぐに戦場へ向かい兵士たちの回復に貢献した。私もそんな母が大好きで回復の勉強に励んだ。ある日,私は家族と雪山に向かい,スキーを楽しんだ。しかし,私はコースから大幅にずれてしまい迷子になった。雪山で一人泣いていたとき,ランプ片手に来たのが母だった。
「スカイさん,低体温症になっているから温めてあげてね。」
「…本当に,すみません。」
「いや,止めなかった私が悪い。」
スカイが目を覚ましたら誠心誠意謝ろう。そしてスカラーさんにお礼をして,このノースマウンテンを下山しようと思う。
to be continued→