テラーノベル
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僕はベッドでモジモジしていた。
今までは、シュメリと二人で寝ていたけど。
(これからも寝ていいのかな)
だって僕は、シュメリのことがとっても大好きで。
その好きは、バルトに対する好きとはちょっと違って。
「どうしたんだい、リンネ。早くおいで」
ベッドでシュメリが待ってる。
(それにバルトにも、猫の姿じゃないとダメって言われた)
バルトは、色々危険って言ってたけど。
何が危険か、よくわからない。
僕は恥ずかしいから、猫の姿になった。
「にゃぅ」
猫の姿なら、スリスリしてもゴロゴロしても、許される気がする。
「おや、今夜は猫になるの? 残念だな」
残念とは?
よくわからない。
僕はシュメリの隣で丸くなった。
「ねぇ、リンネ。私がこれからする話を、そのまま聞いていてくれるかい?」
「にゃう?」
「私とリンネが交わした、約束の話だよ」
僕は、人の姿に戻った。
「それはダメ」
「ダメ?」
「猫の姿じゃ、お話できないから、ダメ」
シュメリが微笑んだ。
「じゃぁ、人の姿のまま、私の腕の中においで」
シュメリが腕を伸ばした。
僕は人の姿のまま、おずおずとシュメリの腕枕で横になった。
「その様子だと、私との約束も思い出した?」
僕は頷いた。
「シュメリは、僕との約束、守ってくれていたんだね」
「当然だ。リンネを諦める気なんか、微塵もなかったからね」
シュメリが、僕の額にキスをする。
じわりと溶ける魔力が、熱い。
「僕がもし、何もかも忘れてしまったら、シュメリが思い出させて」
僕は、あの時の約束を反復した。
前世の命が尽きる直前。
僕はシュメリに、そうお願いしたんだ。
輪廻転生して魂が真っ白になったら、二人との思い出まで消えるんじゃないかって、不安だったから。
「途中までは、約束を守った。けど、ムスクの話を聞いてからは、リンネとの約束を破ったよ」
シュメリが眉を下げた。
「僕の記憶が、消えるかもしれなかったから?」
記憶を取り戻せるか、全部忘れるか。
それくらいのリスクがあると、ムスクは話した。
「これ以上、失いたくなかった。だったらいっそ、これから一緒に思い出を作ればいいと思ったんだ」
シュメリが、僕の額に額をあわせた。
「ごめん、リンネ。大事な約束だったのに」
僕はフルフルと首を振った。
「全部消えちゃうより、ずっといい。僕もシュメリの隣にいたい」
僕はシュメリにしがみ付いた。
「絶対に手放さない。だけど正直、リスクは消えていないと思ってる」
「記憶が消えるリスク?」
シュメリが僕の胸に手をあてた。
ドキリとして、体が震えた。
「今のリンネの魂は、まだ殻を被っているのかな? 確認してもらわないと、安心できない」
「あ……そっか」
僕は全部を思い出したけど。
魂の状態がどうなっているか、わからない。
「近いうち、魔術師団に行こう。魂の専門家がいる」
「いいの?」
僕が魔術師団に行くこと、あまりよく思っていなかったのに。
「ムスクには許嫁候補だと再三、言ってある。無理に奪うような真似をするなら、魔術師団を潰すけどね」
「ダメだよ、それはダメ!」
王家付の魔術師団を潰すなんて、逆賊になっちゃう。
シュメリがクスクスと笑った。
「潰すは冗談だけど。少しくらいは暴れるかもね」
「暴れるのもダメだよ」
聖騎士のシュメリが暴れたら、少しくらいじゃ済まない。
「全部綺麗に片が付いて、リンネが安全な状態になったら、婚姻を交わそう」
「婚姻……」
結婚するってことだよね。
そんな大それたこと、僕とシュメリができるのかな。
「僕、ただの獣人だけど。シュメリみたいな貴族様と結婚できるの?」
「今更、そんなことを心配するの?」
シュメリが驚いた顔をしている。
だって、心配になる。
獣人はただでさえ人より劣った扱いをされるのに。
「シュメリが……嫌な思いをしないの?」
シュメリが僕の顔を覗き込んだ。
「私は、リンネが欲しいよ。リンネこそ、どうなんだい?」
「僕?」
「リンネは私といて、幸せ?」
「うん、シュメリ、大好き」
シュメリが難しい顔をした。
「その好きは、バルトが好きと、同じ?」
僕は言葉に詰まった。
違うとは思うけど。同じでもあって。
上手く言葉で説明できない。
「仕方ないね」
シュメリが僕の顎に指をかけた。
「目を閉じないで、私を見て」
僕は素直に頷いた。
シュメリの顔が近付いてくる。
こんなに近付いたら、くっ付いちゃう。
「ま、待って、シュメリ!」
僕はシュメリの胸を押した。
(もう一つ、約束した。口付けをする時は……シュメリの全部を受け入れた時)
昔のシュメリと交わした約束だ。
胸のドキドキが早くて、張り裂けそうだ。
「やっぱり、まだダメか」
シュメリが残念そうに呟いた。
「嫌なんじゃないよ。ただ……」
まだ、自信がない。
僕なんかに、シュメリの全部を受け入れられるのかな。
「わかってる。リンネに足りないもの」
シュメリの指が、僕の唇を押した。
(僕に足りないもの、シュメリはわかってるの? 僕はわからないのに)
シュメリが眉を下げて笑んだ。
その表情が切なそうで、胸が詰まった。
「今宵は猫の姿でお眠り。バルトにも、そう注意されただろ」
「されたけど、でも」
シュメリの隣で、腕枕されて寝たい。
「猫の姿なら、胸に抱いてあげるから」
「うん……」
僕は猫の姿になって、シュメリの胸に潜り込んだ。
抱きしめてくれる腕はいつも通りだけど。
(どうしてだろう。物足りない)
変わらない温もりに安心する。
同時に、少しの切なさを抱いて眠った。
コメント
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第36話、めっちゃ良かった…! リンネが「好き」の違いに戸惑いながらもシュメリへの気持ちを自覚していく過程が甘酸っぱくて、でもシュメリの「まだダメか」って切なさが胸に刺さったよ。約束を反復する二人の信頼関係が美しくて、猫の姿で眠りながらも物足りなさを感じるリンネの心情描写にグッときた…🔥 続きが気になる!
お股ポテト
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はるにし
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