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「くらべられっ子、私は、くらべられっ子」
ずっとわかってた。
あいつの方が運動も、勉強も、人付き合いだってなんでも出来る。
それなのに、勝とうとして、比べられて、勝手に悔しがって
勝手にあいつのことが嫌いだ。
「そんなことないよ〜、」
なんでもできるくせに、なんでそんなに悲しそうな笑顔なのだろう。
「もうちょっとだけ、」
今日もまた夜更かし。そして勉強。あいつに勝つために。
こんなことしても勝てないのに。
「ねむ..」
眠いなら寝ろよ、わかってんだろ。
自分で口に出したことに自分でキレる。
意味がわからない。何をしてるんだか。
問3 次の問を読んで、A~Eの中で当てはまるものを1つ選びなさい。
「C、、」
A. B
なんだよ、CもBも変わらないだろ。
ずっとそう。どんな問題でも、環境でも、選択肢を与えられてその通りに行動したのに失敗ばかりする。間違える。
…呪いにでもかかってるのか。
「痛いの痛いの飛んでけ~、」
魔法の呪文。誰が始めたんだろう。
そんなことしても飛んでくわけではなかろうに。
意味なんて、ないのに。
気づいたら頬が濡れる。
悲しい訳でもない。嬉しい訳でもない。
分からない、何を考えているのか。
自分のことなのに。
いっそトドメを刺してもらおうか。
比べるのではなく、要らないものは消せばいいのだ。
「捨てられたいな。」
結局朝は来る。
「おはよー!」
あいつは朝から元気だ。
「…おはようございます..」
憂鬱。挨拶さえも気づかれない。
声が小さいのか、影が薄いのか。
いや、陰キャにでも友達のひとりやふたりいるもんだろ。
「あの、おはようございます、!」
….え?
久しぶりに話しかけられた気がする、
「あ、おはようございます…」
「…..」
「…..」
気まずいって、
用ないないんだったら話しかけるなよ。
どうせ私の名前も覚えてないんだろうな。
そんなこと考えてる自分が憎い。
せっかく話しかけてくれたのに何考えてんの?
イライラする。自分に。
「えっと、そ、そのキャラクター好きなんですか、?」
話しかけてくれた子は私のバッグについてるキーホルダーを指さして言った。
特に好きでもない。と、思いたい。
小さい頃、昔はよく遊んでた、今は大嫌いなあいつに貰ったキーホルダー。
「いや、べ、別に、。」
なぜか言葉が詰まった。
「そ、そうですか、!すみませんでした、」
まただ、好きなモノを好きと言えない。
特にこのキャラクターについて知っている訳でもないけどデザインは好きだ。
自分の好きなモノをまた、ひとつ潰した。
運動も好きだった。けどあいつと比べられるからやめた。
他にも好きなモノは沢山あったのに。
あいつがいなかったら、まだ好きなモノが好きだったかな。
違う、あいつのせいじゃない。
私のせいだ。
私が、私で大切なモノを馬鹿にしてるんだ。
やっと学校が終わった。
別に嫌なこととかがある訳じゃないんだけど、やりたいことがあったから
「よいしょっと、」
昔のものを掘り出してみた。
先生にアドバイスされたから。私の笑顔が少ないみたい。
あと、少し、ありのままで自分と向き合おうと思って。
手始めに、小学生の頃のもの。
「懐かしいな、」
水色のランドセル。まだあったんだ。
小6の時は水色がダサくてすっごい嫌な気分で学校行ってたっけ。
結構使い古されてる。沢山使ったんだな。
「あ、」
アルバムが出てきた。
開くのを躊躇した。
多分怖かったんだ。また、あいつのことが好きになっちゃいそうで。
でも、少しだけ覚悟を決めて、1ページ目を開いた。
「、、」
ほぅっ、と息をつく。
1ページ目から5ページくらいまでは私と、家族オンリーだったから。
「、!」
はっ、と息を飲む
ここからか。私とあいつの写真は。
笑顔だった。二人で近所の公園のブランコに乗っていた。
手を繋いでいた。喧嘩して、仲直りして、泣きながら抱き合っていた。
とても小さい頃。そういえば、関係性は幼馴染なのかな。
「も、やめよ、」
泣きそうだ。自然と辛い気分になる。
少し目を瞑る。
だんだん思い出してくる。小5くらいから中3まで。
あぁそうだ、中1の頃私は班行動が上手くできなかった。
先生にグループ作れって言われた時、とても焦ったのを覚えている。
V、WとX、Y、Z。
どのグループに属してみても、私ばっかり失敗して。
また、嫌われちゃった。
ここどこだろう。
暗いな。
怖い、のかな。
分かんないや。
あ、あっちの方明るい。
誰かいるかな。
あっちは、暗い、けど
蓋がされてる箱、かな。
じゃあ、明るい方がいい。
1歩、2歩と歩を進める。
少し進んだところでピタリと足が止まった。
あいつが、勝利の旗を持って堂々と、誇らしそうに立っていたから。
比べられる、嫌だ、怖い、辛い、
のくせに、1度止まった足はまた動き出す。
だんだん眩しくなる視界にイラついてボソッと呟いた。
「眩しすぎるわ、」
あ、寝てた、のか
じゃあ、さっきのは夢、?
「….」
なんだろう、すごく疲れた。
何かを確認するように手をグーパーする。
「…生きてる」
当たり前だろ。何してるんだろ。
でも、さ
「大した結果も出せないくせに」
なんで生きてるんだよ。
自分への苛立ちを口に出してみる。
独りだから『そんなことないよ』とか『大丈夫だよ、私なんて~』とかいらない慰めはない。
「…はぁ..」
深いため息をついた。そして布団に包まる。瞳を閉じればそこは夢の世界だから。
「..もう、死んじまえよ..」
ポツリと呟いて、今日に終止符を打った。
今日も結局学校。
そして中間テストが返される。
また、比べられるかな。
一応勉強はしてる方だから高い順位は取れる。
そのせいで目立って比べられる。
じゃあ、勉強しなければいい。
のだが、自分はできるのに自分の心のために手を抜くのが嫌で嫌で仕方がない。簡単に言えばプライドが傷つく。
いつもよりも憂鬱な気分で教室に入った。
「テスト返すぞ〜」
先生の野太い声がその言葉を発した。
さっきまでコソコソと話していた女子は魔法にかけられたようにピタリと話をやめ、教室に緊張感が走る。
「まぁ、順位は貼り出されているので各自見に行くように。」
そして出席番号順に呼ばれていく。ついに私の番だ。
「17番~」
「…はい」
五教科総得点462点
無理だ。こんなんじゃあいつには勝てない。
中休みに順位を確認しに行き教室に戻る途中、ある会話が耳に入った。
「すごーい!また学年1位なの?」
「あ、ありがとうございます、!」
まただ、悲しそうな笑顔。なんでもできるくせにふざけんなよ。
するとあいつを褒めちぎってた教師は私に気づいて、こういった。
「えっとー、学年3位だっけ、惜しかったね、!また頑張って!ほら、あの子と幼馴染なんでしょ!あの子ができるならできるよ!」
「…ありがとうございます。..」
それが辛いんだって。比べんなよ。
なにごともなく、そして、いつも通り嫌な思いをしたままテスト期間は終わった。
昼休み、私は屋上に来ていた。
理由はスッキリしたかったから。
でも、息を吸って吐いてを何回繰り返しても、モヤモヤは取れないまま。
「私、何がしたいんだろ、」
その時、ガチャっと屋上のドアが開いた。
正直びっくりした。
あいつが来たから。
「えっと、あの、ひ、久しぶり!」
わざとらしく、明るく話しかけてくる。
「久しぶり、」
「テストどうだった、?」
「どうだったって、聞いてたでしょ、先生と話してたの。」
「あはは、」
愛想笑い。嫌だったんだろうな。
「その、さ、?1回全部投げ出してみたら、?」
「は、?何言ってるの、?」
「全部外側に放り出して、休憩してみなよ、!」
ふざけるなよ。
「私はただでさえ人よりなんでも劣ってるのに、休憩なんて出来るわけない!」
あーあ、せっかく仲直り出来るかもだったのに。
怒鳴っちゃった。
「!…」
ほらびっくりして固まっちゃってるじゃん。
「…無理だよ、休憩なんて、」
私は逃げるようにその場を去った。
気づけば卒業。
3月はまだ雪が降ってるので、卒業式の日に桜の木の下で告白、なんてことはまず無い。てか南でも桜は咲かねえだろ。誰だよ考えたやつ。
そして、私は卒業まで何か大きなことをした訳でもなく、それなのにあいつとはずっと比べられてきた。
「ふざけんな、」
いつしかこれが口癖だ。
嫌な口癖、だと思う。
いつも通り靴箱を開けて、上靴を手に取ろうとした時
「なにこれ、」
手紙が入っていた。
いやいや、おかしいだろ。なんでこんな果たし状みたいな手紙が靴箱なんだよ。
内容はこう。
今日卒業式が終わったあと、絶対予定空けといてね!
あいつからの手紙だった。
イライラする。何を今更。
と、考えたけれど、手紙を受け取って置いて無視はないと思ったので、出向くことにした。
卒業式が終わり、教室で独り、自分の席に座り待っている。
「待っててくれたんだ、!」
安堵の表情を浮かべたあいつは、近づいたと思えば、すぐ私の手首を掴んだ。
「ちょっと、!」
「こっち!」
お気に入りの場所があるらしい。
半強制的に連れてかれた場所は、
「屋上、」
そう、あの日せっかく話しかけてくれたあいつを突き放した場所。
「あの、私に言いたいこととかない、?」
「は?」
唐突な質問に思わず一言で『意味がわからない』と伝える。
「…」
「…?」
気まずい沈黙が流れる。
まぁ、強いて言うとしたら
「なんであんな果たし状みたいなのが靴箱なんだよ、」
「え、そこ?」
あいつも疑問みたい。
だって少し黙ってやっと絞り出した答えがそこって、馬鹿みたいじゃない?
気づいてたんだろうな、私とあいつが比べられてたの。それを直接言って欲しいんだろうな。
「もっとさぁ、学校生活で嫌だった事的な、?」
「そんなの沢山あるし、」
いや、嘘。無い。ひとつしか。極力人と関わらないようにしてたから。
「嘘、でしょ、?」
その通り。私も正直に伝える。
「嘘、ひとつだけ。」
「教えてよ、」
なんであんたに教えなきゃいけない?
私の嫌な思いの元凶はてめぇだっての。
「…ふざけんなよ、」
「、なんて、?」
あぁ、もう諦めよう。隠すのはやめ。全てぶちまけよう。
「…ふざけんなって言ってんの!どうして?今更何?いっつも比べられる、私とあんたは!あんたが幼馴染だから、あんたが優秀すぎるから!私は私だけで認められないの?私が認められるにはいっつもあんたがセット!私にはなにかの才能もないし、寄ってくる人もいないし、だからって才能が欲しいとか、友達が欲しいとか思わない!もう構わないでよ!私をほっといて!」
あいつも諦めたか。私との仲直りなんて。
一気に全て吐き出したから呼吸が乱れてる。
あいつはそれを落ち着かせるように
「ごめんなさい..」
そっと抱き締めてきた。
「え…」
「今までごめんなさい。気づいてたのに、怖かったの、嫌われるのが。」
もう嫌ってるよ、
目尻が熱くなるけど、そんなの無視して話す。
「もう、遅いよ、。…嫌いになっちゃった。」
「そう、だよね、ごめんね、」
あいつは泣きながら何回も謝ってくる。
私がその場を後にしようと屋上のドアを開けかけたその時
「最後に、私の言うこと聞いてよ、」
まぁ、私の言うこと聞いてもらったし、
「…いいよ。」
何を言うのだろうか。きっと私だって辛かったんだから~みたいな、お前ばっかじゃねえよっていう感じだと思うけど。
「ほんとその通りだよ!」
「、、?」
いきなり何を言い出したかと思えば。
「私たちはくらべられっ子だよ!周りはなんにも見えなくなって勝手に決めつけてくるよ!私だって努力したし、あんただって努力したでしょ!だけど私は結果ばかり褒められて、そこまでの経過は誰も見てくれなかった!思い出して欲しいなぁ、あの頃は比べられずに2人とも対等だったでしょ、もう忘れないでよ!今のことも、昔のことも!ずっと大好きだから!」
今度は強く抱き締めてきた。
「息しようよ、2人で、」
私が馬鹿だったのかな。
「私も、ごめんなさい、勝手にあんたのこと嫌ってた。でも嫌いじゃなかった、ずっと、大好きだった、」
そこから何十分か、2人で抱き合って泣いた。もうこの1年分の涙出したんじゃないかってくらい。ずっと、ずっと泣いた。
そして、私たちは手を繋いで下校した。
END
皆さんどうも!暁輝です!
初ノベル!いかがでしたかね?
ツユ様の「くらべられっ子」という曲の歌詞パロにしました!
結構上手くかけた気がする!
ただすみません、切りどころが分からずクソ長いです。
ここまで来ていただいた皆様。本当にありがとうございます!
そうそう。そして、物語に出てくる人に名前をつけて欲しいです!
1人は「私」 主人公ですね!
もう1人は「あいつ」 主人公と比べられちゃう人です!
ぜひ考えていただけたら嬉しいなと思います!
それでは!
5435文字お疲れ様でした!