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ORVAS本部・会議室。
無機質な照明が部屋を照らす中、公太、唯我、一祟の三人は静かに席についていた。
正面には畑中とジュリー。
やがて、壁の大型モニターが静かに起動する。
最初に口を開いたのは、公太だった。
「またアビス絡みか?」
畑中は腕を組んだまま頷く。
「ああ。だが今回は少し毛色が違う」
一拍置き、低い声で続けた。
「――ある人物を捜してもらう」
その合図を受け、ジュリーが端末を操作する。
モニターに、一人の老人の写真が映し出された。
白髪交じりの髪に眼鏡をかけた、穏やかな表情の老人。
「この人は原田章造。六十五歳の科学者よ。数年前までは”天才科学者”として雑誌や学会でも注目されていた人物」
一祟が静かに尋ねる。
「現在は、何を研究されているんですか?」
ジュリーの表情が少しだけ曇った。
「……それが分からないの」
「ここ数か月、学会にも姿を見せず、連絡も完全に途絶えているわ。ORVASでも独自に調査したけれど、有力な情報は見つからなかった」
「つまり、その原田って人を探せばいいんだな」
唯我が淡々と言う。
「ええ」
ジュリーは頷き、さらに続けた。
「ただ一つ、気になることがあるの」
部屋の空気が静かに張り詰める。
「原田が姿を消した日と、アビスの活動が活発になった時期が、不自然なくらい一致しているの」
唯我の目が鋭く細められる。
「……つまり、原田がアビスと何か関わっている可能性があるってことか」
「そういうことよ」
ジュリーは真剣な表情で答えた。
「アビスが生み出している異形の存在。その技術と原田の研究が、無関係とは思えない」
一祟は静かに整理するように口を開く。
「つまり僕たちは、原田博士を発見し、安全を確保することが任務なんですね」
「ええ。その通りよ」
ジュリーは静かに頷いた。
公太も腕を組みながら、小さく息を吐く。
「なるほどな……。」
その時、畑中が三人を見渡し、低い声で告げた。
「だが、もし原田がアビスから逃げているのだとしたら――」
その一言で、部屋の空気が一変する。
「当然、アビスも奴を追っている」
「今回の任務は、敵との接触を避けられない可能性が高い」
「覚悟しておけ」
静寂。
公太はゆっくり拳を握り締める。
「上等だ。」
「守るべき人がいるなら、相手が誰でも俺は戦う」
唯我は静かに立ち上がる。
「任務開始だな」
一祟も穏やかに頷いた。
「参りましょう」
こうして三人は、新たな任務地――原田章造の目撃情報が残る街へ向かうことになった。
ORVAS専用車は、人影の少ない街を走っていた。
運転席には畑中。
助手席には公太。
後部座席には唯我と一祟が並んで座っている。
車内には重苦しい沈黙が流れていた。
やがて、公太が口を開く。
「……本当に見つかるのか?」
「それを確かめに行くのが俺たちの仕事だ」
畑中は前だけを見据えたまま答える。
「現地を確認せずに結論を出すのは早計です」
一祟も静かに言葉を添えた。
唯我は窓の外を眺めながら、小さく呟く。
「……そう簡単には終わらないだろうな」
その一言は、不吉な予感そのものだった。
車が進むにつれ、街の景色が変わっていく。
人影はない。
割れた窓ガラス。
倒れた看板。
風に転がる空き缶だけが、不気味な音を立てていた。
「……様子がおかしい」
畑中がハンドルを握る手に力を込める。
その瞬間――
ガシャァァン!!
激しい金属音が街に響いた。
目の前の道路へ、大量の鉄骨が崩れ落ちる。
畑中は即座にブレーキを踏み込んだ。
車が静かに停止する。
そして、崩れた鉄骨の向こうから――
二つの影がゆっくりと姿を現した。
人の形をしている。
だが、その全身から溢れる禍々しい気配は、人間のものではない。
漆黒の瘴気をまとった異形。
アビスのモンスターだった。
「……来たな」
唯我が静かに呟く。
公太はドアノブに手をかけ、鋭い視線を向ける。
一祟も無言で構えを取った。
車内を支配する緊張。
静寂を破るように、異形たちが一歩ずつ近づいてくる。
――原田捜索任務。
その幕開けは、予想以上に早かった。
コメント
1件
第56話、読み終えたよ。新たな任務「原田章造」の行方——アビスと関わりがありそうな科学者の捜索か。会議室での説明から早速戦闘に突入するテンポ、めっちゃ好みだわ。特に「敵との接触を避けられない」って畑中の台詞が緊張感あって良かった。公太・唯我・一祟の三者三様の覚悟もキマってるし、早くも異形と対峙してどうなるんだろう…次が気になる展開🔥