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「第二幕 第三章 黄金の都」
夜明け前、最後の砂丘を越えると、視界いっぱいに黄金の都が広がった。
朝日を浴びて輝く尖塔群、幾重にも連なる城壁、そして天空を渡る巨大な橋。
砂漠の果てに咲いた幻のような光景に、あなたは息を呑んだ。
「ようこそ、サラ=ジャハルへ」
ラシードの声は、どこか誇らしげだった。
城門の前では、商人たちが色鮮やかな布を広げ、香辛料や宝石の香りが空気を満たす。
水路には水車が回り、砂漠の民が運んだ果物や香木が積まれている。
それは豊かさと活気に満ちた、まさに砂漠の心臓だった。
しかし、城門をくぐった瞬間、雰囲気が変わった。
衛兵たちの鎧はどれも傷つき、街角には不自然に多くの武装兵が立っている。
そして広場の中央、掲げられた布には――赤い月の紋章が描かれていた。
「……ルナの紋章だ」
セレスティアが低く呟く。
ラシードの拳が無意識に握り締められた。
「くそ……やっぱり、あいつらが入り込んでる」
その時、王宮から鐘の音が響いた。
群衆がざわめく中、宮廷の使者が声を張り上げる。
「本日正午より、王女アミーナ様の婚約発表が行われる!」
その名を聞いた瞬間、ラシードの顔色が変わった。
「……アミーナだと!? あの王女は――死んだはずだ!」
群衆の歓声の中、あなたたちの胸には冷たい予感が広がっていた。
ルナの影が、王宮の奥にまで入り込んでいるのは間違いない。