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グーテンモルゲン!あたしFem!たぶん14話!
二村 美晴
勉強会序盤は、手のつきが悪かった燕ちゃんは、なぜか休みを頻りに頑張り始め、あっという間にノルマをノーミスクリア突破してしまった。
千蔭が乗せたのかどうかは知らないが、とにかく頑張っている燕ちゃんは、とてもいい顔をしていた。
そして、図書館帰りに、なぜいきなりスイッチが入ったのか聞いて見ると、休みの間に千蔭と話した内容を男声になりきれない声真似を付けて、説明してくれた。
千蔭いわく、本人の地頭はむしろ良いので少し乗せると一気に集中できるらしい。その集中力は、ミラバルカンを狩っているときの千蔭程らしい。そいつァすげえや。
まるで哲学みたい、という燕ちゃんの言葉を筆頭にいま哲学論争が始まろうとしていた。
そして、その議論は帰り道の分岐という障害によって終わりに差し掛かるところにいるのだが。
最後の議題があるらしい、
理由とその過程を再重視する千蔭が一番気になっていることらしい。
3人集まれば文殊の知恵。早速取り掛かるその議題は、
命を継続させる努力を生物がなぜするのか?またその努力をなぜ当たり前のように継続させることができるのか?強要された努力を嫌う人間が強要されているのになぜする?ということについての話をするわけである。
はっきり言って、私はどうでもいい。
まず議題のなかに哲学というものがある限り、考えるだけ無駄なのだ。
答えのないことほど考えて虚しく馬鹿馬鹿しいことはない。
だが、案外燕ちゃんはそういうのが好きなのか、食いつきよく話に付いていった。
最初に言ったのは、勿論言い出しっぺの千蔭。
「生物のきほんとして、まず本能というものが働いているだろ?その本能はDNAに組み込まれた基本プログラムだ。そのプログラムは、簡単な内容で在りながら一番強固なセキュリティが張られていてなかなか破ることはできない。まず概要はそこだ。その本能こそ命を存続させるための、生命線となる行動だ、それこそ誰が言ったか3大欲求、食欲、睡眠欲、性欲だ。それが硬いから逆にその本能を嫌っていても、体が言うことを聞かなくなって、行動に出る。それが男の性欲で言う、襲う、だ。例えが汚いが一番例えやすかった。すまん。まあ美晴は、嬉しいかもだが」
図星である。
「そ、だから俺の意見は、プログラムが強固過ぎて、それを自分自身をバグとすることができないので続けることができる。明確に言うと、続けさせられている。だな。哲学的に言うと神にそうさせられている。科学的に言うと、生物の基本性能に逆らえず、やむおえずそうさせられている。といった感じ。」
「やむおえずは確定なの?」
と、燕ちゃんが言った。
一瞬、千蔭は固まり、「そっか、そうしている場合もあるのかもな。最初の議題から、生物が生きるのを嫌がっている、みたいな感じだったしな。議題から狂ってるわ、辞めるかこの話。」と一瞬で言いくるめられてしまった。
考え方で言えば千蔭のほうが頭の出来が圧倒的に良いはずであるが、
でも
千蔭の頭が柔軟性を失った考え方をしていたのは事実であったし、それに対して当たり前の対応をして、いくら千蔭でも言葉は返せないのだろう。そこに関しては千蔭の悪い癖が出た結果だった。
そうした結果で今日最後の哲学論争は、全員の意見が、出る前に、終わりを告げた。
これ以降意見を出す場はあるのだろうか。