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「早速ですけど、話を始めましょう」
「マナ、さっさと謝れ!」
俺は何も言おうとしないマナの耳元でそう言った。
「すいませんでした。もう2度とこんなことはしません」
コイツ何で棒読みなんだよ。
「本当にそう思ってるの?」
「もちろんです」
「嘘ね。反省なんかしてないわよね?」
「嘘じゃないです」
「だったら何で、この数日間、毎日のように雄平さんに会ってはホテルに行ってたの?」
「ほっ、本当なのか?」
「だって会いたかったし、山崎先生も会おうって言ってくれたから」
「マナ、お前な――」
さすがに不倫相手の奥さんが出てきたのだから、諦めたと思って目を離してしまっていた。
「昨日、雄平さんには浮気が原因で別れることを告げました。そして雄平さんを訴えて慰謝料と養育費を十分に支払ってもらうことも伝えました。それにマンションには私と娘が住むので、雄平さんには出て行ってもらうことも――」
彼女の表情から本気なのはわかった。
「マナをどうするつもりですか?」
「五十嵐さんのお父さんは県議会議員の偉い方なんですよね? 娘さんが妻子のいる男と不倫してなんて聞いたらビックリするでしょうね」
「お父さんには言わないで下さい!」
父親という言葉が出てきた途端、マナの顔色はみるみる青ざめていった。
「黙っておく訳にはいきませんよね? 自分でしたことの罪をってもらわなきゃ。もちろん学校にもこのことは伝えるつもりよ」
「マナがしたことは許されることではありません。でも、マナは山崎先生に奥さんと娘さんがいるのは聞かされていなかったんです。マナも騙されていたんです。被害者なんです」
「でも、それを知ってからも、平気で2人きりで会ってホテルに行ってたわよね?」
「それは――」
「それに探偵の人に、五十嵐さんのことを調べてもらいました。五十嵐さんて学校じゃ問題児らしいじゃない? それに男性にだらしないって聞いたわ。誰とでもやるとか――」
「私、問題児じゃないし、誰とでもやりません」
「マナは黙ってろ!」
「五十嵐さんて本当に、おめでたい人ね」
詩織さんは呆れ顔でそう言った。
「おめでたい人? どういう意味?」
「当たってないとは言いませんけど、悪いところばかりじゃないんです。良いところもイッパイあるんです。どうにか許してもらえませんか? もし許してもらえるなら俺は何でもします。お願いします」
俺は許してもらえるよう詩織さんの前で土下座をした。
「本当に何でもしてくれるんですか?」
「はい――」
「他人のために土下座までしてくれる人なんていないわよね。もしかして明石くんと五十嵐さんは付き合ってるの?」
「ちがっ――」
「付き合ってます。マナが不倫をしたのは俺が原因なんです。ずっと構ってあげてなくて、寂しい思いをさせてきたからあんなことを――」
視線を感じたので横目でマナを見ると俺を睨んでんでいた。
「だったら今ここでキスをして見せて」
「きっ、きす――」
「嫌だよ。私しないから! 何でそんなこと指図されなきゃいけないの! 冗談じゃない!」
マナは俺がしようとしてることの意味が全く分かっていない。