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『初音ライダー剣』
第20話
“奸婦”
前回、ジャックフォームとなり、オーキッドアンデッドを退けたブレイド/ミク。ミクはそのジャックフォームの説明を受ける。
ミク「チーフ、もういいんですか?」
キヨテル「大丈夫ですよ。あまり落ち込んでもいられません。」
ミク「…あんまり強がらなくていいですよ?」
キヨテル「…いえ、本当に大丈夫です。それでは、始めましょう。」
ミクは以前、吉永みゆき=オーキッドアンデッドに翻弄されたキヨテルが未だに傷心中なのではと思い、彼を気遣う。だが、キヨテルはそれを感じさせまいと気丈に振る舞い、ミクたちに説明する。
キヨテル「まず、簡単に言うとジャックフォームとはカテゴリーJと融合したフォームです。しかし、上級アンデッドであるカテゴリーJと融合するには肉体にそれなりの負荷がかかります。そのため、カテゴリーQの能力(ちから)を介する必要があります。」
ミク「そうなんだ…」
キヨテル「カテゴリーJが鷲のアンデッドなので、ブレイドのジャックフォームは飛行能力を得ることが出来ました。」
キヨテルは必要分の説明を終えると、MEIKOの方へ振り向く。
キヨテル「MEIKO、2つ同時にとは行きませんでしたが、ギャレン用のアブゾーバーも現在製作中です。近いうちに届きますよ。」
MEIKO「分かりました。」
キヨテルはギャレン用のラウズアブゾーバーも開発中だという。MEIKOは勇んで返事をするが、その様子をリンが不満気な感じで割って入る。
リン「ねえ、私のにはラウズアブゾーバーてのはないの?」
リンはミク/ブレイドとMEIKO/ギャレンにラウズアブゾーバーがある一方で、自分にはないことに不満を感じていた。
キヨテル「申し訳ありませんが、レンゲルは強化の開発認可が下りていません。」
リン「…何で?」
キヨテル「おそらく、レンゲルは危険性を孕んでいるからでしょう。」
リンは不満を隠そうともせずに聞く。BOARDではレンゲルが未だに戦力になるかどうか疑わしく思われているのだろう。だから強化パーツを造ってくれない。リンはそう思えて、不満で仕方なかった。
嶋「…リン君、少し話がある。」
リン「へ…?」
リンの様子を見ていた嶋は彼女を宥めるべく、リンを外へ連れ出した。
嶋はリンをBOARDから連れ出し、屋外のカフェテラスで話を聞いてみた。
嶋「まず、何が不満なのかな?強化パーツがないことか?それとも、別の何かか?」
リン「…」
嶋は親切心で聞く。だが、リンは口を閉ざしている。
嶋「短い付き合いだが、ここまでの件で私のこともある程度信用できるはずだ。少しは腹を割って話してくれてもいいんじゃないか?」
嶋のその様子を見て、リンは少しずつ口を開いた。
リン「不満て言うか…何だろう…」
嶋「ん?」
リン「何ていうか…不満とか苛立ちとか考えてると、そういうのが増幅されていく感じなんだ。」
リンは自分の「おかしい」と思った部分を自身無さ気に答える。しかし、それこそが嶋が待っていた答えだった。
嶋「それだ!」
リン「へ?」
嶋「それがカテゴリーAの力なんだ。不満や不安、恐怖、嫉妬、憤怒…カテゴリーAはそういう感情を邪気で増幅させる力を持っている。そうやって人を操るんだ。」
リン「…やっぱり。」
リンもそうなのではないか、と思っていた。そして、リンはその対処法を問う。
リン「それで、どうしたらいいですか?」
嶋「それにはまず、君が強くなることだ。カテゴリーAの邪気に打ち勝つ心の強さが、今の君に何より必要だ。」
嶋はリンに心の強さを身に付けるよう言う。
リン「でも…」
嶋「不安なのは分かる。だが、それに飲まれてはダメだ。カテゴリーAは必ずそこにつけ込んでくる。そうならないようにするんだ。」
嶋はさらに話を続ける。
嶋「仲間たちを参考にしてはどうだ?ミク君は簡単には屈しない強い芯を持っているだろう。どうしたらそういう心を持てるか、話を聞いてみると良い。」
リン「…うん。」
嶋は強い芯を持つミクに話してみてはどうかと提案する。リンは嶋の意見に賛成し、その辺を聞いてみることにした。
嶋「それじゃ、ミク君には私から伝えておこう。リン君は少し気晴らしをしているといい。何か飲む物でも買ってくるから。」
リン「はい…」
嶋はそう言ってリンの元を去った。しかし、その様子を物陰から見ていた人物がいた。オーキッドアンデッド=吉永みゆきだ。彼女はライダーたちへの意趣返しを狙い、BOARDの近くに来て情報を集めていた。
みゆき「成程…カテゴリーK、ヤツか…」
ライダーたちにはカテゴリーKが付いている。そう察したみゆきはカテゴリーK=嶋をライダーたちから切り離すべく、リンに近づく。
みゆき「ねえ、あなた。」
リン「!?」
みゆき「大丈夫よ。戦いに来たんじゃないから。」
みゆきは背後からリンに声をかける。リンは当然、警戒するが、みゆきは戦う気はないと言って軽く微笑する。
リン「…何?」
みゆき「あなたが今よりもっと強くなれる方法を教えてあげましょうか?」
みゆきはリンと嶋の会話を陰で聞いていたため、事情を把握している。その上で、リンが乗ってきそうな話題を吹っ掛けた。
リン「…そんな簡単な方法があるの?」
みゆき「あるのよ。あなたが先のあの男・カテゴリーKを倒して、その力をモノにすればいいの。」
レン(へえ、面白えな!)
リン「え?あ、ああああ!」
みゆきの言葉に、リンのもう1人の人格・レンが興味をそそられる。そして、リンは頭を抱えて苦しみ出し、その直後にレンと入れ替わった。
レン「それで、どうすんだ?」
みゆき「まずは2人でカテゴリーKを倒すの。そして、ラウズアブゾーバーを手に入れれば、それであなたが晴れて最強のライダーよ。」
みゆきはざっくり練った計画をレンに告げる。
レン「けどな、BOARDはオレ用にラウズアブゾーバーなんて造ってくれそうにねえぜ?」
みゆき「それはブレイドから奪い取るの。できるでしょう?カタログスペックではレンゲルのがブレイドより上なのだから。」
レン「へっ、成程ねぇ…早速仕掛けるか!」
レンはみゆきの計画に賛同し、勇み足で嶋の後を追う。
嶋は自販機の前で飲み物を選んでいた。とりあえず、自分はコーヒーを選んで、リンにはスポーツドリンクあたりにでもしようか、と思い、自販機に小銭を入れる。だが、その最中に敵意を孕んだ視線を感じた。
レン「よお、カテゴリーK。」
嶋「リン君?…いや、カテゴリーAか。」
嶋はリンのレンへの変貌に目つきが変わる。
レン「封印してやるよ。望み通りにな!」
レンは嶋に対し、敵意剥き出しで言い放ち、レンゲルバックルを取り出して腰に装着する。
レン「変身!」
「OPEN UP」
レンゲルバックルからスピリチアエレメントが投影され、レンは仮面ライダーレンゲルへと変身する。そして、レンゲルはレンゲルラウザーを手に取り、嶋に斬りかかる。
嶋「く…」
嶋はレンゲルの連続攻撃を紙一重で回避していく。だが、その死角を突いて蔦が嶋の片足を絡め取る。
嶋「!?」
嶋はバランスを崩して転倒しそうになるが、何とか受け身を取った。蔦の先からはオーキッドアンデッドが登場し、レンゲルの左側についた。
嶋「…カテゴリーQ!」
みゆき「ふふ、お久しぶり。」
嶋「リン君に何をした?」
みゆき「ちょっとお願いしただけよ。あなたたちを倒すためにね!」
レンゲルとオーキッドアンデッドは同時に嶋に攻撃を仕掛けてくる。嶋はリン=レンゲルがオーキッドアンデッドにそそのかされたのだと察した。嶋はやむを得ずタランチュラアンデッドへと変化し、応戦する。
アンデッド出現の報を受けたミクとMEIKOはバイクを駆って出撃する。
ミク「じゃあ今、嶋さんが戦ってるの?」
ウタ「うん。それと、レンゲルがいるみたい。」
ミク「レンゲルが?」
ミクはレンゲルがいることに疑問を抱く。何かあったのだろうか。
MEIKO「ミク、急ぐわよ!」
ミク「うん!」
状況を察したMEIKOはミクに急ごうと言う。そして、MEIKOはギャレンバックル、ミクはブレイバックルを取り出し、腰に装着する。
MEIKO「変身!」 ミク「変身!」
「TURN UP」 「TURN UP」
MEIKOはオリハルコンエレメントを潜ってギャレンに、ミクはブレイドに変身し、嶋たちがいる場所へ急行する。
カフェテラスの近くの河川敷では、タランチュラアンデッドがレンゲルとオーキッドアンデッドを相手に戦っていた。オーキッドアンデッドと彼女に扇動されたレンゲルは連携こそ取れていないが、2人分の攻撃を上手く利用してタランチュラアンデッドを攻撃していく。
嶋「リン君、目を覚ますんだ!邪悪な意思に飲まれてはダメだ!」
レン「うるせえ!」
レンゲルはタランチュラアンデッドの呼びかけを一蹴し、攻撃を繰り返していく。そこにオーキッドアンデッドの攻撃も加わり、タランチュラアンデッドはじわじわと追い詰められていく。そこに、3人の足元に銃撃が飛んできた。
MEIKO「嶋さん!」
ミク「リンちゃん!」
ギャレンとブレイドが戦闘に駆け付けた。2人はオーキッドアンデッドを退けると、レンゲルに左右から組み付き、腕を掴んで動きを止める。
ミク「リンちゃん!」
MEIKO「リン、何してるの?やめなさい!」
レン「放せ!」
ブレイドとギャレンは左右からレンゲルを止めようと説得を試みる。だが、レンゲルは2人を振り払う。
MEIKO「…またちょっとお仕置きしなきゃダメみたいね。」
嶋「よせ!」
MEIKO「へ?」
ギャレンはレンゲル=リンを正気に戻すべく、ギャレンラウザーに手をかけて再度攻撃を考える。しかし、タランチュラアンデッドに止められ、踏みとどまる。
嶋「この子のことは私に任せてくれ。君たちはカテゴリーQを追うんだ!」
タランチュラアンデッドはレンゲルに組み付きつつ、ブレイドとギャレンにオーキッドアンデッドを追うよう言う。
ミク「…分かりました。でも、無茶はしないでください。」
ブレイドはタランチュラアンデッドに無茶をしないように言うと、ギャレンと共にオーキッドアンデッドを追うべく、河川敷を降りて土手へと向かう。
土手ではオーキッドアンデッドが2人を待ち構えていた。
ミク「今度は逃がさないよ!」
みゆき「ふふ、逃げるって?お前らは誘い込まれたんだよ!」
勇んで挑むブレイドとギャレンに対し、オーキッドアンデッドは地面から蔦を伸ばしてブレイドとギャレンの足を取り、転倒させる。
ミク「うあっ!?」 MEIKO「うっ!?」
ブレイドとギャレンの足に蔦が絡まり、動きを封じてきた。オーキッドアンデッドはこの隙を狙い、ゆっくりとギャレンに近づく。だが、ギャレンはこの機にギャレンラウザーをオーキッドアンデッドの懐に近づけ、連射する。
みゆき「ぐっ!?」
オーキッドアンデッドは怯んだ。ブレイドはこの隙に蔦の絡みから脱出し、ラウズアブゾーバーに♠QとJのカードを入れる。
「ABSORB QUEEN」
「FUSION JACK」
ジャックフォームとなったブレイドはオリハルコンウィングを広げて空中へ飛び上がり、ブレイラウザーから♠5と6のカードを取り出してラウズする。
「KICK」
「THUNDER」
「LIGHTNING BLAST」
ミク「らああああ!」
ブレイドは空中から急降下して電撃のエネルギーを纏った右足を突き出し、オーキッドアンデッドに必殺キックを蹴り込む。
みゆき「うあああッ!」
オーキッドアンデッドは大きく蹴り飛ばされ、川に落ちて流れていった。
レンゲルとタランチュラアンデッドの戦いは泥試合となっていた。タランチュラアンデッドは戦闘に乗り気でないため、レンゲルに攻撃はほぼ仕掛けない。だが、レンゲルはお構いなしにタランチュラアンデッドを攻撃する。タランチュラアンデッドは説得も試みたが、邪気を増幅させて暴走するレンゲルには届かなかった。
嶋「…やはり、私が封印されるしかないのか。」
タランチュラアンデッドはついに自ら封印される覚悟を決めた。そして、タランチュラアンデッドは両腕を大の字に広げてレンゲルに言い放つ。
嶋「リン君、どうか忘れないでくれ。君を想い、支えてくれる人たちがいることを。」
レン「うっ…」
レンゲルは頭を抱えて苦しみ出した。タランチュラアンデッドの先の言葉でリンの意思が息を吹き返し出したのだろう。だが、レンゲルは苦しみつつも、♣5と6のラウズカードを取り出し、レンゲルラウザーでラウズする。
レン「…ううああああああああ!!!」
「BITE」
「BLIZZARD」
「BLIZZARD CRUSH」
レンゲルは高く跳び上がり、冷気のエネルギーを纏った両足でタランチュラアンデッドにクロスキックを蹴り込む。タランチュラアンデッドはそのまま倒れ伏し、アンデッドクレストを開いた。レンゲルはそこにブランクのラウズカードを投げ込み、タランチュラアンデッドを封印した。
レン「…」
レンゲルは無言で♣Kのカードを凝視する。そこに、オーキッドアンデッドとの戦闘を終えたブレイドとギャレンが駆け付けた。だが、2人がこの状況を察するのに大した時間はかからなかった。
MEIKO「リン、そのカード、一体誰を封印したの?」
レン「…」
MEIKO「リン、どこ行くの?リン!」
レンゲルはギャレンの問いかけを無視して、♣Kのカードを持ってそのままBOARDから去ろうとする。しかし、ブレイドの姿を見て立ち止まり、レンゲルラウザーの刃をブレイドに向ける。
レン「ブレイド、アブゾーバーをよこせ!」
ブレイドらが戦っていた土手から離れたところの川の浅瀬では、オーキッドアンデッドが倒れていた。彼女は目の前に咲いていた蘭の花に見惚れていた。だが、それも数分と経たずに終わった。オーキッドアンデッドを見つけた仮面ライダーカリスが彼女に目掛けて風の矢を放った。風の矢はオーキッドアンデッドの体を貫き、大ダメージを負わせる。オーキッドアンデッドは再び倒れ伏し、アンデッドクレストを開いた。カリスはそこにブランクのラウズカードを落とし、オーキッドアンデッドを封印した。そして、カリスは浅瀬に咲いていた蘭の花に目を遣りつつ、その場を去った。