テラーノベル
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■読まれる前の注意書き
・本作は「カントリーヒューマンズ(CountryHumans)」の二次創作(ファンフィクション)です。
・実際の歴史、国家、政治団体、宗教、および実在の人物とは一切関係ありません。
・かつて対立していた国々が、現代風の平和な世界線でひとつ屋根の下、あるいはご近所さんとして仲良く「ほのぼのとした日常」を送っているパラレルワールドを舞台にしています。
・キャラクターの口調や性格に独自の解釈(マイルド化)が含まれます。
・以上の点をご理解いただける方のみ、お進みください。
■第12話
題名:白銀の庭の雪合戦、あるいは理不尽な包囲網
ジャンル:日常・冬のほのぼの
スマホ騒動から数週間後、日帝の住む街は一晩のうちに深い雪に覆われた。
朝、障子を開けた日帝が「おや」と声を上げるほどの銀世界。庭にはこんもりと白い綿帽子を被った一本桜が静かに佇んでいる。
「うわあぁぁ! 雪だ! 真っ白だよ、日帝!」
居間から飛び出してきたイタ王は、まだパジャマ姿のまま縁側に身を乗り出し、冷たい空気に目を輝かせた。
「イタ王、不用意に外へ出るな。室温が下がる。それにそんな薄着では自己管理能力を疑われるぞ」
マフラーを几帳面に二重巻きにしたナチが、リビングから厳しい声をかける。しかし、その手にはしっかりと防寒用の厚手の革手袋が握られていた。
「ははは! この程度の雪で縮こまるとは、やはりナチは温暖な地域の生まれだな」
豪快な笑い声と共に現れたのはソ連だ。彼は半袖のシャツの上に大きなコートを羽織っただけの、相変わらず狂った防寒基準で庭へと足を踏み入れた。ザク、ザクと雪を踏みしめる音が響く。
「ソ連、我が国の冬を侮るな。そして貴様のその、筋肉だけで寒さを耐え凌ごうとする非科学的な態度が気に入らん」
「なら証明してみせろ。ほら、行くぞ!」
ソ連が屈んだかと思うと、一瞬で綺麗な球体の雪玉を作り上げ、ナチに向けて容赦なく投げ放った。
風を切り裂くような速度で飛んだ雪玉は、ナチのわずか数センチ横を通り抜け、庭の灯篭に激突して粉々に砕ける。
「……ほう。宣戦布告と受け取るぞ、ソ連」
ナチの目が、すっと冷徹な光を帯びた。彼は即座に雪を掴むと、完璧な球体、かつ投擲時の空気抵抗を最小限に抑えたフォルムの雪玉を量産し始めた。
「わあ、雪合戦だ! 僕も混ぜて!」
イタ王が防寒着に着替えて庭へ飛び込んでいく。
「イタ王殿、滑りますから気をつけてくださいね」
日帝もまた、防寒用のドカジャンを羽織り、長靴を履いて庭へと進み出た。
ここからは、かつての大国たちによる、大人気ない「雪上の戦い」の始まりだった。
ソ連は持ち前の膂力(りょりょく)を活かし、規格外の大きさの雪塊を大砲のように投げつけてくる。対するナチは、庭の木々を遮蔽物として利用し、正確無比なコントロールでソ連の顔面だけをピンポイントで狙撃していく。
「痛っ!? なんだ貴様のその無駄に精密な軌道は!」
矢 濁 .
18
143
チョコ
315
「計算通りだ。貴様の頭部はその巨体ゆえに最大のデッドスペースだからな」
「お兄ちゃんたちすごい! 食らえー!」
イタ王が背後からソ連に向けて雪玉を投げたが、力及ばずソ連の手前でボトリと落ちた。
「イタ王、後ろを取るならもっと腰を落とせ!」
ソ連が振り返り、イタ王に優しい(しかし速度の速い)雪玉をお見舞いする。
「うわちゃっ! 降参降参!」
雪まみれになって笑うイタ王。その時、戦況を静かに見つめていた日帝が、そっと動き出した。
日帝は一切の物音を立てず、雪を踏む音すら消してナチの死角へと回り込んでいた。かつて隠密行動に長けていたその身のこなしは、平和な日常でも健在だった。
ナチがソ連への次の一弾を構えたその瞬間。
ポフッ。
ナチの、綺麗に整えられた軍帽の真上に、小さな雪玉が優しく、しかし確実に命中した。
「……何?」
ナチが驚愕して振り返ると、そこにはいつの間にか至近距離に立ち、お盆を構えるような姿勢で微笑む日帝の姿があった。
「ナチ殿、背後が疎かになっておりますよ」
「日帝……貴様、いつの間に私の索敵範囲を掻い潜った……!」
「ガハハハ! 見事だ日帝! 流言飛語を操る忍者のようだな!」
ソ連が腹を抱えて笑う。ナチは悔しそうに顔を赤くしながらも、「……ふん、油断したな。だが次はそうはいかん」と、日帝に向けて雪玉を構え直した。
それから数十分、4人は年齢も立場も忘れ、ただの子供のように雪まみれになって駆け回った。
やがて全員が息を切らし、冷たい空気の中で白い息を吐き出しながら、誰からともなく縁側にへたり込んだ。
「冷えたな……」
ソ連が自分の大きな手を擦り合わせる。
「当然だ。あれだけ非効率的に動き回れば体温も奪われる」
ナチは文句を言いながらも、どこか満足げに冷えたおでこを押さえていた。
「皆さん、お疲れ様でした。冷えた身体にはこれが一番ですよ」
日帝が一度台所へ戻り、大きなお鍋を持って戻ってきた。中に入っているのは、湯気をこれでもかと立ち上げる、熱々の「おしるこ」だ。大きな手作りの餅が、甘い小豆の海にぷかぷかと浮かんでいる。
「わあぁ! おしるこだ! いただきまーす!」
イタ王が真っ先にお椀を受け取り、ハフハフと口に運ぶ。
「……甘いな。だが、運動後の血糖値の上昇にはちょうどいい」
ナチもまた、お椀を両手で包み込み、その温もりに小さく目を細めた。
「うむ、美味い。日帝、これに例の透明な液体を……」
「ソ連殿、おしるこにウォッカを入れるのは絶対に禁止です」
「……ちぇっ」
白い雪に囲まれた庭を眺めながら、4人は並んで温かいおしるこを啜る。
外の空気はどこまでも冷たかったが、縁側に並ぶ4人の間には、何よりも温かく、解けることのない穏やかな時間が流れていた。
コメント
3件
おしるこ食べたくなってきちゃった笑たしかにソ連さん投げるのすごい早そうだけど体でかいから当たりやすいのか……にてさん忍者?!すごい! やっぱほのぼのはいいねぇ……今回も神でしたぁ!かなちゃの作品はやっぱ面白いや!
いやあ、もう、めちゃくちゃ良かったです……! 雪合戦でこれだけキャラが立つって、設定の設計力が素晴らしいですね。ソ連の豪快な雪玉、ナチの精密狙撃、イタ王の無邪気な突撃――そして何より、日帝が一切の物音を立てずに死角へ回り込む“隠密”シーンには痺れました。ほのぼの日常で、こういう“過去の片鱗”がふと顔を出すのが、たまらないんですよね。最後の熱々おしるこで締める構成も、読後感が温かくて最高でした。