コメント
0件
こんなにも空っぽなのに、 見ているだけで満たされてしまうなんて。
それは、とても悲しいことだよ。
だって、そこには何も残されていないし、 誰にも必要とはされないのだから。
ここは……どこなんだろう?……誰も来ないわよね? さあ、どうぞお入りくださいませ。
ここならば、きっと見つかりませんよ。
大丈夫です、ご心配なく。
ここにはあなた様を脅かすものはありません。
安心して、ゆっくりとおくつろぎ下さい。
ここにいる限り、あなた様に危害を加える者はおりません。
ですからどうか安心して、お眠りくださいませ。
ここは楽園。あなたの為の世界なのです。……あの子は、どうして泣いていたんでしょうか? こんなにも美しい世界にいるのに。
ずっとここにいれば幸せになれるのに。
ここには怖いことなんてひとつもないんですよ。……あの子も、早くわかってくれたらいいんですけどね。
だって、ここはこんなにも平和なんだってことを。
あなたもきっと気に入ると思いますよ。
ほら……ここにいるだけで気持ちが落ち着くでしょう? それにしても、あなたのお話は本当に興味深いですね。
ずっと聞いていても飽きませんし、もっと聞かせてください。
えっ……それは困ります! まだ聞きたいことはたくさんあるのですから。
もちろん、あなたが良ければですが……。
あら、ごめんなさい。
つい話し込んでしまいましたね。
お茶のお代わりを用意しましょう。
はい、どうぞ。
ところで……
最近、この街では変わったことが起きているらしいですよ。
何でも、若い人が突然姿を消したとか……。噂によると、どこぞの国のお姫様らしいわよ。
あの人ったら、あんなに偉そうなことを言っておいて、結局は女だったってことね。
えっ、違う? じゃあ、一体どこに行ってしまったっていうの? まさかとは思うけど……
ひょっとしたら、誘拐されちゃったりして!? ほら、よく言うじゃない。
「金塊より美しいもの」なんてさ!……うーん、確かにそういうこともあるかもねぇ。
それにしても、ずいぶんと大袈裟な話よね。
どうせなら、もっとロマンチックな話の方がよかったよ。
この手の話だとしたらさ。
ほら、例えばこう言うとか。
『僕は君をずっと探し続けていた』ってね。
うん、これなら文句なしだよ! だって、僕がここにいる理由になるじゃないか。
もっとも、今はちょっと違うけど。
それでも、君を見つけることができたし。
それにしても、ここは本当に真っ暗なんだねぇ。
君はこんなところで何をしてたんだい? へぇー。
なるほど。
それで、君はここで終わるつもりなのか。
まぁ、いいんじゃないかな? ここだったら安全だし。
誰も邪魔をすることはないと思うよ。
少なくとも、僕ら以外はね。