「食事はどうしますか?」
私の脳は完全に唐揚げ弁当か竜田揚げになっている、ここでどんなに美味しいフレンチを食べようと唐揚げに勝てるものは無い気がする。
「結構です」
「では、ティーラウンジでいいですよね」
って、その言い方はお伺いではないですよね?何だかこの女性の不遜な態度にイライラさせられる。
返事をするのも面倒で無言で森川彩香の後ろをついていった。
可愛らしい容姿とは反比例するようなトゲを隠くそうともしない物言いが学生時代に敦を奪った美幸に感じが似ている。
男性、とくに気に入っている人の前では甘ったるく話すんだろうか。
席に着くとすぐにスタッフがやってきた。
「わたしはミルクティーで、豊田さんは?」
「シトロンティーを」
オーダーをするとスタッフが恭しくお辞儀をして戻っていった。
森川彩香は注文をしたあとは何も話さずキラキラとストーンが輝くネイルが施された指先を見つめながら触っている。
ふと自分の爪を見る。
タイピングに支障がない程度に切り揃え薄いピンクのネイルをしている。
私に会いに来るためにキラキラネイルをしているとも思わなから、普段からあんな感じなのかも、だとすると指をソレほど使わない仕事なのか、単に仕事をしていないのか・・って
いつまでこんなことをしているんだろう。
何も話をしないならスマホのチェックをしたい、などと考えていたら注文したお茶が運ばれてきた。
森川彩香はミルクティーを一口飲むと左手に持ったソーサーにカップを置く。
その姿がサマになっていること、クラウンの後部座席から出てきたこと、わざわざホテルのラウンジで話をしたいと言ってきたことを鑑みるとどこかのお嬢様なんだろう。
「わたしの事、賢一さんに聞いてます?」