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透明な放課後

7 - 第7話 『シャークんは選べと言った。』

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2025年08月14日

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透明な放課後。




教室は静かだった。


俺は黒板の前に立ち、ノートを開いていた。

そのにはシャークんが残してくれた「記録」

がある。



けれど、数ページが真っ白になっていた。


(……もう、始まってる)


シャークんのことも思い出せなくなってきた。


顔は覚えてる。声も少しだけ。でも、


昨日話した内容や、表情、ノートを見せてくれた瞬間──

それらが、 ぼんやりと靄に包まれている。

「シャークんに会わなきゃ。今なら、まだ間に合う。」


俺は教室を飛び出した。


向かう先は旧校舎の裏。

記録が残されていたあのベンチ。


階段を下りながら、俺は何度も自分の名前を唱えた。

自分が誰なのか忘れないために。





ベンチの前。

そこにシャークんはいた。


静かに座り、空を見上げている。

どこか、眠そうな目。だけど、その目はまだ、

俺を認識していた。



「……きたね、nakamu」


「まだ覚えてる……?」


「ギリギリ。でも、もう長くはもたない。君の中の俺も、もうすぐで消える。」


俺は息を飲む。


「どうして?シャークんは、”記録してる”って言ったじゃん。

なら、残っているはずじゃ──」


「うん。でも、記録も”なかったこと”にされていく。この世界は、”事実よりも整合性”を優先してる。お前が”シャークんのいない世界”に慣れていけば、そのうち俺は、自然と”いなかったこと”になるんだよ。」


俺の胸が苦しくなる。


「じゃあ、どうすればいいの?誰を信じればいい?きりやんも、”選ぶこと自体が罠”だって言ってた。なのに、シャークんは”選べ”って言った。もう、何も分からない。」


シャークんは、そっと俺の手をとった。


「nakamu。

お前は、今まで”誰も選んで来なかった”。

自分を守るために、疑って、距離をとって、

心を閉じてきた。」


「……。」


「俺は、ずっと見てた。お前がそうやって、

自分以外を”消さないように”、関わらないように生きてたこと。でも、もう限界なんだ。

お前が”誰かを選ぶ”って言うことは、同時に

”他の誰かを消す”ってことになる。

だけどそれでも──

選ばないと、誰も残らない


俺は泣きそうになりながら、

シャークんを見つめる


「じゃあ…俺が…シャークんを選んだら、誰かが消えるの?」


「…うん。だけど”選ばなかった場合”の未来の方が、もっと悲惨なんだよ。」


シャークんは、手を話して立ち上がった。


「もう、時間がない。お前に最後のヒントをあげる。」


俺は唾を飲む。



シャークんの声が、

風の音に重なるように響いた。






「”事故”のことをおもいだして。

全部は、あの時から始まってる。

6人で──屋上にいた日

あの日、お前は、誰かの”声”を無視した。それが、全てだったんだ。」


「事故……?」


記憶の奥が、チカチカと光る。



夕暮れの屋上。

6人の影。

何かを叫ぶ声。

誰かの笑い声。

──そして、落ちていく誰の姿。



(俺は、何を……)




その瞬間、風が止んだ。


シャークんが、静かに微笑む。




「ありがとう。nakamu。

俺を忘れないでくれて」




「やだ……まって!行かないで…!」


「大丈夫、忘れられても、お前の中には”選択”が残る──それが、希望だから。」


シャークんの姿が、

まるで霧のように薄れていく。



俺はその姿を、手をのばしても、

もう触れられなかった。









その夜

俺は夢を見た。


屋上。6人の影。

そして、その中に──きりやんの姿はなかった

つづく

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