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透明な放課後。
俺は、目を覚ました瞬間、両手が震えていた。
夢で見たのは──屋上の事故。
6人いたはずの光景。
でも、そこにきりやんの姿だけがなかった。
(おかしい…。きりやんは「全部知ってる」って言った。じゃあ、あの日きりやんは……)
俺は制服に着替えながら、必死で思い出そうとする。
(あの時、誰がどこにいた?俺は…誰を見て、誰の声を無視した?)
けれど、思い出せない。
屋上の柵。誰かの叫び声。
誰かが、踏み出して──
誰かが、落ちた。
(あれは…俺のせい?)
学校。昼休み。
俺は、屋上へ向かう。
今日は、誰もいない。
扉を開けると、夕日と似た色をした昼の光が、
空と校舎の間に漂っていた。
足音を忍ばせて、さくの近くへ行く。
風が吹いた。まるで、あの日と同じように。
すると──
「よく来たね。」
背後から声がした。
「…どうして、お前がここに?」
「ここで、全部終わるから。」
きりやんは、屋上の中心に立ち、
ゆっくりと俺の方へ顔を向ける。
「覚えてきたね。少しづつ。」
「事故…俺は、何を…」
きりやんが歩み寄ってくる。
「君は、”選ばなかった”んだよ。
あの時──誰の手をとるか、決められなかった。」
俺の頭に、記憶が一瞬でフラッシュバックした
あの日。
シャークんは泣きながら叫んでいた。
きんときが、手を伸ばしていた。
broooockが笑っていた。
スマイルは動けずに立ち尽くしていた。
そして、きりやんはいなかった。
(ちがう。…きりやんは、いた。)
その瞬間、
何かが”はじける”ように思い出された
「きりやん……あなたは、”落ちた”んだ。」
俺が呟くと、きりやんは、ゆっくりと微笑んだ
「そう。俺が、あの日、落ちた。
君が、俺の声を聞かなかったから。」
「……お前が言ってた”選択”って……」
「誰かの手を掴めば、俺じゃない誰かが落ちてた。でも、君は、…誰も選ばなかった。
全員を助けたかった。だから、
誰も救えなかった。」
俺は足元がぐらつくような感覚に襲われる
「じゃあ、俺が見てる”きりやん”は?…」
きりやんはもう一歩、俺に近ずいた。
俺は、君の中に残った“後悔のかたち”」
「……幻?」
「ちがう。“記憶が作ったきりやん”。
君が、罪と向き合うために作った、最後のピース」
風が強くなった。
屋上の空が、歪んでいく。
色が、ざらざらと剥がれていくように崩れ始める。
「nakamu。
君は、これから“本当の選択”をしなきゃいけない」
「……選ぶ?」
きりやんは、真っ直ぐにnakamuの目を見た。
「誰を、残すか。
“この世界”に、君以外にあと一人だけ、記憶として残せる。
他の全員は、完全に消える。
――君が、“その存在を望むかどうか”で、決まるの」
俺は震える声で問う。
「そんなの……選べない」
「でも、それでも選ばないと、“君自身も消える”」
きりやんの姿が、風に溶けていく。
「思い出して、nakamu。
あの日、あなたが無視した“声”の意味を。
そして今度は――誰か一人を、守って。」
⸻
目の前に、6人の姿が現れる。
きんとき、broooock、シャークん、スマイル、きりやん、そして――俺。
それぞれが、笑っている。泣いている。怒っている。
色とりどりの記憶。感情。後悔。
その中から、俺は――”たったひとり”を選ばなければいけなかった。
つづく
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