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教室にもどってきて、最後のホームルームが始まった。
日曜日ということもあって、生徒の保護者も多く教室に入ってきた。
篠井先生: 「最後の学級会をします。
卒業、おめでとう。
みんなは・・・」
一年ちょっと隣の席に座っていた天宮さんはもう遠くの席に座り、前を見ていた。
いつも通りの幸恵さんだった。
その遠くにいる天宮さんを見て、また2年3組の初日の風景がフラッシュバックした。
K(僕): 「(あのかわいい子はなんていう名前なんだろう?)」
さっちゃん: 「天宮です。」
K(僕): 「(天宮さんっていうんだ。)」
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K(僕): 「班長に立候補します。」
K(僕): 「えーと…
出席番号が最初の天宮さんかな?」
K(僕): 「副班は誰かしてくれる?」
さっちゃん: 「うーん・・・
じゃあ…」
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K(僕): 「自転車引くよ。」
さっちゃん: 「・・・うん。」
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さっちゃん: 「あ、教科書忘れちゃった。」
K(僕): 「一緒に見る?」
さっちゃん: 「え?
ありがとう。」
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小石さん: 「さっちゃんのこと、好きでしょ?」
K(僕): 「な、なんのこと?」
小石さん: 「好きじゃないなら三学期、さっちゃんはうちの班にもらうから。」
小石さん: 「協力してあげるから、教えてよ。
絶対に他の人には内緒にするから。」
K(僕): 「・・・うん。天宮さんのこと・・・好き・・・かな・・・。」
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小石さん: 「そのちりとりをさっちゃんにあげるから、ちょうだい。」
K(僕): 「なんで?
あんまり上手くできなかったから恥ずかしいし、それをあげるなんて・・・。」
さっちゃん: 「ありがとう。」
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さっちゃん: 「家庭科で作ったプリンだけど…。」
さっちゃん: 「食べてくれる?」
K(僕): 「僕に?
ありがとう。」
さっちゃん: 「帰ったら食べてね。
でもあまり期待しないでね。」
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K(僕): 「昨日はありがとう。」
K(僕): 「手紙文:
大変美味しくいただきました。
こんなにおいしいプリンは初めてでした。
怪人21面相」
さっちゃん: 「手紙文:
お褒めの言葉、ありがとう。
怪人21面相って、優しいところもあるんですね」
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小石さん: 「好きならはっきりさっちゃんに告白したら?」
K(僕): 「…」
さっちゃん: 「…」
小石さん: 「もう時間がないから、二人ともつきあうでいいよね。」
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さっちゃん: 「ねえねえ…
今度、西高の定期演奏会があってチケットがあるんだけど。
一緒にどうかなって思って・・・」
さっちゃん: 「皆別々に行くから、私たちだけだよ。」
K(僕): 「仕方ないことなんだけど、みんながじろじろ見るんだけど…」
さっちゃん: 「照れちゃうね。」
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さっちゃん: 「それと遅くなったけど、クリスマスプレゼント。」
さっちゃん: 「手紙文:
お母さんに手伝ってもらいながら、セーターを編みました。
ちょっと大きいかな?」
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さっちゃん: 「今いい?
数学の問題教えてほしいの。」
K(僕): 「えーとね…」
K(僕): 「こういう曲のイ短調とか、長調とかどうやったら分かるの?」
さっちゃん: 「楽譜のフラットやシャープに注目して…」
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K(僕): 「第2ボタンもらって。」
さっちゃん: 「もらっていいの?」
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K(僕): 「ねえ、一緒に歩こうか…」
さっちゃん: 「うん。」
K(僕): 「今一番欲しいものは何?」
さっちゃん: 「サックスかな?」
山口先生: 「みんなと一緒に行動しないとだめだぞ。」
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小石さん: 「放課後、さっちゃんが話があるって。」
小石さん: 「別れようって言われても、認めちゃだめだから。」
さっちゃん: 「もう別れよう。」
K(僕): 「絶対に無理?」
さっちゃん: 「・・・・
うん…」
ゆっくりと、だけどたくさんの想い出がどんどん湧いてきた
K(僕): 「(大好きだった、そして今も好きな天宮さんとは本当にもう会えないかもしれない。
あの照れながらの笑顔をみることはないんだ。)」
そう思うと自然に目が涙でしみてきた。
K(僕): 「まずい、泣くかも。」
篠井先生: 「3年3組のみんな、それぞれの場所で頑張ってね。」
きっとまたどこがで会えるからって言いきかせても、涙は溢れてきた。
小学校の卒業式はもちろん、高校も大学も卒業式で泣いたことはなかった。
後先見ても中学校の卒業式しか泣いてない。
これでもかっというくらい両目から涙があふれ、涙を流すではなく、人前もはばからず号泣だった。
天宮さんも、クラスメートも自分の親も、きっと天宮さんの親御さんもいたんだろうけど、そんなことを気にする余裕もなく、泣きじゃくった。
9か月まえに別れていても、距離的にも天宮さんと離れたくない・・・、その証拠の涙だった。