冷房の人工的な冷たい風が、俺の頬をなでる。
さっきまで自分の席の騒がしさで聞こえなかった店の中の喧騒が、今になってやけに大きく聞こえてくる。
俺たちはMECHATU-Aの8人で、忘年会にとある居酒屋に来ていた。
広い座敷に通され、みんなでたくさん会話を交わしながら酒を飲んだ。今は会が始まって2、3時間経った頃だろうか。
8人いるうちの半分が、完全に意識を手放して眠りこけている。
普段通りの意識を保っているのは多分、長机をはさんで俺の左前に座っている小柳ロウだけだ。ウェンほどではないが彼も酒をまぁまぁな量飲んでいて、それなのに顔色一つ変えず涼しい顔をしているのだからすごい。それにこいつは普通だったら飯に誘っても来ないので、この姿を見られることはまたしばらく無いだろう。
やみつききゅうりを食べるロウの後ろには、座敷の畳に顔をべったりとくっつけて長髪を乱れさせながら死んだように寝ている、顔の赤くなった星導の姿がある。
そのまま視線を右に動かすと、テツがウイスキーグラスを口に運んでいるのが目に入る。
彼は酒に強くないが酒自体は好きで、今も酩酊状態のままちびちび飲み続けている。たぶんあれは後で吐くだろう。
そしてその近くには、体を大の字にして豪快な寝息を立てているリト。相棒のキリンちゃんも、机の上で彼が飲んでいたグラスに背をあずけて寝ている。
俺の左隣には、机の上に突っ伏し自分の両腕を枕のようにしながら寝ているウェンの姿。
酒にとんでもなく強い彼だが、今日は油断して飲み過ぎてしまったようだ。口が悪くなったと思えば意味不明なことを言い出し、急に電池が切れたかのように眠ってしまった。
顔が左に向けられているためここからその表情は見えない。その代わり、 隣に同じ体勢で座って顔だけ右に向け、ウェンの寝顔をまじまじと見つめているカゲツの顔が目に入る。
ウェンの寝顔を見てか酒に酔ってか分からないが、カゲツの頬もだいぶ赤くなっている。
みんなの様子を観察している俺の膝の上ですやすや寝息を立てているのは、一緒にざぶぅんというコンビを組んでいる伊波ライ。
額に汗をかいているのでおしぼりで拭いてやると、触れられたことに気づいたのか、目を覚まして大きなあくびをした。
「起こしちゃった?」
『大丈夫。ごめん寝ちゃってた…。そろそろお開きにする?』
と寝ぼけ眼でそう聞かれ、ロウも暇そうだしイッテツにこれ以上酒を飲ませる訳にはいかないので、そうすることにした。他の3人を起こし、1人がもう1人を介抱するような形で移動する。ライは自分で起きてくれたので俺は苦労せずに済んで助かった。勘定を済ませ外に出ると、店の中の冷房とはまた違う新鮮な冷たい空気が体を冷ます。火照っていた体が一気に冷めていく感じがして、心地よかった。
同じ方向に並んで帰っていく星導とロウ。星導は冷気で多少目を覚ましたのか、自分で歩けると言いおぼつかない足取りで歩いていった。
テツとリトは、家は近いが2人とも酔っていて心配なのでタクシーで帰り、ウェンとカゲツは駅に向かって歩いていった。こちらも両者酔っているので、帰りのバスで寝過ごさないか心配だ。あとでLINEを送ってみよう、と俺が考えていると、ライから俺たちも帰ろうと言われて店を離れた。
次回、飲み会が終わってそれぞれの家で…?
コメント
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皆さんたくさんのいいねありがとうございます。 今頑張って2話以降を書いているのでしばらくお待ちください🙇♀️