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#異世界転生
朝。
やわらかな風が、頬をかすめる。
ひらり、と花びらが舞う。
「……」
こはるは、足を止めて空を見上げた。
淡い桜色。
(……春)
気持ちの良い風を感じながら、少しだけ、目を細める。
でも——
落ち着かない。
(今日から新しいクラス……)
(みんなと……)
(雪斗くんと同じクラスになれるといいな……)
⸻
校内。
「えー俺またおまえと同じクラスじゃん!」
「どこだどこだ〜」
「また今年もよろしくねー」
「別々になっちゃったね〜…ショック〜」
クラス掲示の前には人だかりができている。
こはるは少しだけ背伸びをする。
(……どこだろう)
視線を動かし、自分の名前を探す。
「……あ」
見つけた。
そこへ雪斗が来た。
「あ、こはるおはよう。」
「おはようございます」
「何組?」
「えっと……4組です」
指を差す。
「……あ、ほんとだ」
「俺は……お、同じクラスじゃん」
「え、ほんと?」
「やった!」
嬉しさのあまり思わず抱きつきそうになり……
そのまま手を握った。
「……あ、でもみんなは……」
「ん〜……うわ………残念……」
「えっ………」
雪斗の眉間に皺がよる。
その反応を見て、こはるの表情が曇る。
——その瞬間
雪斗は、ふっと笑った。
「みんな同じクラスだね(笑)」
キョトンとするこはる。
「もう!!びっくりさせないでください!!」
足ダンをするこはる
「ごめんごめん……でもそろそろ………」
「??」
「流石にちょっと……手を離してくれると………」
そう言いながら握られた手に視線を移す雪斗
「あ、ごめんなさい!!」
雪斗のからかいも、恥ずかしさを紛らわせるためだったのだろう。
そんな時、後ろから渚達の声が。
「な〜に朝からイチャついてんのよ!」
「え?雪斗そういう感じなの?ねぇ!そういう感じなの?俺を置いて?!」
「春だねぇ」
「ちちちちがいます!」
顔が少し熱い。
ぱたぱたと手で顔を仰ぐこはる。
隣の雪斗をチラッと見る。
表情はわからなかったが、
少しばかり耳が赤い気がした。
「ほら〜、先生来るよ〜!そんなところにいつまでもいないで、教室入ろう!」
渚が手をひらひらさせる。
「あ、はい!」
ざわざわと、人の流れに乗って教室に入る。
⸻
教室に入って、しばらくすると。
「はーい、席つけ〜」
ガラガラと去年と同じ担任の先生が入ってきた。
「よかったね、みんな同じクラスで」
紅葉は小さく笑いながら、自分の席へ戻って行った。
前に陽向、少し後ろに紅葉。
斜め前には渚。
そして、右の前の席には雪斗。
(みんな同じクラス…)
全員に一度視線を送った後
(……よかった)
上機嫌に笑うこはるであった。
⸻
新年度が始まって数日後。
授業も始まり、
その日も、体育のためにグラウンドへ出た。
「今日の体育は体力テストって言ってましたね。」
「よっしゃ!去年の記録更新してやる!」
「渚勝負しようぜ!ハンデやるから!」
「望むところ!」
燃えている陽向と渚を見て冷めた視線を送る紅葉と雪斗。
「うわぁ〜なんで燃えてるのあの人ら……私は早く終わらせたいよ……」
「まぁ、みっともない姿見せない程度には頑張らないとな」
「へぇ……」
「ん?」
「雪斗もそういうの気にするんだね」
そう言いながら紅葉はニヤッと笑った
「べ、別にそういうのじゃなくて……!流石に悪目立ちはしたくないだろ……」
「ま、そういうことにしといてあげるよ」
「??……とりあえず、頑張りましょう!」
こはるは握り拳をふたつ作り、みんなの前に突き出した。
⸻
上体起こし
「いち、にー……」
ぷるぷるぷるぷる
「……」
「……あれ?」
「こはる大丈夫?」
体が起きてこないこはる。
足を押さえていた渚が声をかける。
「……すみません、ちょっと……もう無理です……」
「え、うそ!」
小さな笑いが起きる。
⸻
シャトルラン
♪♪♪♪♪♪♪♪〜 14
♪♪♪♪♪♪♪♪〜 15
「はぁ……はぁ……」
「もう……限界です……」
その場で倒れ込むこはる
「はぁはぁ……こはるさすがに早すぎ!」
隣で走っていた紅葉。
余裕が無いのか、いつもより少し大きい声でこはるに言いながら、反対側へ走って行った。
「今まで軽いバレーとかダンスしかしてなかったから分からなかったけど……」
「こはる……あんた体力なさすぎでしょ(笑)」
カウントをしていた渚が笑っていた。
「はぁ…はぁ…」
少しだけ息を整えながら、こはるも困ったように笑う。
「みたいですね……(笑)」
⸻
長座体前屈
ぐい〜っ……ぺたっ。
胸が隙間なく太ももにくっついた。
「え、めっちゃ柔らか!」
「すご」
「……ふふん」
紅葉はもちろん、渚の記録をも更新したこはるは、
初めて2人に余裕の表情を見せた。
⸻
立ち幅跳び
「……」
軽く膝を曲げる。
「よいしょっと」
ぴょん、と跳ぶ。
記録……260cm
男子でも、簡単には届かない距離。
それを、こはるは軽々と飛んだ。
女子の歴代記録を、大きく塗り替える。
「……え?」
「……は?」
渚と紅葉はもちろん、周りにいた生徒もざわついた。
「え、今飛んだの誰?」
「4組の……去年転校してきた月城さんじゃない?」
「シャトルラン速攻で終わってた人?」
何やらみんなの視線を感じ、少し困惑するこはる
「え……どうかしました?」
「こはる……めっちゃ飛ぶじゃん……」
「…? 渚さんは、もっと飛べるのでは?」
「いや飛べねぇよ!!」
⸻
50m走
数人の生徒が横一列に並ぶ。
そこには渚と紅葉、そしてこはるの3人もいた。
「まさか……こんなところにライバルがいたとは……」
「負けませんよ!!」
「ちょっと……私が逆に目立つからふたりともやめて」
小声でそんなやりとりをしていると
「位置について、よーい——」
「……」
パーン!!
ピストルの音と同時に、
こはるは一気に飛び出した。
「ちょっ………!?」
女子の中でもかなり足が速い方の渚。
男子生徒も含め、皆その渚に注目をして見に来ていたのだが……
その渚の遥先を走るこはる。
「はやっ…」
「まじか、水瀬負けてるじゃん」
「さっきめっちゃ飛んでた子だよね」
皆がざわめく。
先にゴールして膝をつくこはる。
こはるに追いつき、悔しがってこはるに何かを言っている渚。
最後にゴールして崩れ落ちる紅葉。
その3人を見て、
雪斗は、ふっと小さく笑った。
⸻
廊下
体力テストも終わり、廊下を歩くこはると渚と紅葉。
「楽しかったですね〜!」
「ムキー!!でも、総合得点では負けてないから!」
「渚さんすごいです。私なんて走った後、足がプルプルしちゃってダメでしたし(笑)」
「あ〜はいはい、2人ともすごいすごい」
談笑しながら教室に入ると
ガラガラ……
視線が集まる。
「???」
「月城さんさっきめっちゃ跳んでたよね!」
「足もめっちゃ速いし普通に運動できるじゃん!」
「前の学校でなんかやってたの?」
「いや、ぜひ我が陸上部へ!!」
一斉に人が押し寄せる。
渚と紅葉はその人だかりから弾き出された。
「あいたたた……何よ急に……」
「は……弾き出された……」
そんな2人に雪斗と陽向が近づいてくる
「まぁ、あれだけ目立てばね」
「いい感じに渚が引き立て役になってたしな(笑)」
「なっ……うるさい!」
「でもこはる大丈夫かな。囲まれてるけど。」
質問攻めに合い、固まっているこはる
「またあいつらは……ちょっと助けに行ってくる」
「いや、大丈夫でしょ」
こはるの元へ行こうとした渚を雪斗が止めた。
「え?」
渚達がこはるの方を見ると。
「えっと……」
一瞬迷って、
「……特に、何もやってないです。走ったり飛んだりするのが好きなだけで」
小さく笑う。
「え、才能じゃん」
「可愛いし運動できるとか強くない?」
「そんなことないですよ!体力は全然ないですし!」
少しだけ表情は硬いが、それでもみんなの質問に対し、笑いながら受け答えをしていた。
「……ほんとだ。余計な心配だったかもね。」
渚が笑って答えた。
「人見知り克服した感じ?」
「まぁ、前のクラスメイトもちらほらいるしね。全員知らない顔じゃないのもあるでしょ。」
陽向と雪斗も笑いながらこはるを見ていた。
「でも、なんかこはるが取られちゃったみたいで少し寂しいかもね(笑)」
紅葉が冗談混じりに言うと。
「確かに……!やっぱりちょっと行ってくる!!」
渚は鼻息を荒くして、人混みに突撃しに行った。
「出た(笑)あいつ結構独占欲強いからなぁ……」
陽向は呆れながら、人混みに割って入る渚を眺めていた。
「こらー!こはるが困ってるでしょ!」
「えーいいじゃん別に〜」
「ダメー!」
ぎゅっとこはるに抱きつく渚。
「ほら、行こ!」
「え、あ、はい!」
「水瀬さんずるいー!」
「月城さん!ぜひ我が陸上部に!!」
⸻
帰り道。
「それでは、私はここで!みなさんさようなら!」
夕方の空。
淡い光の中、1人歩くこはる
「……」
少しだけ、空を見上げる。
「……もう、4月……か。」
「なんだか……あっという間ですね。」