広間へ続く渡り廊下を歩いていると、見慣れた姿があった。
尾形「こんな日に1人で出歩くとは意外だな」
アニ「ちょっと野暮用があってね。そういうあんたこそ、パーティには出ないんじゃなかったの」
尾形「会場には行ってねえ。」
アニ「そう。ところで、物の修繕が得意なあんたのお仲間は今どこにいるか知ってる?」
尾形「宇佐美のことか?何の用だ」
アニ「少しばかり壊れた友人の心を修繕して欲しくてね、」
尾形「親切心を利かせてるところ悪いが、あいつは人間の心なんて持ち合わせてねえぞ」
宇佐美「誰が人間の心なんて持ち合わせてないって?」
噂をすれば、当の本人の登場だ。
アニ「いい所に来たみたいだね。早速だけど、直して欲しい物があるんだ」
宇佐美「僕はパーティで忙しいんだけど?先生に頼めばいいんじゃない?」
アニ「できるだけ内密に済ませたい。あんたの口の硬さを買ったんだ」
宇佐美「ふぅん、ま、なんだっていいけどさ。んで、何を直して欲しいって?」
アニ「これなんだけど…」
ポケットから包みを取りだし、手の上で開いてみせる。
尾形「んだコレ」
宇佐美「ただのガラス片じゃないか」
アニ「髪飾りみたいだけど、割れすぎて原型が全くないんだ」
宇佐美「直せるとは思うけど、僕今、杖持ってないんだよね~」
アニ「今すぐとは言わないけど、忘れないうちに直して欲しい。渡しておくよ。」
宇佐美「はあ、感謝してよね、ほんとに。」
アニ「ああ、感謝してるよ。」
宇佐美「ほんっと無愛想。もっとほかの言い方ないわけ?」
アニ「いいのが思いついたらね」
宇佐美「腹立つ」
ガラス片を宇佐美に託し、私はパーティ会場へ足を運んだ。
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友達に声をかけられ、少しの間席を外していた。俺が彼女の元を離れてから10数分。もう時期戻ろうとして気がついた。
彼女の姿が見当たらない。
ただでさえ混みあっている大広間だ。いつもならどんな人混みの中でも彼女をみつけだせる。しかし、探せど探せど彼女はどこにも見つからなかった。バルコニーや廊下も探した。友達にも見かけていないか尋ねて回った。
リパ「イポプテ!」
不意にアシリパが俺の名を呼んだ。
杉元「そんなに焦ってどうかした?」
隣にいた杉元に尋ねられる。
「イヴァンナみてないか?どこにもいないんだ」
杉元「え、イヴァンナさん?」
リパ「イヴァンナなら、さっき階段で見かけたぞ?誰かと話してるみたいだった」
有古「そ、そうか。ありがとう」
俺は急いで広間を飛び出して、階段へ向かおうとした。
アニ「ねぇ、ちょっといい?」
有古「っ、レオンハート…」
アニ「あんたのパートナーが、さっき泣きながら部屋に戻ってきた」
有古「イヴァンナが!?な、何があった?」
アニ「なんだ、あんたも知らないんだね。パートナーなら何があったかわかると思ったんだけど」
有古「…泣いてたって、どういうことなんだ?」
アニ「さあね。本人が口を割らない限り何も分からない。でも今は、何があったか話すような気分じゃないだろうね。」
有古「彼女は今寮にいるのか」
アニ「ああ。きっともうパーティーには戻らないよ。あんたももう帰んな。」
有古「…ああ、わかった。次イヴァンナに会ったら、俺が心配していたと伝えて欲しい。…しばらく顔は合わせて貰えないだろうから。」
アニ「ああ。伝えておくよ。」
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今何時なのだろう。あれから泣き疲れて、いつの間にか眠ってしまっていた。ドレスにシワが着くと思い、半ば慌てて着替えた。皆に申し訳ないことをしてしまった。有古くんにも、アニにも。
イ(今度二人に会ったらちゃんと謝らなきゃ…先生には…伝えないでおこう)
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