side you
元貴の壁紙が設定してある
スマホの時刻は
街の図書館が開館してすぐの
9:08を表示していた。
日曜日の朝ということもあり、
館内には誰もおらず、
図書館の奥、誰もいない書架の裏の机を陣取る。
静まり返ったその場所に足を踏み入れると、まるで外の世界と切り離されたような、特別な空間が広がっていた。
その日はMrs. GREEN APPLEのライブ当日だった。
街中もSNSも、みんながライブの
話題で持ちきり。
そんな中、私は、試験対策があってライブには
行けず、ひたすら参考書と向き合っていた。
「ライブ行きたかったなぁ……」
何度目かのため息をつく。手元のペンを走らせるけれど、どこか気持ちが落ち着かない。
ライブ会場の熱狂や楽しそうな声が脳裏に浮かぶたび、胸がギュッと苦しくなる。
でも、模試が間近に迫るこの状況で、そんな気持ちに蓋をするしかなかった。
「…………集中しなきゃ。」
そう自分に言い聞かせながら、机の上に視線を落とす。だけど、どうしても頭が働かない。
そんなときだった。
「こんなとこで何してんの?」
後ろから低い声が聞こえて、驚いて振り返る。
黒い帽子を深く被ってマスクをした男の人が立っていた。
その雰囲気、どこかで見たことがある気がして、思わず固まる。
……いや、まさか。そんなわけないよね。
「……」
心の中で首を振る。きっと似てるだけだ、と目を伏せて参考書に視線を戻す。
だけど、背中に感じる視線が気になって仕方ない。
もう一度だけ、と小さく深呼吸をして恐る恐る顔を上げた。
やっぱり――
帽子の下から覗く目元、雰囲気、立ち方……どうしても「あの人」に似ている。
でも、ありえない。
こんな普通の街の図書館で、しかもこんな奥の書架の裏で……
そんな偶然があるわけない
が。
どうしても気になって、
意を決してもう一度顔を上げ、声を掛けた。
「……ぉ、、、大森…………さん?」
小さく名前を口にすると、彼は少しだけ笑い、マスクをゆっくり外した。
「……バレた?(笑)」
いたずらっ子のように笑うその目と目が合う。
その瞬間、心臓が大きく跳ねた。
目の前にいるのは間違いなく
――大森元貴だった。
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コメント
7件
おおもりさあああああん!!って大泣きして抱きつきたいぃ…
🫧さんのこういうテイストの作品、新鮮すぎて驚いているので同時に続きが気になりすぎてどうにかなりそうな自分がいてもう駄目だぁ………