テラーノベル
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「いいこ、になる! やめた! わるいこ、、いや!!」
フランスは冷たい床に爪を立て、狂ったように頭を振り乱した。かつて彼らを縛り付けた教育係の幻影が、その暗闇の奥から自分を見下ろしているかのように。
「ヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダ!! ちゃんと、”綺麗な美しいフランス”になるから! やめて! ヤダヤダごめんなさい! ごめんなさい……っ!」
泣き叫ぶその声は、かつて数々の芸術を生み出し、華やかだと称えられた国のものとは思えないほど、幼く、脆く、完全に崩壊していた。
「ひゅう、……はぁ、……っ」
アメリカの胸に抱かれ、途切れ途切れに息を吸い込んでいたイギリスは――微かに、本当に微かに、自分の隣で狂ったように泣き叫ぶフランスの声を聞いていた。
近視の右目は何も捉えられない。
けれど、この耳を突き刺すような悲痛な泣き声だけは、どれほど意識が朦朧としていても、忘れることなどできなかった。
昔から、知っている。
自分が熱を出して、身体中を痣だらけにして、それでも完璧な、人形のような笑顔を張り付けて大人たちの前に立っていた時。
そのすぐ後ろで、自分の代わりにワンワンと、まるで自分のことのように大泣きしてくれていたのが、このフランスだったのだ。
『どうして笑うのさ! 痛いって言いなよ! 苦しいって言いなよブリカス……っ!』
あの地獄の日々、イギリスが心を殺して笑うたび、フランスは代わりに泣いて、イギリスの分の人間らしさを必死に守ろうとしてくれていた。
(……ああ、まただ)
イギリスの、普段は頑固な左手の指先が、微かにピクリと動いた。
(お前は、いつも……私の代わりに、泣いてくれる……)
自分が弱って自信をなくしている場合ではなかった。
フランスが「Ju(僕)」に戻って、机の下に隠れてしまいたくなるほどの恐怖に飲まれているなら、自分がその手を差し伸べなければならない。昔からずっと、そうしてきたように。
「……ふ、ら……ん、す……」
イギリスは、アメリカの腕の中から這い出るようにして、冷たい床の上へと手を伸ばした。
アレルギーの発作のように鈍くなった身体を無理やり動かし、ボロボロになって「悪い子になりたくない」と叫ぶフランスの、涙に濡れた頬へと、その左手をそっと伸ばす。
「……フラ、カス……。うるさ、い、ですよ……」
掠れた、今にも消えそうな声。
けれどそこには、先ほどまでの偽物の笑顔ではない、いつもの不器用で、ぶっきらぼうなイギリスの響きが、確かに混じっていた。
コメント
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ああもう、この回は心臓掴まれたわ……。フランスが「いいこになる」って泣き叫ぶシーン、過去の教育係のトラウマが生々しくて読んでて辛かった。でもそこでイギリスが、自分もボロボロなのにフランスの頬に手を伸ばすところ、最高にグッときた。「うるさいですよ」って言いながら、あの不器用な優しさがちゃんとフランスに届いてる感じがして泣ける。二人の過去が少しずつ見えてきて、関係性の深さに震えたわ。
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