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「ぶり、か、、すううううううわぁぁぁぁぁゔるざぁぁい!!!嫌い嫌い嫌い!!!大っ嫌いいいいいいブラカスうううううううう」
頬に触れたイギリスの冷たい手のひらの感触に、フランスはビクッと身体を震わせた。
そして、その掠れた、けれど確かに自分を呼ぶいつもの生意気な声を聞いた瞬間――フランスの張り詰めていた何かが、音を立てて派手に弾け飛んだ。
フランスは床に突っ伏したまま、子供のように大粒の涙と鼻水を流して、文字通りワンワンと泣き叫び始めた。
「うるさい」と言い返されて、「うるさい」と泣き返す。
感情がごちゃ混ぜになって、噛みまくった「ブラカス」という罵倒が、暗闇の廊下に響き渡る。
それは、かつて地獄の学習室で、完璧な笑顔を浮かべるイギリスの後ろで、彼の代わりに泣いていたあの頃と、全く同じ姿だった。
「おい、フランス……! いや、親父も、お前ら……!」
アメリカは、イギリスの左手がフランスの頬に触れているのを見て、それ以上言葉が出なくなった。握りしめていたイギリスの左手の温もりが、少しずつ戻ってくるのを感じながら、ただその光景をサングラスなしの蒼い瞳で見つめている。
「……フッ。お前たちは、本当に喧嘩が絶えないな」
ソ連は二人に被せていた冬のオーバーコートの隙間から、ウシャンカの影にある赤い瞳を少しだけ和らげた。
生まれつき何も映さない右側の視界。けれど、今この狭い空間を満たしているのは、悍ましい過去のトラウマの毒ではない。何百年もかけて二人が紡いできた、不器用で、泥臭くて、けれど決して切れることのない強固な絆の気配だった。
フランスは「大っ嫌い」と叫びながらも、床を這うようにしてイギリスの手を普段の右手でギュッと握り返した。
「嫌い、だけど……っ、死んだら、もっと嫌いだからね……! バカ、ブリカス、仕事中毒の、頑固者……っ!」
「……誰が、死ぬ、と言いましたか……。私は、まだ……やれます、と……」
イギリスはモノクルのない、近視のぼやけた視界の中で、涙でぐしゃぐしゃになったフランスのオッドアイを真っ直ぐに見つめ返した。その唇には、もうあの人形のような歪な笑顔はどこにもない。ただ、いつものように呆れたような、ひどく疲れ切った、けれど確かな温もりを宿した素の表情があった。
激しく泣き叫ぶフランスの声が、イギリスの過呼吸を、そして二人の心を、あの暗い過去の底から完全に引っ張り上げていく。
その時、廊下の向こうから「パチン!」と、遠くでブレーカーが上がる小気味いい音が響いた。
バツン、と一斉に息を吹き返す天井の照明。
眩しいほどの白い光が、床に蹲る4人を照らし出す。
「直ったでーー! 二人とも、大丈夫かぁ!?」
遠くから国連の心配そうな関西弁が走ってくるのが聞こえる。
光に包まれた廊下で、フランスはイギリスの手を握ったまま、まだ「ううう、ひっく……」と子供のように肩を揺らして泣いていた。そんなフランスの頭を、イギリスは「はぁ……」と盛大なため息をつきながら、普段の左手で、不器用に向こうへ押し返そうとする。
「……光が、眩しいです、フラカス。いい加減、離しなさい」
「やだ! 離したら、君またどっか走って逃げるもん……っ!」
「逃げませんよ、もう……体力が、限界です」
そう言って、イギリスはついに、心からの脱力を伴ってフランスの隣へと崩れ落ちた。アメリカとソ連が、そんな二人を呆れたように、けれど心の底から安心したように見下ろして、小さく息を吐き出した。
コメント
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第13話、読み終わったよ…!もう冒頭のフランスの「ぶり、かすぅ…!!」で一気に持ってかれたわ。あんなに張り詰めてたフランスが、イギリスの声と手のひらで全部崩れて、子供みたいにワンワン泣くシーン、めっちゃ刺さった。震えながら「嫌いだけど死んだらもっと嫌い」って握り返すところ、言葉の裏にある何百年分もの絆が見えた気がした。で、最後の「体力が限界」で二人揃って崩れ落ちるところも、凄く良かった。喧嘩しながらも絶対に切れない関係、堪らんわ…!お疲れさま、さかなさん!