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東方二次創作 「幻想冒険記」
⚠️注意⚠️
この話は東方ファンの人が作った二次創作です。オリキャラが出てきます。ご理解お願いします。
一章「異色の幻想入り」
俺「東方が好きだ。行けるなら幻想郷に行きたい。
俺は現実世界で生きる普通の人間だ。
ただ一つだけ普通じゃないところがある。
それは──意図的に“幽体離脱”ができること。」
俺「俺は今まで幽体離脱を使い、あの世、宇宙、異世界……様々な世界を旅してきた。」
そんなある日、こんな噂を聞いた。
「幽体離脱を使えば幻想郷に行ける」
俺「よし、早速行こう!」
そして今夜。
俺はいつものように幽体離脱をした。
霊体が体から抜け、空へと舞い上がる。
俺「うーん、風が気持ち良い」
向かった先は、いつも行く森。
そこには、いつも待ち合わせしている存在がいる。
俺「お待たせ!」
その者は──俺の守護霊である。
守護霊「……遅いわよ。
また空の上で寄り道してたでしょう?」
俺「いや、風が気持ちよくてつい……」
守護霊「幽体で“つい”って何よ。
あなた、幽霊になっても自由すぎるわ。」
俺「まあまあ、いいじゃないか」
守護霊はため息をつきながらも、どこか呆れたような、でも優しい目で俺を見る。
守護霊「で、行くんでしょ? 東方の世界、幻想郷」
俺「なんで分かったんだ!?」
守護霊「そりゃ分かるわよ。
もう何世代あなたの守護霊やってきたと思ってるの?
あなたの行動パターンなんて全部予測できるわよ。
それに『よし、早速行こう!』ってさっき大声で叫んでたし。」
俺はハンドサインで「グッド」をした。
俺「改めて言う。俺は幻想郷に行きたいんだ。
いつもみたいに今回も一緒に来てくれ」
守護霊は少し考えてから言った。
守護霊「本気なの?」
俺「本気です!」
守護霊はじっと俺を見つめる。
守護霊「……本気のようね。信じるわ」
俺「ありがとう!」
守護霊「……別に」
少し照れてるように見えた。
守護霊「で、まず幻想郷に行くには博麗大結界を対処する必要があるけど……何か策はあるの?」
俺「廃列車はないから廃校を買ってタイヤをつける」
その瞬間──守護霊は完全に固まった。
目が点。
口が半開き。
魂が抜けかけている。
そして、ゆっっっくりと振り向く。
守護霊「……ちょっと待って。」
俺「ん?」
守護霊「“廃校を買ってタイヤをつける”って……あなた、何を作ろうとしてるの?」
俺「いや、廃線列車がないなら、代わりに“走る建物”を作ればいいかなって。」
守護霊「走る建物って何よ!!
それもう“移動式異変”よ!!」
俺「でも廃校なら広いし、タイヤつければ走れるし──」
守護霊「走れないわよ!!
廃校は車じゃないの!!
あなた、幻想郷に行く前に物理法則と戦う気!?」
俺「いや、幽体だから重さゼロだし……」
守護霊「重さゼロでも廃校は重いの!!
あなたが軽くても建物は軽くならないの!!」
俺「じゃあ軽量化すれば──」
守護霊「軽量化って何!?
廃校をダイエットさせる気!?」
俺「いや、壁とか抜けば……」
守護霊「抜いたら廃校じゃなくて“ただの骨組み”よ!!
それもう建物として成立してないの!!」
俺「じゃあ骨組みにタイヤつけて──」
守護霊「だからそれはもう“巨大なカート”なの!!
幻想郷に行く前に警察に止められるわ!!」
俺「幽体だから大丈夫じゃね?」
守護霊「大丈夫じゃない!!
幽体が巨大カートを運転してたらニュースになるわよ!!
“謎の霊体、廃校を走らせる”って!!」
俺「それはそれで面白い」
守護霊「面白くない!!
あなたのせいで異変が起きる!!
幻想郷に行く前に外の世界が異変になる!!」
俺「じゃあどうすればいいんだよ。」
守護霊は額を押さえ、深く深くため息をついた
守護霊「……いいわ。そろそろ本題に入る。」
俺「お、ついに?」
守護霊「ええ。あなたが“本気”なのは分かったから。」
守護霊は俺の正面に立ち、まっすぐ目を合わせてくる。
さっきまでの呆れ顔とは違い、どこか神秘的で落ち着いた声。
守護霊「まず、余計な考えを減らすこと。幻想郷は“迷い”を嫌うから。」
俺「迷い……」
守護霊「あなたの場合、迷いより暴走の方が多いけど。」
俺「そこは否定しない。」
守護霊「次に、意識を“行きたい”一点に絞る。幻想郷は“意志”に反応する世界だから。」
俺「意志か……」
守護霊「あなたは勢いだけはあるから、ここは得意でしょ。」
俺「褒められてる?」
守護霊「ギリギリ褒めてる。」
守護霊「最後に、心の重さを軽くする。怒り、焦り、執着……そういうものがあると結界は固くなる。」
俺「幽体でも重さってあるの?」
守護霊「あるわよ。あなたの幽体、たまに“ノリ”で重くなるし。」
俺「ノリで重くなる幽体って何?」
守護霊「あなたよ。」
守護霊「あなたがこの状態になった時、結界は自然と揺らぐ。その揺らぎが“入口”になる。」
俺「入口……」
守護霊「そう。あなたが無理やり作るんじゃない。結界が“あなたを通してもいい”と判断した時にだけ現れる。」
俺「なるほど……」
守護霊はふっと微笑む。
守護霊「あなたなら、できるわよ。勢いだけは誰よりもあるんだから。」
俺「褒められてる?」
守護霊「今度はちゃんと褒めてる。」
俺「ま、まあいいか。よし! 少しずつ自分のペースで頑張ってみる」
俺はふと守護霊の横顔を見ながら、前から気になっていたことを口にした。
俺「……てかさ。」
守護霊「ん?」
俺「あなたはどうやって幻想郷に行くんだ?」
守護霊は一瞬だけ目を丸くした。
まるで「そこ聞く?」という顔。
そして、ふっと笑った。
守護霊「あなたって本当に、大事なところをズバッと聞いてくるわね。」
俺「いや、気になるだろ。俺は波長合わせとか準備が必要なんだろ? じゃああなたは?」
守護霊は少しだけ空を見上げ、ゆっくりと答えた。
守護霊「私は結界を“越える”んじゃなくて、最初から“境界の外側にも内側にも触れられる存在”なの。」
俺「……どういうこと?」
守護霊「あなたには壁に見えるものも、私には“流れ”として見えるの。」
守護霊は指先で空をなぞる。
その軌跡に、淡い光が揺れた気がした。
守護霊「結界ってね、閉じているようで、実は常に“流れて”いるのよ。外と内の境界が、呼吸みたいに。」
俺「呼吸……?」
守護霊「私はその呼吸に合わせて“移る”だけ。押したり破ったりはしない。」
守護霊「あなたは人間。だから境界に触れるには“状態”を整える必要がある。」
俺「でもあなたは?」
守護霊「私は境界に馴染んでるの。だから、行こうと思えばすぐ行ける。」
俺「ずるくね?」
守護霊「ずるくないわよ。あなたが幽体離脱できる時点で十分ずるいわ。」
俺「まあ確かに。」
守護霊は小さく笑った。
守護霊「私はあなたを置いて先に行ったりしない。あなたが行くなら、私は隣にいる。」
俺「……ありがとう。」
守護霊「別に。」
(ちょっと照れてる)
──そこで、ふと疑問が湧いた。
俺「……てかさ。」
守護霊「ん? また何か思いついたの?」
俺「いや、そうじゃなくて……あなたって、結局“何者”なんだ?」
守護霊は一瞬だけ動きを止めた。
風が止まったような静けさ。
さっきまでの軽い空気がすっと消える。
守護霊「……それを知って、どうするの?」
俺「いや、どうするって……気になるだろ。結界も見えるし、境界も触れるし、俺より自由に動けるし……普通じゃないだろ?」
守護霊は目を伏せ、夜空を見上げるようにして言った。
守護霊「“普通”じゃないのは確かね。」
俺「じゃあ何なんだよ?」
守護霊「……言葉で説明できるような存在じゃないわ。」
俺「説明できないって……そんなことある?」
守護霊「あるのよ。あなたの世界の言葉では、私の“在り方”を正しく表せない。」
俺「在り方……?」
守護霊「私は“名前”で存在してるんじゃない。“役割”でもない。ただ……あなたの魂と縁があるから、ここにいる。」
俺「縁……?」
守護霊「そう。あなたが生まれる前から、あなたが死んだ後まで、あなたがどこへ行こうと、私はそこにいる。」
俺「……なんか、重くね?」
守護霊「重くないわよ。あなたが勝手に危ないところ行くから、見張ってるだけ。」
俺「見張りってレベルじゃねぇよ……」
守護霊は少しだけ笑ったが、その目はどこか遠くを見ていた。
守護霊「“守護霊”って呼びたいなら呼べばいい。でもそれは、あなたがつけた呼び名。私は自分をそう名乗ったことは一度もない。」
俺「じゃあ本当は何なんだよ?」
守護霊「……それは、あなたが知る必要のないこと。」
俺「えっ」
守護霊「あなたが知る時が来れば、私が言わなくても分かるわ。」
俺「なんだよそれ……」
守護霊「境界の外側にいる存在は、“名前”を持たない方が都合がいいのよ。」
俺「外側……?」
守護霊「気にしないで。あなたはあなたのままでいい。」
俺「いや気になるだろ!!」
守護霊「気にしなくていいの。あなたは破天荒なんだから。」
俺「それ関係ある!?」
守護霊「あるわよ。あなたが破天荒だから、私はここにいるの。」
俺「どういう意味だよ!!」
守護霊「……さあ?」
守護霊はわざとらしく笑った。
俺「……なあ。俺、諏訪神社行きたくなった。」
守護霊「……は?」
完全に素の声だった。
さっきまでの神秘的な雰囲気が一瞬で吹き飛ぶ。
俺「いや、なんか……急に行きたくなった。」
守護霊「急にって……あなたの“急に”は信用できないのよ。」
俺「でもさ、諏訪神社ってさ……なんか“結界が薄い”って噂あるじゃん?」
守護霊「それ都市伝説の話でしょ!!
あなた、現実と幻想の境界まで曖昧にする気!?」
俺「いや、でも気になるんだよ。行ったら何かあるかもしれないし。」
守護霊は額を押さえた。
今日だけで何回目のため息だろう。
──諏訪神社の鳥居の前。
夜の空気は澄んでいて、境内は静かに眠っていた。
守護霊「……ほんとに来たわね、あなた。」
俺「だって気になったんだよ。結界が薄いとか噂あるし。」
守護霊「だからって夜に来るのはどうかと思うけど……まあ、ついてきたけど。」
俺「優しいな。」
守護霊「優しくないわよ。あなた一人だと絶対何か起こすから見張ってるだけ。」
俺「はいはい。」
守護霊はため息をつきながらも、どこか呆れたような、でも優しい目で俺を見る。
俺「じゃ、参拝すっか。」
そう言って鳥居をくぐろうとした──その瞬間。
俺の足が段差にガッと引っかかった。
俺「うおっ!?」
守護霊「ちょっ、待ちなさ──」
俺は前のめりに倒れ、後ろにいた守護霊を巻き込んで
二人まとめて鳥居の下へ転がり込んだ。
その瞬間、空気が“裏返った”。
世界が一瞬だけ、水の中みたいに歪んだ。
俺「な、なんだこれ──」
しかし次の瞬間、俺は鳥居の外へ“弾かれた”。
守護霊だけが、鳥居の内側へ吸い込まれるように消えた。
守護霊「……っ!」
視界が一瞬、白く弾けた。
次に目を開けた時、そこはもう夜の諏訪神社ではなかった。
湿った土の匂い。
木々のざわめき。
空気の密度が違う。
守護霊「……ここ、幻想郷ね」
驚きはない。
焦りもない。
ただ一つだけ、胸の奥がざわついた。
守護霊「……あの子、また転んだわね」
守護霊はすぐに状況を整理する。
・自分だけが結界に吸い込まれた
・あなたは弾かれた
・結界の“流れ”が変質している
・外へ戻る道が閉じている
守護霊「……結界が“私を幻想郷側の存在”として扱ってるわね」
守護霊は淡々と分析する。
守護霊「……まあ、あの子は生きてるし。帰る方法は後で探せばいいわ」
???「……ねえ、そこの人。こんな夜中に何してるの?」
守護霊「……来たわね」
振り向くと、赤白の巫女服の少女が立っていた。
博麗霊夢。
霊夢「外来人……じゃないわね。あなた、霊?」
守護霊「ええ。外の世界から来た“霊的存在”よ」
霊夢「ふーん。珍しいわね。でも落ち着いてるわね。普通もっと慌てるのに」
守護霊「慣れてるのよ。私の主が、まあ……色々やらかすから」
霊夢「……察したわ」
守護霊「察しが良くて助かるわ」
霊夢「で、帰れるの?」
守護霊「今は無理ね。結界が私を“こっち側の存在”として固定してる」
霊夢「まあ、よくあることよ」
守護霊「よくあるの!?」
霊夢「幻想郷だもの」
守護霊「その理屈はおかしい」
霊夢「細かいこと気にしないの」
霊夢「悪さしないなら神社に来なさい。しばらく住む場所くらいはあるから」
守護霊「……いいの?」
霊夢「どうせ放っておいても面倒になるし。だったら最初から保護した方が楽なのよ」
守護霊「合理的ね」
霊夢「あなたも合理的ね」
守護霊「修羅場をくぐると、そうなるのよ」
霊夢「……あんたの主、どんな生活してるのよ」
守護霊「説明すると長いわ」
霊夢「まあいいわ。幻想郷へようこそ、外来の霊さん」
守護霊「よろしく、霊夢」
こうして──守護霊の幻想郷生活が始まった。
霊夢「とりあえず今日はここで寝なさい。霊体でも疲れるでしょ」
守護霊「まあ、多少はね。私の主のせいで、休む暇がなかったし」
霊夢「じゃ、おやすみ」
守護霊「ええ、おやすみ」
霊夢が去った後、守護霊は静かな神社を見渡した。
守護霊「……本当に来ちゃったのね、幻想郷」
驚きはない。
焦りもない。
ただ──胸の奥に、ほんの少しだけ寂しさがあった。
守護霊「……あの子、今頃どうしてるかしら」
でもすぐに表情を戻す。
守護霊「まあ、あの子のことだから……どうせまた変なこと考えてるんでしょうね」
翌朝。
霊夢「おはよう。掃除手伝って」
守護霊「……霊体でも働かされるのね」
霊夢「幻想郷だもの」
守護霊「その理屈はおかしい」
霊夢「細かいこと気にしないの」
守護霊「あなた、雑ね」
霊夢「私の主よりはマシよ」
守護霊「……それは否定できないわね」
風が吹き抜けたかと思うと、黒い影が境内に降り立った。
文「霊夢さん、新聞置いて──……あら?」
守護霊「また来たわね」
文「外来の霊!? 珍しいですね! 取材して──」
守護霊「断るわ」
文「即答!?」
守護霊「私の主にバレたら面倒だから」
文「……修羅場慣れしてますね」
守護霊「あなたよりはね」
文「なんか悔しい!」
霊夢「文、帰れー!」
文「はーい!」
守護霊「……忙しい世界ね、ここ」
霊夢「慣れれば日常よ」
昼頃、境内に黒白の魔法使いが飛んできた。
魔理沙「よー霊夢! なんか新しい奴がいるじゃん!」
守護霊「……あなた、魔法使いね」
魔理沙「お、察しがいいな。で、あんた誰だ?」
守護霊「外の世界から来た霊よ」
魔理沙「霊!? へぇ、珍しいな。弾幕ごっこやるか?」
守護霊「やらないわよ」
魔理沙「じゃあ軽く撃つぜ!」
守護霊「撃つなって言ってるでしょ!!」
魔理沙は聞かない。魔理沙だから。
次の瞬間──星型の弾幕が夜空のように広がった。
霊夢「魔理沙、やめなさいって言ってるでしょ!」
魔理沙「大丈夫だって! 霊なら避けられるだろ!」
守護霊「……はぁ。私の主よりはマシだけど、あなたも十分厄介ね」
そう言いながら、守護霊は一歩、静かに踏み出した。
そして──弾幕の隙間を“自然に”抜けた。
魔理沙「……お?」
霊夢「……へぇ」
守護霊「……なるほど。弾の“流れ”が見えるわね。境界が歪んでるところが安全地帯」
魔理沙「境界の歪みって……そんなの見えるのかよ」
守護霊「私の主のせいで、世界の歪みくらい読めるようになったわ」
魔理沙「どんな主だよ……」
守護霊「破天荒よ」
霊夢「……察したわ」
魔理沙はさらに弾幕を追加する。
魔理沙「じゃあ次はこれだ!」
星型の弾が複雑に絡み合い、避ける隙間がほとんどない。
でも守護霊は──その“隙間の偏り”を一瞬で見抜いた。
守護霊「……ここね」
ふわり、と霊体が流れるように動く。
まるで弾幕の軌道を最初から知っていたかのように。
魔理沙「おいおい……初めてでこれかよ」
霊夢「……才能あるわね」
守護霊「私の主を守るために、危険察知だけは異常に鍛えられてるのよ」
魔理沙「修羅場慣れってレベルじゃねぇな……」
霊夢「でも、これなら幻想郷でもやっていけるわよ」
守護霊「ええ。あの子が来るまでに、私も準備しておかないとね」
魔理沙「お前、強くなるぜ。いや、もう強いか」
守護霊「褒めてる?」
魔理沙「ちゃんと褒めてる!」
霊夢「私も褒めてるわよ」
守護霊「……ありがとう」
ほんの少しだけ嬉しそうだった。
俺「よし、一ヶ月ぐらいやってコツが掴めてきた気がする。今ならできる」
俺は鳥居の前に行き、瞑想を始めた。
俺(雑念を減らし、行きたい。ただそれだけに集中する)
一ヶ月間、毎晩のように試しては弾かれ、試しては転びを繰り返した。
でも今日は違う。
胸の奥に、確かな“手応え”があった。
俺「……行くぞ」
鳥居の前で、俺の幽体がふわりと浮き上がる。
空気が震えた。
風が止まった。
世界の“膜”が薄くなる。
俺「……来た」
鳥居の向こう側に、淡い光の“揺らぎ”が現れた。
まるで水面が揺れるように、境界が波打っている。
俺「これが……入口……!」
手を伸ばす。
指先が光に触れた瞬間──世界が裏返った。
視界が白く弾け、重力が消え、音が遠のく。
俺「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」
叫びながら、俺は光の中へ吸い込まれていった。
霊夢「……ん?」
境内の空気が揺れた。
霊夢「結界が……反応してる?」
守護霊「……来るわね」
霊夢「誰が?」
守護霊「私の主よ」
霊夢「えっ、あの破天荒な外来人?」
守護霊「そう。一ヶ月遅れで、ようやくね」
霊夢「遅っ……」
守護霊「まあ、あの子だから」
霊夢「納得したわ」
境内の上空が光り始める。
空間がひび割れ、境界が開き、光の渦が現れる。
霊夢「……本当に来るのね」
守護霊「ええ。やっと“許可”が出たのよ。あの子を通してもいいって」
霊夢「どんな基準なのよ……」
守護霊「勢いとノリじゃない?」
霊夢「そんな世界じゃないわよ幻想郷は!!」
守護霊「でもあの子の場合はそうなのよ」
霊夢「……怖いわ」
俺「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
霊夢「叫びながら来たわよ!!」
守護霊「……ああ、いつものね」
俺は空から落下し──
ドガァッ!!
境内に派手に着地した。
俺「いってぇぇぇぇぇ!!」
霊夢「……本当に来たのね」
守護霊「おかえり。一ヶ月遅刻よ」
俺「やはり幻想郷にいたか、あなたが無事で良かったよ」
守護霊は一瞬だけ目を見開いた。
その反応は、霊夢にも魔理沙にも見せたことのない種類のものだった。
守護霊「……当たり前でしょ。私は簡単に消えたりしないわよ」
声は冷静。
でも、ほんの少しだけ震えていた。
俺「いや、だって……急にいなくなったから心配したんだよ」
守護霊「心配するのは私の方よ。あなた、毎回転んで異世界に落ちかけるんだから」
俺「それは……否定できない」
霊夢「……あんたら、仲いいのね」
俺「いや、仲いいっていうか……」
守護霊「私は見張ってるだけよ」
即答。
でもその横顔は、どこか安心していた。
魔理沙(上空から)「おーい霊夢ー! ……って、あれ? 落ちてる奴が増えてるじゃん!」
俺「増えてるって言うな!!」
魔理沙「で、あんたが例の“破天荒な主”か?」
俺「誰が破天荒だ!!」
守護霊「あなたよ」
霊夢「あなたよ」
魔理沙「あなたよ」
俺「三人がかりで言うな!!」
守護霊「……でも、本当に来たのね」
俺「来たよ。一ヶ月間ずっと練習してたからな」
守護霊「……そう。なら、これからは私が隣にいるわ」
俺「ていうか、俺を置いて先に行ったりしないって言ってたじゃん。何俺を置いて先に行ってるんだよ」
守護霊は一瞬だけ固まった。
霊夢と魔理沙が見ている前で、あなたにだけ見せる“素の反応”が漏れる。
守護霊「……っ」
ほんの一瞬、視線が泳いだ。
普段どれだけ冷静でも、“あなたにだけ”こういう隙が出る。
守護霊「……あれは……その……」
俺「その?」
守護霊「……事故よ」
俺「まあいいけどさ」
守護霊「だってあなたが転んだんじゃない!! 私、巻き込まれただけよ!!」
俺「巻き込まれた結果、俺だけ弾かれてあなただけ幻想郷入りってどういう理屈だよ!!」
守護霊「あなたの準備ができていなかったからよ」
俺「それもそうか」
俺は思わず笑った。
その瞬間──守護霊の表情が、ほんの少しだけ緩んだ。
守護霊「……まったく。あなたって本当に……どうしようもないわね」
俺「褒めてる?」
守護霊「ギリギリね」
魔理沙「またギリギリかよ!」
霊夢「ギリギリでも褒めてるだけマシよ」
俺「……言い返せない」
守護霊は小さく息をつき、俺の前に一歩近づいた。
守護霊「……でも、来てくれてよかった。本当に」
その声は、さっきまでのツッコミ混じりの調子とは違い、
どこか柔らかくて、静かで──“本音”が滲んでいた。
俺「……ああ。俺も来れてよかったよ」
守護霊「あなたが来ないと……私、ずっと落ち着かなかったのよ」
霊夢「へぇ……」
魔理沙「なんかいい雰囲気じゃん」
守護霊「黙りなさい」
魔理沙「ひっ」
守護霊は咳払いをして、いつもの冷静な表情に戻った。
俺「そうや、弾幕ごっこやろうぜ」
魔理沙「おっ、言ったな!? 外来人のくせに度胸あるじゃん!」
霊夢「いや、いきなりは無理でしょ……」
守護霊「……あなた、来て早々何を言ってるのよ」
俺「いや、せっかく幻想郷来たんだし、弾幕ごっこはやっとかないとだろ!」
魔理沙「いいねぇ! じゃあ軽く撃つぜ!」
守護霊「撃つなって言ってるでしょ!! あなたは黙ってなさい魔理沙!」
魔理沙「ひっ」
俺「まあまあ。いいじゃないか、あなたもやろうぜ」
守護霊「……はぁ?」
魔理沙「おっ、やる気だな外来人!」
霊夢「いや、やる気じゃなくて無謀でしょ」
守護霊はこめかみを押さえ、深く深くため息をついた。
守護霊「……あなたねぇ。来て数分で弾幕ごっこって、普通の外来人なら死ぬのよ?」
俺「俺は普通じゃないだろ?」
守護霊「それはそうだけど……だからって無茶していい理由にはならないのよ」
魔理沙「でもやるんだろ? やるんだよな?」
俺「やる!」
魔理沙「よっしゃああああ!!」
守護霊「黙りなさい魔理沙!!」
魔理沙「ひっ(二回目)」
守護霊は俺の方へ向き直り、じっと見つめてくる。
守護霊「……本気なの?」
俺「本気だ」
守護霊「……はぁ。ほんと、あなたって……」
一瞬だけ、守護霊の表情が“諦め半分・甘さ半分”になる。
守護霊「……分かったわよ。やるなら、私が隣にいる」
俺「おっ、やってくれるのか!」
守護霊「やらないとは言ってないわ。あなたが死なないように“監視”するだけ」
俺「監視って言うなよ!」
守護霊「事実よ」
霊夢「事実ね」
魔理沙「事実だな」
俺「三人がかりで言うな!!」
守護霊はふっと笑い、袖を軽く払って構えを取る。
守護霊「……じゃあ、やりましょうか。あなたの“初めての弾幕ごっこ”」
魔理沙「よーし! いくぜぇぇぇ!! スターライト──」
俺「てか、弾幕ごっこってどうやるの?」
魔理沙の詠唱がピタッと止まった。
霊夢「……今?」
魔理沙「撃つ直前に聞くなよ!!」
守護霊「……あなた、本当に来て数分で無茶するのね」
俺「いや、だって知らないまま撃たれたら死ぬだろ!」
魔理沙「死なねぇよ! 弾幕ごっこは“当たっても死なない”のがルールだぜ!」
霊夢「まあ、痛いけどね」
俺「痛いのかよ!!」
守護霊「だから後ろにいなさいって言ったのよ」
俺「いや、でもルールくらい知っときたいだろ!」
守護霊はため息をつき、
“仕方ないわね”という顔で説明を始めた。
守護霊「……弾幕ごっこっていうのはね、まず“避ける”のが基本。撃つのはその後。
相手の弾の“流れ”を読むこと。焦らないこと。無理に動かないこと。
それから──」
──30分後。
俺「なるほど、だいたい分かった」
守護霊「……30分も説明したのに“だいたい”なのね」
俺「いや、細かいところは実際にやって覚えるタイプなんだよ」
霊夢「そのタイプが一番危ないのよね……」
魔理沙「でもまあ、やる気は十分だな!
よーし、そんじゃ──」
守護霊「待ちなさい魔理沙」
魔理沙「まだ止めるのかよ!?」
守護霊「あなたは黙ってなさい。
……で、あなた」
俺「ん?」
守護霊はじっと俺を見つめる。
その目は冷静なのに、どこか呆れと心配が混ざっている。
守護霊「……本当にやるのね?」
俺「やる。ここまで来たんだし、やらなきゃ損だろ」
守護霊「……はぁ。あなたって本当に……どうしようもないわね」
魔理沙「褒めてる?」
守護霊「ギリギリね」
霊夢「ギリギリでも褒めてるだけマシよ」
俺「お前ら……」
守護霊は肩を落とし、しかし次の瞬間には俺の前に立った。
守護霊「……分かったわ。やるなら、私が隣にいる」
俺「おっ、やってくれるのか!」
守護霊「勘違いしないで。あなたが死なないように“監視”するだけよ」
俺「監視って言うな!」
魔理沙「よーし! じゃあ撃つぜぇぇぇ!!」
守護霊「撃つなって言ってるでしょ!!
魔理沙、威力三割にしなさい!」
魔理沙「三割!? そんなに弱くていいのか?」
守護霊「いいのよ。あなたの全力を撃たれたら、後ろの“あの子”が泣くから」
俺「泣かねぇよ!!」
霊夢「泣くわね」
魔理沙「泣くな」
守護霊「泣くわよ」
俺「三人がかりで言うな!!」
守護霊はふっと笑い、指先に淡い光を集め始めた。
守護霊「……じゃあ、始めましょうか。あなたの“初めての弾幕ごっこ”」
魔理沙「スターライト──三割ブレイカー!!」
俺「三割でも名前が物騒なんだよ!!」
守護霊「あなた、黙って後ろにいなさい!!」
光が弾け、魔理沙の弾幕が空に広がる。
守護霊は一歩前に出て、俺を背中でかばいながら──
弾幕の隙間を、まるで最初から知っていたかのように滑らかに避け始めた。
俺「……すげぇ……!」
霊夢「やっぱり才能あるわね」
魔理沙「三割でもこれかよ……!」
守護霊「あなた、ちゃんと見てなさい。これが“幻想郷の弾幕”よ」
俺「ああ!」
これが少し破天荒な俺とツンデレの守護霊の幻想郷生活の始まりだった。